80年代ビッグ3と女性に嫌われた菊池桃子
速水健朗(以下、速水) 今回は菊池桃子!
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 「一億総活躍国民会議」のメンバーに選出された件ですね。
速水 まさに菊池桃子が、第三次安倍内閣の最大の目玉となったわけで。
おぐら え、さすがにそこまではいかないでしょう?
速水 うん、言い過ぎた(笑)。でも今日は、菊池桃子と小泉今日子の話がしたいと思って、ゲストにキョンキョン論『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』(朝日新書)を書いた助川幸逸郎先生をお呼びしています。
助川幸逸郎(以下、助川) 助川です。いつもこの連載、楽しく読んでおります。
速水 それは意外です!
おぐら ありがとうございます!
速水 さっそく本題ですけど、80年代のアイドルを知る世代にとって、ここにきての菊池桃子の活躍は、驚きが大きくないですか?
助川 私もまさかと思って見ています。
速水 背景を説明すると、80年代当時、ビッグ3と言われていたのが松田聖子、中森明菜、そして小泉今日子ですよね。菊池桃子は、そこには及ばない。この3人と菊池桃子が決定的に違うのは、女性支持の有無。ビッグ3は、それぞれ女性からの支持があったけど、桃子は女性には好かれてなかった。なぜなら、「結局、男ってこういう女が好きなんだ」っていう女の典型に見えたから。
おぐら 『臨死!!江古田ちゃん』でいう「猛禽」※みたいな。でも、当時「ぶりっ子」と言われていた松田聖子は、女性から嫌われてなかったんですか。
※猛禽:天然で、走れば転び、酒に酔いやすく、男としては操っているつもりが操られており、気がつくと見事に狙った男性をかっさらっていく女性たちのこと。
助川 松田聖子は、女の子のやりたいこと全部やっちゃってた。だから、当時の女の子はみんな、松田聖子みたいになりたかったんです。
速水 聖子ちゃんカットでテニスラケットが、女子大生の基本だったし。
おぐら それ超かわいいじゃないですか。
助川 そして一部のサブカル層が、髪を切って刈り上げにして以降の小泉今日子に流れていって※。
※「昔ながらの王道アイドル」としてロングヘアを保っていた小泉今日子が、1985年に突如刈り上げに。
速水 普通の女の子からはみ出したいみたいなタイプがキョンキョンの支持層。
おぐら 僕のまわりにもその流れを汲んだ女子がたくさんいました。高校時代、サブカル層の男たちにモテモテだった1コ上の女の先輩も、刈り上げショートカットでしたね。
速水 そして中森明菜は、実力派シンガー路線で、アーティスト扱いになっていく感じ。
助川 ある時期以降の中森明菜は、ファッションもキレていて、普通の女の子が真似する存在としても、普通の男の子がアイドルとして崇めるにも、ちょっと行き過ぎちゃってた。その点、菊池桃子は最も普通にアイドルをしてきたんですよね。
速水 そう。聖子、明菜、キョンキョンが独自路線を突き詰め始めていた時期の1984年にデビューして、わかりやすく男の子が飛びつきやすいアイドルとして登場したのが、菊池桃子だった。
おぐら まさに男ウケのいい「猛禽」的な、守ってあげたくなる感じの。
速水 助川さんの本で、最後にアイドルとしてファンだったのはキョンキョンではなく、斉藤由貴だったってカミングアウトしていたのがおもしろかったですけど、僕は、実は菊池桃子ファンでした。
おぐら ちなみに、僕の世代にアイドル然として出てきたのは、ポケベルのCMに出演していたころの広末涼子です※。
※1996年に放送されたドコモのポケベルのCM「広末涼子、ポケベルはじめる」で一躍有名に。
助川 80年代後半からアイドルは冬の時代に入り、広末までは大空位時代。久々に登場した正統派アイドルでしたね。
速水 今日の対談の3人、ほぼ等間隔に7歳ずつくらい違うんだよね。アイドル受容の年代の差がおもしろい。
菊池桃子の逆襲はいつから始まったのか
おぐら ところで、助川先生は、菊池桃子の国民会議での一連の発言をどう見てますか?
助川 トロイの木馬ですよね。国民会議のメンバーに指名されたときは、直感的に、安倍晋三なんかに雇われやがってと思った人も多いでしょう。でも実際は、中に入って「一億総活躍」のネーミングにダメ出しをして政権と真っ正面から対立したわけですから。
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