韓国政府の一部には、拡声器放送再開に対する慎重論もあったという。北朝鮮向け拡声器放送を再開すれば、南北の緊張がピークに達して北朝鮮が実際に拡声器照準攻撃に出て、武力衝突に広がる可能性もあるからだ。国防部関係者は「北朝鮮の4回目の核実験直後に拡声器放送の準備に入ったが、これほど早く放送を開始するとは思わなかった」と言った。
北朝鮮と交渉を行う余地もなく、これといった突破口となる戦略が見えないという問題もある。これまで韓国政府は地雷による挑発行為に対し謝罪と責任者の処罰を要求、北朝鮮の「遺憾表明」を引き出してきた。ある国策研究所の研究員は「北朝鮮は核実験を中断しないだろうし、謝罪もしないだろう。北朝鮮向け拡声器放送が長期化し、軍事的緊張が高まる恐れがある」と語った。前方地域に近い韓国側住民の反対も予想される。
韓国軍当局は、北朝鮮が拡声器放送再開に対し強く反発し、実際の攻撃に踏み切る可能性もあると見ている。韓国軍は同日、拡声器設置地域部隊約10カ所の警戒態勢を強化した。攻撃が難しく、従来の拡声器よりも約10キロメートルさらに遠く放送できる最新型の移動式拡声器6台も投入されることになった。国防部関係者は「北朝鮮の拡声器攻撃に備え、K-9自走砲やK-55自走砲などで対応砲撃する準備にも取り掛かっている」と述べた。