広島に原爆が投下された時刻(1945年8月6日午前8時15分)を指したまま止まり、広島市の広島平和記念資料館に所蔵されている懐中時計の短針が折れたことが分かった。被爆から70年が過ぎ、さびたことが原因とみられる。増田典之副館長は「保存方法や展示サイクルを見直すなどして、より適切な対策を考えたい」と話している。

 資料館によると、懐中時計は爆心地から約1・6キロで被爆し、まもなく亡くなった二川(にかわ)謙吾さん(被爆当時59歳)の遺品。息子の一夫さんが75年に寄贈し、資料館の本館に展示されていた。今夏に職員が展示資料のほこりを取る作業をしていたところ、ローマ数字の「Ⅷ(8)」の方を指す短針が中央付近から折れていることを確認した。現在は複製が展示されている。

 同資料館には、被爆者本人や遺族から寄せられた被爆関係の資料約2万点が収蔵されている。被爆による傷みに加え、金属類を中心に経年劣化が進んでいるという。(岡本玄)