野坂昭如さんが亡くなったようだ。
まだ第一報が届いたばかりで、実感がわかないのだが、新聞社のウェブサイトがそう書いている以上、そういうことなのであろう。そんなわけなので、今回は、野坂さんについて個人的に思うところを書いておくことにする。
この数年、中高生の頃に仰ぎ見ていた人の訃報に接する機会が急速に増えた。
こっちがトシをとっている以上、若い時代にあこがれていた年長の人間が一足先にトシをとって行くのは理の当然であって、ものの順序からして、先に生まれた人間が先に死ぬことは、いたしかたのない展開ではある。おそらく、これから先は、より身近な人間や、同年輩の友人の葬儀に参列せねばならない機会が増えるのだろう。それもこれも自分が最後まで生きていられればの話ではあるが。
野坂さんの作品は、高校の頃にまとめて読んだ。それ以前も以後も、読んでいないと思う。
野坂さんに限らず、当時の小説家については、ほとんどそんな感じだ。
私は、もしかすると、生涯の読書量の半分近くを高校生だった時代に読み終えてしまっているのかもしれない。
それだけ、高校時代に大量の本を読んでいたということだが、それ以上に、高校を出てからこっち、ろくに本を読まなくなったということでもある。
どの小説をどういう順番で読んだのかは、よく覚えていない。というよりも、野坂氏の小説自体は、実を言うと、そんなに好みではなかった。5冊か6冊、代表作的なところをざっと読んで、それから先はあえて深く掘り下げなかったのだと思う。
ただ、エッセイや雑文、五木寛之さんとの対談だとか、水着グラビア付きの雑誌に時々掲載されるインタビュー記事など、小説作品よりも生の声に近い文章を追いかけて大量に読んだ記憶がある。
というのも、野坂さんの魅力は、素のしゃべりの自在さと闊達さにあったからだ。
だから、テレビ出演の機会は、なるべく見逃さないようにしていた。レコードは買わなかったが、歌詞にはいつも感心していた。