レロス島=山尾有紀恵
2015年12月15日05時02分
パリ同時多発テロの実行犯らは今年、債務危機と総選挙への対応で振り回されたギリシャに潜伏し、中東と欧州を行き来していたことが明らかになった。足取りをたどると、難民危機の対応に追われる欧州の混乱につけ込み、テロの準備を進めた実態が浮かんだ。
テロ首謀者とされるモロッコ系ベルギー人のアブデルアミド・アバウド容疑者(死亡)=図のA。潜伏先のアテネのアパートは中央駅のそばにあった。マケドニア国境行きのバスが発着する通りも近くにあり、中東などから押し寄せる難民や移民が行き交う。
ギリシャ警察は今年1月、ベルギーの警察署を狙ったテロ未遂事件に関連してこのアパートを捜索。同じ階の女性は「部屋にはいつも4~5人が入れ代わり立ち代わり入居している」と証言する。
アバウド容疑者はアテネの首相官邸近くにもアパートを借りていた。1月の家宅捜索でアルジェリア人の男らが拘束された。パリのテロを受けた再捜査でこの二つのアパートからアバウド容疑者と同じDNA型が採取された。
テロ当時、アバウド容疑者はシリアにいるとみられていたが、テロの2カ月前にシリア難民に紛れてギリシャに入国したとの見方が強まっている。カズヌーブ仏内相は「彼がギリシャにいたという通報が11月16日に欧州以外の情報機関からあった」と明かした。
アバウド容疑者と同じブリュッセル西部モランベーク地区出身のサラ・アブデスラム容疑者(26)=図のD=もギリシャに足跡がある。パリのカフェなどの襲撃に加わったとされ、指名手配中だ。
8月1日、ベルギー人の別の容疑者(11月にトルコで逮捕)とイタリア南部バーリからギリシャ・パトラへフェリーで渡り、4日後に同じ航路で戻った。
バーリ警察のミンモ・ラベッキア氏は「シリアへ行こうとしたか、ギリシャでシリアからの帰還者とテロ計画をすり合わせるためだったのではないか」。またバーリ検察トップのジュゼッペ・ボルペ氏は「過激派は地元の犯罪組織と関わりがなく、動きを把握するのは難しい」と話した。
パリのテロ実行犯はシリア難民になりすまし、監視の目をすり抜けた。パリ近郊のサッカー場「スタッド・ド・フランス」で自爆した1人=図のB=の遺体のそばでシリアの偽造パスポートが見つかった。
ギリシャメディアによると、男はサッカー場付近で自爆した別の男=図のC=と2人でトルコのディディムからファルマコニシ島を目指したがボートが10月3日に転覆。ギリシャ・レロス島に移送され、ギリシャ治安当局に指紋を登録していた。
翌4日深夜、2人は島の旅行会社を訪問。知人とみられる4人も来た。店主のディミトリス・カスティスさん(43)は「英語を話すのは1人で、他はアラビア語を話した。警察発行の書類に不備はなく、不審な様子もなかった」と語る。
書類上は2人はシリア人だった。5日、カリムノス島経由でアテネ近郊ピレウスに渡った。その後、7日にセルビア、8日にクロアチアを通過。ハンガリー、オーストリアを通りフランスに入ったとみられている。(レロス島=山尾有紀恵)
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朝日新聞国際報道部
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