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 福岡県大牟田市歴木(くぬぎ)の高泉市営住宅12号棟から13日午前6時15分ごろ出火し、鉄筋5階建て3階の川本悦子さん(52)方と4階の会社員橋口友罷呂(ともひろ)さん(31)方が全焼した。市消防本部と大牟田署によると、橋口さんの子ども3人を含む計6人が病院に運ばれた。いずれも症状は重篤で、5人は搬送時に意識がなかったという。

 搬送されたのは、川本さんと橋口さん、橋口さんの妻(32)と小学6年の長男(11)、小学1年の三男(7)、四男(2)。

 市消防本部によると、搬送時、三男は少し会話ができる状態だったが、ほかの5人は意識不明の状態だった。6人は4~5階の階段や踊り場などに倒れており、顔などにやけどをしたり煙を吸ったりしていたという。

 橋口さん方は6人家族で、次男(10)は自力で避難した。3階の焼け方が激しいことなどから、署は川本さん方付近から出火したとみて調べている。

 市建築住宅課の説明では、火災のあった12号棟は1973年完成で、30戸に21世帯が入居していた。高泉市営住宅の一帯では老朽化による建て替え事業が進んでいる。12号棟も建て替えが予定されており、市は新たな入居者は受け付けていなかった。

 現場はJR大牟田駅から北東に約3キロの市営住宅が立ち並ぶ住宅地。

■ベランダの窓から煙

 救急搬送された6人は症状が重く、最初に運ばれた大牟田市など近隣の病院から各地の病院などへ次々と転院した。橋口友罷呂さん(31)の妻(32)は福岡県久留米市の病院からさらに佐賀県へ、四男(2)は福岡市へドクターヘリで運ばれた。

 家族で唯一、自力で避難した橋口さんの次男(10)は13日昼ごろ、祖父に付き添われて久留米市の病院に駆けつけた。薄手の防寒着のフードは少し焦げ、鼻はすすで黒くなっていた。

 出火当時を振り返り、「母親に『火事よ。逃げなさい』と起こされた」と話した。少し開いていたベランダの窓から煙が入り、玄関を出ると3階部分が燃えていたが、着の身着のまま階段を駆け下りたという。

 付き添った関係者によると、橋口さんを見舞った祖父は「よう見きらん」と言って、代わりに面会するよう頼んだという。同じ市営住宅の2階に住む女性(80)は「住宅前の公園では子供たちが祖父と遊ぶ姿をよく見かけた」と話し、家族らの容体と心労を気遣った。

■「階段室型」、避難はベランダも想定

 大牟田市で火災が起きた市営住宅は外廊下がなく、階段を挟んで各戸の玄関がある「階段室型」といわれる構造だ。

 1973年築の5階建てで、三つの階段の両側に各階2戸ずつが向かい合う。被災世帯と同じ階段を利用する10戸のうち7戸が入居中で、3階の川本悦子さん(52)と4階の橋口友罷呂さん(31)の2世帯以外は一人暮らし。火災警報器はあったが、大牟田市によると各戸ごとに作動するタイプで、棟全体に火災を知らせる機能はなかった。

 今回の火災は、炎や煙が階段にも入り込み、玄関から階段を下りて避難することが難しかった可能性がある。こうした場合の避難方法について、市は「入居のしおりで、ベランダの仕切り板を破って隣の住宅に避難するよう指導している。板にもそのように明示している」と説明する。

 それぞれ約3万戸の公営住宅を抱える福岡県、福岡市、北九州市でも、築年が古いものは大半が階段室型の構造だ。いずれも階段とベランダの2経路での避難を基本とし、ベランダから仕切り板を破って隣戸へ移ることや、ベランダに設置したはしごで下の階に移る方法などを住民に周知しているという。

 東京理科大の大宮喜文教授(建築防災・安全)は「このような構造の集合住宅で火災が起きた場合、階段に煙が入る前に逃げることが重要。次にできることはベランダを利用して安全な場所に次々と移ることだ。今回の火災で、それができなかった原因を調べる必要がある」と話す。