アヘン由来の鎮痛薬精製に新技術登場…日本への影響は!?

芥子に含まれるアヘン(オピエート)を化学合成して作られる鎮痛剤の数々。日本でも合法のものがたくさんありますが、精製に新技術が登場しました。しかし、この技術で日本での未承認薬の個人輸入などに影響はないのでしょうか。

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アヘン(opium)と聞くと…

英国と、”清”と呼ばれていた頃の中国間であった『アヘン戦争(1840~42)』を思い出される方が多いのでは?

当時、ケシの実から採れる”オピエート”(opiates.アヘンとはオピエートを日本語に音訳したもの)という成分の中毒性を利用して、英国は植民地でケシを大量栽培して、化学合成したものを中国に密輸し、清の民からの急激な需要を意図的に創出。これで、自国の清に対する貿易赤字を帳消しにしていました。

しかし、この状況は英国だけに有利なもので、清側では下層民までアヘン中毒者が拡がり社会が荒廃し、遂に戦争に。逆に言うと、薬物には、国対国の戦争を起こしうるだけの強大な中毒性があることの証明でもありますよね。

末期がんに伴う、痛み止め成分としては欠かせない!

オピエートは ”オキシコドン(oxycodone)”や、”モルヒネ (morphine )”など、末期がん患者の『痛み』に対処するためなどを目的とした「医療用鎮痛剤を製造するのに欠かせない成分で、主に芥子(ケシ。poppy)の実から採取されます

両者とも、日本でも中〜高程度の痛みに対しては合法です。

しかし芥子は、あらゆる薬の中でも凄まじい中毒性を持つ「ヘロイン」の精製防止のため、ほんの一握りの国でしか栽培許可されていません。
アメリカは、世界最大の合法オピオイド(opioids.オピエートを化学合成して作った薬)市場ですが、栽培が許可されているのはわずかな種類の芥子だけで、鎮痛効果が認められるオピエートに関しては、輸入に頼らざるを得ない状況です。

が…ある化学者が、「ビールの醸造法」の一部を利用して、樽の中でオピオイドを作る方法を明らかにしました。

樽の中で、オピオイドを完全精製する技術を開発中

スタンフォード大学の研究チームが雑誌『Nature Chemical Biology』に、酵母の中でオピエートのDNAを解析する詳細な方法を発表しました。

最終目標は、最初から最後まで全ての工程を酵母の樽の中で「オピオイド」を作れるようにして、外部からのオピエートの供給を必要しなくなることとしています
この方法では 約17種類もの化合薬が製造でき、一部の薬は自然にできるが、完成するには特別なファクトリーが必要になる薬もあるとのこと。

論文では、鎮痛薬オキシコドンなどに含まれるオピエートのゲノムの解析方法を紹介。
オピエートの一種である”テバイン(thebaine、別名パラモルフィン)”を、枯れた芥子の茎を食べるタイプの微生物の遺伝子入り酵母に投入すると、かなり良い出来のオピオイドが得られるのだそうです。

それらはコデイン、モルヒネ、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシコドンなどで、いずれも中〜高程度の激痛に処方される薬です。ちなみに日本ではヒドロモルフォンとヒドロコドンは未承認薬です。

確立したら、社会的な効果は絶大?

オピエート化合薬は医療には絶対必要です。でも、土からの芥子の栽培による薬を製造・供給するのは効率性や安全性に欠けますよね。

我々は代替法としてパン屋が発酵食品に風味を付与するように、オピエートを変化させるための微生物由来の培地を作ったのです

と、チーム主任。現状、樽で完全生産されたオピエート化合薬を実用化させるにはまだまだ実験や検証が不十分です。

研究チームも、オピオイド生産工程の初期段階でテバインを砂糖に変えることができるような、完全なる生物工学で作られた酵母が完成するまでには、あと何年もかかると予測しています。
が、いったん軌道に乗れば、これまで以上に薬価も安く、流通も効率的になるとのこと

本当に流通を正常化させるのか、不安です。

日本では今年6月、非常に強いレベルの痛みにだけに処方され、麻薬指定されている”オキシコドン”を巡る事件が起きました。

トヨタ自動車の常務役員だったジュリー・ハンプ容疑者(55)が、当該薬を隠し持っていたとして、麻薬取締法違反で逮捕されたのです

彼女は「膝の痛みを和らげるため」に使用していたとし「麻薬を輸入したとは思っていない、自分に処方されたものでもない」と供述したそうです。
薬は、国際宅急便で成田空港の税関を経てハンプ容疑者の元に届きました。

薬の個人輸入ー確かにこのオキシコドン、米食品医薬品局(FDA)では激痛治療薬として承認されていますから、この方の意識ではなぜ捕まるのか?と思われたものかもしれませんよね。
オピエート由来の鎮痛薬は、絶対に必要不可欠なもの。それはわかりますが、このような新しいテクノロジーによって、薬が世界にバラ撒かれ、「薬関証明」などの防波堤をすり抜けて 日本国内に流通する危険性が高まらないか、とても心配です


【参照】

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