ジム・ロジャーズ「もしも私が今、30代の日本人だったら」

12.03 08:00PRESIDENT Online

未曾有の大不況が近づいている!


中国株の暴落をきっかけに世界の市場が混乱しました。中国だけでなく、どの国もかつてないほどに借金を積み上げており、リスクは世界中に存在します。私は、世界経済はこの先、1~2年後に失速し、過去の不況よりもずっと深刻な状態に陥ると考えていますが、現在の貿易の減少はその兆候のひとつです。モノが売れないのは人々の暮らしが豊かではないから。金回りがいいのは、金融で儲けた人だけです。

そのうち各国の中央銀行が弱気になり、市場を救おうとするので、安心感から相場が上向くでしょう。しかし、資金の流れを人為的につくりだしているだけなので必ず失速します。そうなると株価はさらに大きく下落するので代償が大きくなる。未曾有の大不況に突入するのです。

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商品市場も過去1~2年でかなり下落していますが、原油安が一因です。イランとロシアに圧力をかけるために、サウジアラビアは米国に説得されて増産を続け、原油価格が下がった。サウジアラビアがこれに応じたのは、シェール石油の台頭を阻止するという目的があったからです。原油安はしばらく続くと私は予想していますが、現在の水準ではシェール石油企業は儲かりません。ですから、シェール石油が大幅に減産されれば、原油価格はそのタイミングで底を打って上昇するでしょう。農産物をはじめ、ほとんどの商品が現在底値に近いので、将来は上がります。

日本では都心の地価が高騰していますが、1989年とは違ってまだバブルではありません。安倍政権は自国通貨の価値を下げるという間違った政策を続けていますが、そうすると人々は実物資産にすがるようになる。昔からその典型が不動産で、金利が低いときほどそうなります。

株式については、現在の日経平均株価は過去の最高値の半分くらいですから、まだ高水準ではありません。安倍さんがどんどん紙幣を刷っていますから、長期的に見れば借金が増えるだけなので日本にとっては悪いことですが、投資家にとっては好機が見込めます。

年内に日経平均株価が3万円を超えることはないと思いますが、日銀が非常に弱気になり、さらに紙幣を刷って市場浮揚策を打ち出すことは予想できます。安倍政権は投資を促すために税優遇策を実施し、年金基金に株式への投資を促しています。株式投資の初心者は知名度のある企業、つまり優良銘柄からスタートしますから、今後も日本の株式市場では、優良銘柄がベストな選択肢であるという状況が続くでしょう。

たとえ世界中の市場が崩壊しても、私は日本、そして中国とロシアの市場を選びます。この3つは、ほかの国よりも影響が小さいだろうと思うからです。中国株は最高値の半分以下になっています。ロシア株は世界の投資家から敬遠されていますが、安いですし、国は豊富な資源を持っている。政府は外国からの投資を促すために企業統治の改善などの法整備を進めています。資本や投資家を破滅させてばかりではダメだということに、彼らも気づいたのです。今では外国人と組んで投資を行っていますよ。原油価格の下落によってロシアの景気は悪化していますが、私は現在ロシア株を保有しているし、今後も好機が来れば買い増しするかもしれない。

米国市場のほうがよさそうに見えるかもしれませんが、ほとんど調整されずに約6年間も上げ相場が続いている。これは異常です。

家と保険を買ったら何に金をかけるべきか


このような時代に、豊かで幸せな老後を迎えるためには、お金を貯めることが最優先です。その次に大切なことは、情熱を注げられるものを早いうちに見つけ、それを追求することです。たとえば庭師になりたかったら、周囲が反対してもなるべきです。腕が良ければ皇居の庭師に抜擢されるかもしれないし、全国にガーデニングショップを展開する経営者になって、会社を上場するかもしれません。好きなことを仕事にした人はたとえお金持ちになれなくても幸せなはずです。

30代の読者には、さらに住まいの所有を勧めます。家を持てば、この先住む場所の心配をしなくてすむし、持ち家は安定資産ですから、自分の身になにか起こったときに頼ることができます。同時に、万一に備えて生命保険などの各種保険に加入すべきです。こうして持ち家と保険を手にして初めて、他の方法による資産形成について学べるのです。

ただし、投資するなら自分がよくわかっているものを選ぶこと。他人が持ちかける耳寄りな話を鵜呑みにすると、おそらく損をします。車でもファッションでも、好きで詳しく知っている業界があれば、まずその業界への投資から始めるべきです。新商品の発売など新しい動きがあったら自分でリサーチをしてみて、うまくいきそうだと思えばその企業の株を買う。新商品の価値がどれくらい持続するか、競合他社はどう動くか、次の商品はいつ出るかなど、あなたのほうが私やウォール街の投資家よりもよく知っているでしょうから、売り時もわかるはずです。

すべての人に助言したいのは、海外にも資産を持つことです。日本は安泰であると信じたいでしょうが、いつなにが起きてもおかしくない。私は、「最悪の投資先のひとつ」と言われていた70年代の日本に投資して成功しました。旅行で行ったことがあるとか、親しみを持てるとか、どの国でもいいので海外での資産運用を検討してください。これこそが本当に自分を守るための保険であり、お金を増やす手段ですよ。(原賀真紀子=インタビュー、構成 宇佐美雅浩=撮影)

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インフルエンザの予防注射は打つべきか? 効果はあるか?

12.03 08:00PRESIDENT Online

皆さんは、毎年、インフルエンザの予防接種を受けているだろうか。

インフルエンザの流行は例年12月から翌年3月くらいまでだが、予防注射を受けるか、打つとしたらいつがいいのか悩ましい。身近にも、予防注射を打ったにも関わらずインフルエンザにかかった例がある。インフルエンザワクチンは本当に効果があるのだろうか。

実は、インフルエンザの予防注射には、感染を予防する効果はない。感染とは、ウイルスが鼻や口の粘膜から体に入り細胞内で増殖することだ。とはいえ、厚生労働省の研究班の報告によれば、インフルエンザの発症と重症化を抑える効果はあるという。そもそもインフルエンザワクチンは、接種を受けた人の体にウイルスを排除する抗体を作り、同じウイルスが入ってきたときにそれを攻撃して発症や重症化を抑えるものなのだ。

研究班の分析では、65歳以上の高齢者はインフルエンザワクチンの接種によって発症リスクを34~54%、死亡リスクを82%減らせる。また、0~15歳では1回接種で68%、2回接種で85%、16~64歳では1回接種で55%、2回接種で82%の発症予防効果があったとする報告もある。

ただ、どの年齢でも効果が100%ではないことに注意が必要だ。はしかや風疹、水ぼうそうなら、1回でもかかったことがあったり必要な回数のワクチンを接種したりしていればほぼ100%予防できる。

ところが、インフルエンザワクチンに関しては乳幼児や高齢者は抗体ができにくいうえ、インフルエンザウイルスは毎年少しずつ顔つきを変化させる。そのため、予防接種を受けていても発症したり、インフルエンザに1回かかった人でもまた翌年かかったり、同じ年にA型インフルエンザとB型の両方にかかって2回もインフルエンザに苦しんだりといった事態が起こる。

なぜ発症率、重症化率が下がるのか


ご存知の人も多いと思うが、インフルエンザにはA、B、Cの3つの型があり、そのうち世界的な流行がみられるのがA型とB型だ。インフルエンザワクチンのウイルス株の内容は、毎年WHO(世界保健機関)が決めた推奨株の情報をもとに、日本国内の専門家がその年の流行を予測して決めている。現在の予防注射は、2009年に新型インフルエンザとして猛威をふるった「A/H1N12009」と香港A型、B型の3種類を混ぜたワクチンだ。ちなみに、H1N12009によるA型インフルエンザは昨年も大流行したが、現在では新型とは呼ばれていない。

ウイルスが変化するのは、こうした予防注射や抗ウイルス薬に撃退されずに人間の体の中で増殖して生き延びるため。予防注射や抗ウイルス薬でウイルスを撲滅しようとする人間とそれでも何とか生き延びようとするウイルスとのイタチごっこが続いているわけだ。今シーズンのインフルエンザワクチンのウイルス株と流行するウイルスに大きな違いがなければ、つまり予測がはずれなければ、それだけ発症率、重症化率も下がると考えられ、予防注射を打つ意味も大きくなる。

ワクチンの主な副反応は、注射したところの赤み、腫れ、痛みが最も多く10~20%、発熱、寒気、だるさといった症状も5~10%の人に起こる。まれに、アナフィラキシー・ショック、発疹、じんましんといったアレルギー反応が出る場合もあるので要注意だ。

インフルエンザの予防注射を受けるかどうかは接種効果の数字をどう解釈するか、そして、年齢、家族構成、職業、アレルギー体質かによっても左右されそうだ。インフルエンザによって乳幼児は脳炎・脳症、65歳以上の人は肺炎になるリスクが高いので、予防接種でできるだけ発症・重症化を抑えられるならそれに越したことはない。肺炎を予防する23価肺炎球菌ワクチンがあるが、インフルエンザワクチンを接種しただけでも肺炎の重症化と死亡率を低下させるとの報告が複数出ている。例えば、65歳以上のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を対象にした研究では、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンと併用したときはもちろん、インフルエンザの予防注射を接種しただけでも、何もしなかったときより入院のリスクを半分以下、死亡リスクは5分の1に抑えられた。

効果の持続期間は5カ月程度


65歳以上の人と60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害を有する人(身体障害者手帳1級程度)は、国が接種を強く推奨する「定期接種」の対象になっており、一般的に、ワクチンで強い副反応が出たことがある人以外は、受けたほうがよいだろう。米国では、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人が家族にいる人、医療関係者などそういった人たちと接する職業の人にもインフルエンザワクチンの接種が推奨されている。

特に持病もなく元気な10代~50代なら、インフルエンザになったとしても1週間くらいで回復する。「それなら予防接種は必要ない」と考えるなら、「受けない」という選択もありだろう。受験生とその家族、仕事が忙しくて1週間も休んでいられない人は、少しでもリスクを減らすために接種を受けたほうが無難かもしれない。

接種は生後6カ月~13歳未満は2回、13歳以上の人は1回が基本。基礎疾患のある人などリスクの高い人は医師と相談のうえ2回受けたほうがいい場合もある。ワクチンで抗体ができ始めるのは接種後2週間程度経ってからなので、大流行が始まる12月くらいまでに接種を受けておいたほうがいいとされる。毎年接種が必要とされるのは、効果の持続期間は5カ月程度と短く、昨シーズンと今シーズンのワクチンは内容が異なるからだ。

費用は医療機関によって異なるが、ワクチンの内容は同じなので、私自身は近隣の医療機関のホームページを見て比較し、最も安価と思われるところで接種を受けている。定期接種の対象になっている65歳以上の人と60~64歳未満で一定の障害のある人は、市区町村で10~12月あるいは10~翌年1月くらいまで助成が受けられ自己負担が軽減される場合が多いので、住んでいる市区町村の窓口に問い合わせてみよう。例えば、東京都千代田区は定期接種の対象になっている人は期間内なら自己負担なし、新宿区は2200円(75歳以上と生活保護世帯の人は無料)で接種が受けられる。(医療ジャーナリスト 福島安紀=文)

中高一貫校の生徒たちが“荒れ”にくい理由

12.03 08:00PRESIDENT Online

中1からすれば高3は立派な大人


中高一貫校に中学1年生として入学して最初に驚くのは、高校2年生や3年生の先輩たちの迫力だ。中1からしてみるとまるで大人。

ある中高一貫男子校OBは、次のように振り返る。

「中1の春、自分たちはついこの間まで中学受験勉強をしていて、もやしっ子のお坊ちゃんみたいなのに、高2・高3の先輩たちは体格もいいし、ちょいワルっぽい雰囲気もあるし、何がどうなったら数年間でこんなに変化するのだろう、生物学的にこんな進化の仕方があり得るのだろうかとびっくりしました」

同時に、中1の生徒たちは不思議に思う。

「高2・高3の先輩たちは、先生たちよりも体格がいい。先生たちに叱られたって、体力では打ち負かすことができる。先生たちのいいなりにならなくていいはず。なのになぜもっと反抗してみせないのか」

精神的に未熟な中1はそんなふうに感じる。高校生よりもむしろ中2・中3くらいの先輩のほうが、何かにつけて先生に対して生意気な態度をとっている。一見つじつまが合わない。

しかししばらくすると気づく。「中2・中3の先輩は、まさに反抗期なのだな」と。「高2・高3の先輩は、反抗期を乗り越えて、心身ともにほとんど大人になっていて、だからこそ先生たちと大人の付き合いができるようになっているし、先生たちも高2・高3の先輩をほとんど大人扱いしている。それが成長というものなのか」と。

そう考えると、中2・中3の先輩がとたんに幼く、みっともなく見えてくる。いや、もちろん中1のほうが幼いし、自分たちも1年後2年後には同じようにみっともない時期を過ごすのだが、それはあくまでも過渡期の姿であって、最終的には高2・高3の先輩のようなほとんど大人にまで成長してこの学校を卒業するのだと理解する。

その安心感が思春期に安定をもたらす。実際中2・中3になると、無意味なやんちゃやおてんばや、大人を試すようなプチ非行を実行する生徒は増える。しかしほどほどでおさまる。必要以上にいきがっても意味がないと思えるからだ。いつまでもツッパリを気取っているようではむしろかっこ悪いと思えるようになるのだ。

それに、中2・中3で多少いきがってみたところで、上には高校生がいる。このころは、先生よりも先輩に畏怖の念を感じるもの。先生に注意されても突っ張ってみせられるが、先輩には刃向かえない。目に余る行為に対しては、教師の代わりに高校生の先輩がたしなめるということも、中高一貫校ではよくある光景だ。

先生よりも高校生の指導が威力を発揮する


ある女子校では、制服を着崩す中学生に、高校生の先輩が注意することもあるという。「私たち教師がいったらそっぽを向かれてしまうようなことも、先輩にいわれると素直に聞きます」とその女子校の教師は語る。そのほかも、中高一貫校の教師たちは「高校生がいてくれるおかげで助かっている」と口をそろえる。高校生の存在が、中学生のやんちゃに対する適度な抑止力になっているから学校の風紀が乱れにくいというのだ。

中高一貫校、特に名門といわれる学校ほど、自主・自立・自由を標榜する学校が多い。実際、校則は厳しくない。麻布や灘、東大寺学園のように校則がないなんて学校もある。しかし、風紀は乱れない。目に見えない抑止力が働いているのだ。

中等教育は、14~15歳の反抗期のピークを中心とする6年間の曲線的な成長に寄り添う教育だ。その時期の教育の重要性については最近拙著『進路に迷ったら中高一貫校を選びなさい』(ダイヤモンド社)に著した。

それがもし、反抗期のピークで真っ二つに分断されてしまったら、中学1年生は、反抗期真っ盛りの中学3年生を、最高学年として仰ぐことになる。しかし、中学・高校が一緒にあれば、反抗期を乗り越えて、大人としての振る舞いを身につけた高校生の姿を目の当たりにすることができる。

未来の自分から注意を受け、過去の自分に指導できるようになってから卒業する。これこそが、激動の思春期において自律を学ぶ、中高一貫校ならではの学校文化なのだ。(教育ジャーナリスト おおた としまさ=文)

マイナンバーであぶり出される!家族手当不正受給・副業

12.03 08:00PRESIDENT Online

マイナンバーで発覚「家族手当の不正受給、副業バイト」


▼サラリーマンの間でも身辺整理の動き


最近、社会保険労務士の私にマイナンバーを巡る悩み相談が相次いでいる。

例えば、32歳、中小の機械部品メーカーの男性Aさんだ。

「悩みというのは、ほかでもありません。(禁止されている)副業のアルバイトを会社に報告するべきかどうかなんです」


声を潜めて話すAさんは入社して10年経つのだが、デフレの影響で昇給がほんの少ししかなかった。会社の受注量が小さかったので残業もさせてもらえなかった。賞与も雀の涙だった。おかげで生活が苦しく、どうしても月に数万円足りなかった。そこで、数年前から会社と自宅の通勤路線の途中駅前にあるコンビニで夜アルバイトをするようになった。

午後6時から午前0時まで働いていたので、就寝は午前2時だった。翌朝、会社に出勤する時に遅刻はしたことがないが、それでもアクビはしばしばだった。

聞けば、「秘め事」はもう1つあった。

実は5年前に離婚したが、それを会社に報告していなかった。そのため、家族手当を不正に受給していたのだ。報告しなければと思いつつ、そのままになっていた。

「マイナンバーもあるし、(バイトも離婚も)会社にバレたら、どうなるだろうか? クビだろうか?」
「いまのうちに自主した方が良いのか?」
「いっそのこと、マイナンバーの提出を拒否したら、逃れることができるだろうか?」

マイナンバーの導入を控えて、悩みは深まる一方だ。

「離婚」を会社に伝えず120万円“罰金”


このように“スネに傷を持つサラリーマン”は決して少なくないようだ。他にも、似た案件の相談がマイナンバーの本格稼働の時期が近づくにつれ、確実に増している。

では、実際にはどんな問題が想定されるのだろうか? 筆者が思い付くまま列挙してみた。

(1)家族手当の不正受給がバレる


家族手当を支給している会社は、「扶養家族であること」を支給要件にしているところが多い。会社は、扶養家族かどうか、現時点では扶養控除申告書に自己申告で記載した内容で判断しているのが一般的だ。

つまり、従業員が「妻は扶養家族です」と自己申告してきたら、会社はそれを信用するので、それ以上の調査まではしていないだろう。

もちろん、扶養家族から外れていることがバレる場合もある。それは大抵の場合、税務署からの指摘が発端だ。税務署から「貴社の従業員の○×さんが奥さんを扶養家族に入れていますが、所得が超過している」といった連絡があった場合だ。このように税務署から指摘されるのは希だったが、マイナンバーが導入されると“ガラス張り”になり……発覚する確率が高くなると考えるのが妥当だろう。

もし、Aさんのように不正受給していたことがバレたらどうなるのか?

実は、怖いことが待っている。「不当利得の返還請求権」は時効が10年間あるので、会社は過去に遡って返還を請求できる。例えば、家族手当の不正受給額が月に1万円だった場合は、120万円という金額になる。

また、従業員本人が過払いの事実を知っていたということであれば、会社は過払い分に利息(年5%)を付けて返還させることもできる。もちろん、家族手当の返還のほかに、就業規則による処分が考えられる。

(2)副業がバレる


では、もう1つの内緒の副業はどうなるのか。

最近は、一部の企業で従業員が副業を兼業することを認める動きもあるようだが、全国規模で見れば、ほとんどの会社の就業規則には、それを禁じる規定が盛り込まれているはずだ。

その規定に反すると、どんな処分がありえるのか、そのあたりは微妙だ。


懲戒処分には、けん責(始末書をとり将来を戒める)、減給、出勤停止、昇給停止、解職、諭旨退職、懲戒解雇などがある。

業務に支障のない軽微な違反だった場合に懲戒解雇まではしにくい。しかし、会社の信用を失墜するような仕事の場合には、懲戒解雇だってありえる。

過去の判例の中には、キャバレーなどの風俗で副業した従業員を解雇した事案で解雇は有効とされた判例がある。理由は、深夜の仕事(会計担当)で本業に支障が出たことと、キャバレーで働くことは副業の域を超えているという判断だ(小川建設事件 労働判例397号 1982年)。

年齢のサバ読みで解雇もあり


(3)経歴詐称がバレる


中小企業の中には、従業員を雇用する際に本人確認をしていないところがある。履歴書のみを見て信用して雇ってしまうのだ。だが、マイナンバーが導入されると、そこには本名・性別・生年月日が載っているので、本当のことがわかってしまう。

例えば、年齢詐称だってありえるだろう。

「若くないと雇ってもらえないと思って、年齢をサバ読んで履歴書に記載してしまった」などというケースだ。過去の判例の中には、本当は定年まで2年9カ月しかないのに、14年9カ月もあると年齢を低く詐称してマッサージ師に採用されたケースで懲戒解雇事由に該当するといったケース(山口観光事件 大阪地裁 1995年)もある。

例えば、苗字が嘘だったということもありえるだろう。何らかの事情により本名を隠して働いている人も、いるからだ。例えば、犯罪者として逃亡中のような人だ。

少なからぬサラリーマンが、マイナンバーの導入を控え、心の中がザワついていることだけは間違いないようだ。(賃金コンサルタント 北見昌朗=文)

妻のご機嫌はなぜ、すぐに悪くなるのか?

12.03 08:00PRESIDENT Online

「ウチもできた妻なら」とため息をついていませんか。“笑う哲学者”土屋賢二氏が結婚の神髄を語り尽くします。

女と電気製品を一緒にしてはならない


女を扱うのは、火薬庫でタバコを吸うようなものだ。その証拠に、それを聞いただけで女は「〈扱う〉とは何事か。電気製品みたいに言うな」と怒るだろう。もちろんわたしは女と電気製品を一緒にするつもりはない。電気製品は維持費がほとんどかからず、寿命がくれば文句も言わず黙って故障するだけだ。女とは大違いだ。

女は簡単に怒る。怒る原因は無数にある。しかもたいていなぜ怒っているのか理由がわからない。理由を聞くとさらに怒るから聞くに聞けず、どこを直せばいいのかわからないままだ。

以前、妻が女友達数人と旅行に行ったとき、中の1人の携帯にそのダンナから「こちらは月がきれいです。そちらはどうですか?」というメールがきたので、その奥さんは怒って直ちに消去したという。妻はわたしにその話をして「ひどいでしょう?」と同意を求めた。だが、このメールがなぜひどいのか、理由がわかる男がいるだろうか。


何もわからないまま、「たしかにひどい」と同調することしかできなかった。見当違いかもしれないが、女は「こっちは旅行で楽しく騒いでいるのに、なに浸っとんねん!」と怒っているのではなかろうか。

もちろん、怒っている本人には、なぜ自分が怒っているのか、10回のうち4回は理由はわかっている。以前、女子大で教師をしていたとき、学生に「自分がボーイフレンドになぜ怒っているかわかっているか」と聞いたところ、全員が悪びれることなく「わかっていないこともある」と答えた。

昔、ある太った中年女に「体重はどれぐらいあるの?」と聞いたところ、「そんなこと言えるわけないでしょう」と怒られたので、「じゃあ、下2桁だけ教えて」と言うとさらに怒られた。ヒントを聞いても怒るのだ。

また昔つき合っていた女に「A子ちゃん、スッピンもきれいだね」とホメたところ、「何時間かけてメークしてると思ってるの? それにわたしはA子じゃないっ!」と激怒した。こんなわずかなミスにも怒るのだ。

しかも怒り方が不条理だ。妻が出した期限切れの食べ物を食べて男が具合が悪くなったら、「どうしてそんなに弱いの」と男を責める。買った服をホメなかったら「見る目がない」と言って怒る。女を見る目がないのはたしかだが、自分の意思でどうにもならないことを怒るのは、尻尾が生えていないといって怒るようなものだ。

こういう女と平和な結婚生活を送る方法はある。まず家庭は安らぎの場だという先入観を捨て、帰宅したら最大限の緊張を保ちつつ、言動に細心の注意を払い、一歩家の外に出ればホッとするぐらいでなくてはならない。これだけ注意すれば、妻の怒りの1割は減らすことができるはずだ。

こう書くと、「結婚するな」と言いたいのかと思われるかもしれないが、わたしが言いたいのはその逆である。結婚には幾多の欠点があるが、それを補って余りある利点がある。

ソクラテスは結婚すべきかどうかを聞かれ、「結婚すべきだ。良妻に恵まれれば幸福になれるし、悪妻なら哲学者になれる」と答えたという。この話を聞いて、だれもが「ははん、いい妻を娶ればいいんだな」と思うだろう。10人の男が10人ともそう思う。そう思うのは勝手だ。「男を見る目のある女がいないからモテないのだ」とか「自分は才能があるのに認められないだけだ」などと思うのも自由である。どんな妄想を抱いても現実に通用しないだけだ(わたしの知るかぎり、「良妻」は妄想の産物だ。良妻と黄金の山は地上には存在しない)。


問題は悪妻に絞られる。「悪妻をもった哲学者」は二重苦である。長年哲学者をやっているわたしが言うのだからたしかである。ただ幸い、哲学者になる人は少数だ。ふつうの男はそれより軽度の不幸に耐えればいい。

多かれ少なかれ不幸になるのは事実だが、それでも結婚すべきだとわたしは言いたい。結婚しなければ苦労も苦悩も屈辱も絶望もない。人生の重要な半分を知らないまま死んでいいのか。安楽なだけの人生は、波乱のないドラマのようなものだ。そんなドラマを見て面白いか? わさび抜きの握り寿司を食べておいしいか(わたしは刺し身さえついていればいいが)? 障害を乗り越える喜びも、乗り越えられない悔しさも、妻が外出したときの束の間の解放感も味わえなくていいのか。人生を悔いなく味わい尽くしたいなら、ぜひとも結婚すべきだ。

それでも結婚は犠牲が大きすぎると思うかもしれない。検討してみよう。

▼自由がなくなる


自由にはさまざまな種類があるが、そのいずれも結婚は奪ってしまう。ある意味ではその通りである。たとえば結婚すれば自由に金が使えないのはたしかである。だが、自分の小遣いを増やしたいならもっと稼げばいい(わたしがいつも妻に言われていることだ)。月収を10万円増やせば、交渉次第では、1カ月あたり500円から1000円は小遣いを増やしてもらえる可能性がある。

また言論の自由もなくなるのはたしかである。必要以上にしゃべると逆鱗に触れる恐れがあるからだ。だがそれだけことばを大事に使う習慣が身につくことを忘れてはならない。だいたい現代人はことばを粗末に使いすぎているのだ。できれば平安時代の貴族のように、男女の間では和歌でしかやりとりしないようでありたいものだ。

忘れがちだが、沈黙する自由もない。妻に質問されて何も答えられずに黙っていると「何か言いなさいよ!」と叱られるし、妻の料理を食べて黙っていれば批判と受け取られるから、黙って食べることは許されない。食べた感想は「おいしい」とその同義語しか認められない。服などを買いにいって、「どっちが似合う?」と聞かれたときも、口ごもってはいけない。

「どっちも似合うから2つ買えば?」と言わなくてはならないらしい(それを知ってから、そう言おうと思っていたら、妻は1度もわたしの意見を聞かない。わたしに聞いても意味がないと思って相談なしに買っているのだ)。

話す自由はないかわりに、話を聞く自由は十二分に保証されており、つまらない話をイヤというほど満喫することができる。退屈だと思うかもしれないが、実はスリル満点だ。長々と聞かされるうちに真剣に聞かず、適当にあいづちを打ってすませるようになるが、あいづちを間違えれば激怒されるし、後で「聞いてなかったの? あのときバッグのお金を用意しておくと言ったじゃない!」と言われるから、気が抜けない。どこに地雷が埋まっているかわからないスリルがあるのだ。慣れてくれば、脳の4分の1を使って話を聞く能力が身についてくるから、会社の会議などに応用できる。

結婚すれば行動の自由も制限され、趣味やギャンブルにハマることは許されなくなる。だが、社会の中にいるかぎり、独身でも万引や空き巣などの行動は規制されるのだから、不自由なのは程度問題である。そんなに自由に行動したいなら、無法地帯で暮らして被害者になる覚悟があるのか?

行動の自由が奪われたら、冤罪で刑務所に入ったと思えば問題ない。しかもその刑務所の運営費は自分が出していると思えば気も安らぐはずだ。安らがなくても、自分は無実だと思っていられるから心配はいらない。

そもそも家庭にも人生にも安らぎを求めてはいけない。安らぎは地上にはない。安らぎを人生に求めるのは、魚を買いに八百屋に行くようなものだ。安らぎは死んだ後の楽しみにしておけばよい(地獄に落ちてはいけない)。

区役所や銀行に立派なソファーがある理由


▼自分の時間も自分の空間もなくなる


たしかに自分の時間はなくなるが、社会生活を営む以上、時間の制約は当然だ。犬を飼っても決まった時間に散歩に連れていかなくてはならないのだ。かりに自分の時間が確保できても、金がなければ暇をもてあますだけだ(それが実感できなければ、図書館にあふれている定年後の中高年男を観察すればいい)。金があればギャンブルなどに使って妻の怒りを買うだけだ。自分の時間がないぐらいのほうがストレスもない。多くの動物は生き延びるために死ぬまで働きづめで、ストレスを感じる暇もないのだ。それを見習えばいい。

空間も同じだ。自分の書斎をほしがる男がいるが、空間が与えられれば効果的に使えるのだろうか。机の引き出しでさえ、効率的に使っている人が何人いるだろうか。机の引き出しもちゃんと使えなくて何が男の空間だ。まともに空間を使えない者が自分の空間を要求するなど、贅沢すぎる。女は自分の部屋など要求しない(家全体が女のものだからだ)。自分の部屋をもってもどうせ生産的なことはしないのだ。せいぜい爪を切ったり耳掃除をするのが関の山だ。わたしは自分の部屋がなく、居間で執筆の仕事をしているが、居間にはテレビもステレオも冷蔵庫もあって快適である。


だが結婚して長年たつと、居間も含めて自分の家に「居場所」がなくなるのは事実である。家のどこにいても妻が邪魔物扱いにするからだ。不当だと思うかもしれないが、考えてもらいたい。大きくて捨てられないゴミが家の中にあったら、だれもが邪魔だと思うはずだ。女の目には夫がそう見えているのだ。ただ、男も動くことはできるから、家事を手早くすませたら、速やかに外に出るのがよい。そのために公園があり、図書館があり、デパートの階段わきには椅子が置いてあり、区役所や銀行や証券会社には立派なソファがある。しかも冷暖房つきだ。

▼自分の価値を認めてもらえない


結婚すると、妻の厳しい評価にさらされることになる。結婚前は自信にあふれ、怖いもの知らずだった男が、妻の顔色をうかがうようになる。結婚後10年もたてば、男の評価は急激に下がり、ゴミ扱いされるようになるから、自分でも、給料を稼ぐ以外に自分の価値があるのかわからなくなる。それが気に入らないなら、自分の価値を数え上げてもらいたい。驚くほど価値がないことがわかり、妻の厳しい評価こそ自分の真の価値だと知るはずだ。

妻の厳しい視線にさらされるおかげで独善的にならないですむのである。何となく自分はひとかどの人間だと思い込んだまま死んでいくところを救ってもらったのだ。自分がただのゴミだと知って初めてゴミから脱却する努力をするようになり、努力して初めて半人前になり、家庭内順位がバッグの下から、犬の下にまで昇格する。

▼労力が増える


労力を自分以外のことに使わなくてはならないのはたしかである。夫婦で分業だとしても男のほうが労力を払いすぎており、不公平だ。こう思う男もいるが、口が裂けてもそんなことを妻に言ってはならない。妻は自分のほうがはるかに家庭のために自分を犠牲にしていると思っているのだ。

そもそも男が共同分担というケチくさい考えでどうする。家事を妻まかせにすると、まずい料理を文句も言えずに食べ、お茶1杯頼むにも遠慮するようになる。そんな卑屈な思いをするぐらいなら、家事を自分が分担したほうがよっぽどラクだと思うはずだ。選ぶ道は2つに1つしかない。卑屈になってでも妻にやってもらうか、誇りをもって家事を引き受けるかだ。わたしは卑屈になるほうを選んでいるが、わたしの父は仕事も家事も子育ても文句1つ言わずに全部1人でやっていたから、やれないことはないはずだ。「共同分担」にこだわるなら、料理と後片付けは夫、食べて批評するのは妻の仕事、家事全般を引き受けるのは夫、遊ぶのは妻の分担だと思えばいい。

もう明らかだろう。結婚は女を増長させるかもしれないが、確実に男を鍛えるものだ。男が人間を叩き直したいなら、座禅して瞑想にふけるより結婚することだ。人格は錬磨され、人生の暗い面、手に負えない面を余すところなく経験できるのだ。それだけメリットがあれば、幸福になる必要がどこにあるだろうか。独身の人には、ぜひ結婚してもらいたい。そしてできればわたしと代わってもらいたい。(ユーモア・エッセイスト 土屋賢二)

年収1500万の「時間の使い方」新法則30【前編】

12.03 08:00PRESIDENT Online

経営者、外資コンサル、大企業の部長……高収入の地位に上りつめた“デキる”人。24時間はみな同じなのに、生み出す結果が違うのはなぜなのか? 生産性を高める時間術の秘密を、調査結果から導き出した。

「時間とは、経営資源。1日24時間という有限の資源をどう生かすかが、個人の生産性を高めるだけではなく、企業全体に大きな影響を及ぼすということに気づく必要があるのです」

と話すのは、エイチ・ピィ・ピィ・ティ代表取締役の坂本裕司氏。様々な企業に対して、ホワイトカラーの生産性を高めるコンサルティングを行ってきた。

今回、年収500万円以下と年収1500万円以上の2つの年収層各300人に対してアンケート調査を実施し、時間に対する意識や習慣について尋ねた。

調査結果を見ていくと、役職が高く、責任の重い仕事についている割合が高い1500万以上のほうが、時間を有効に使っていることがわかった。限られた業務時間内で、なぜ年収を大きく分けるような仕事の成果を生み出せるのだろうか。

年収500万円グウタラ社員の24時 VS 年収1500万テキパキ社員の24時


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「生産性を高めるというと、短い作業時間で仕事量を詰め込むか、残業など1日の労働時間を増やして絶対量を増やせばよいと思いがちです。しかし、実際の生産性とは、期待される成果を出すために必要な時間をきちんと把握してこそ、高められるものなのです」

依頼された仕事に対しても、1500万以上の6割はその到達度がイメージでき、それに近い成果物を生み出している。500万以下は5割以上が到達イメージを描けないまま成果物をつくろうとしていた。坂本氏によれば、「人間はイメージできないものを行動に反映できない」。

まずは「期待される成果」とは何なのかを把握すること。さらに、自分の能力をもってして、その成果物を生み出すためにどれだけの時間が必要なのかを予測すること。その2点を把握せずに、作業時間の短縮はありえないのだ。

これは、成果物を生み出す作業時間だけでなく、場所や時間の条件が皆一律であるはずの会議参加であっても同様だ。1500万以上は、約62%が会議開始前に終了時間を定め、約42%がその会議内容の着地点を見据えている。さらに、約68%が会議では必ず自分の意見を発言し、約30%が議事録を共有してその後の仕事に活用している。

一方、500万以下は、約30%が会議の着地点が見えないまま参加し、約65%が終了時間を決めずに会議を始める。終了後も、約40%が議事録を作ることも共有することもないという。

「同じ時間、同じ会議に参加していても、意識の違いで生み出されるものは大きく差が出る。ホワイトカラーエグゼンプション導入に先駆けて残業を削減したり、残業自体原則禁止したりする企業も増えています。しかし、限られた時間の中でより質の高いものを生み出せる人ならば、何も問題がないはずです」

漫然と会議に“参加”しているだけの人材は何も生み出していない。会議に“参画”して自分ならではの価値を付加したうえで、新たな成果を生み出せる人材が必要とされているのだ。

「同じ時間で生産性を高められる人とそうでない人との差は、こうした意識と行動の違いから生まれるのです。期待される成果に対して時間意識のない行動は、意志のある行動とは言えません」

朝・夜時間編


朝・夜時間編 新法則


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▼新法則01「朝を制するものは1日を制す」
ボーッと1日を過ごさないためにも、朝からの早いスタートが差をつける。1500万以上は約4割が5時台またはそれ以前に起床している。対して、500万以下では同数値は3割に満たなかった。

▼新法則02「移動中も情報収集と自己啓発」
通勤時間、1500万以上は情報収集やスキルアップ、メールチェックなど仕事に関わることに時間を使い、出社後すぐに仕事を始める準備万全。一方、500万以下は音楽鑑賞や仮眠をとる人が多く、仕事モードへの切り替えには時間がかかりそうだ。

▼新法則03「残業は、1時間まで」
高い生産性を求められる1500万以上の人々でも、半数の人が残業を基本的にしないか、1時間以内で終わらせている。業務時間内に仕事をきちんと終わらせる計画性が感じられる結果に。

▼新法則04「密な関係を生む夜の交流タイム」
夜は、家族と過ごしたり、風呂や夕食を済ませたりという人は両者に多かったが、1500万以上は圧倒的に外食など、人と会う時間にも使っている。日中の緊張感とは違う、夜のリラックスした時間帯で新たなネットワークを広げているようだ。

仕事編


仕事編 新法則


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▼新法則05「出世を分けるのは『正確さ』より『質』」
仕事で重視していることで差がついたのは、「成果の質」。「段取り」や「正確さ」を重視する数値は両者ともほぼ同数。すでにこれらのことは社会人として当たり前と捉えている様子でも、成果物に差が生まれているようだ。

▼新法則06「仕事はスピード命!」
“タイム・イズ・マネー”といわれるが、実際に仕事に対するスピード意識は、年収層で約20ポイントも差がついた。新法則05と合わせると、成果の質を保ちながらも早い仕事をモットーとする高年収層の仕事ぶりが見えてくる。

▼新法則07「自分の給与<会社の利益」
「自分の給与」「納期」「スキルアップ」。500万以下の数値の高かった仕事の要点は、どれも自分が課されている業務や評価に関わるキーワード。一方で、1500万以上の24.7%が「会社の利益」を考えて仕事をしていた。

▼新法則08「当然、締め切り前提出」
締め切りのある課題に対して、1500万以上は約3割がゆとりを持って事前に提出し、約5割が期日を守っている。一方、500万以下では、時々またはほとんど守れない人が約3割。期限に対する意識の甘さを露呈した。

▼新法則09「依頼された仕事は120%の成果物を」
仕事のアウトプットを出さなければいけない場面で、「自分にしかできないこと」を考えて実行している人は、年収500万以下では37%。それに対して、1500万以上では、57%と20ポイントの差。与えられた仕事に対して、自分なりの創意工夫をし、付加価値をつけようとする向上心の差が見えてくる。

▼新法則10「仕事のモットーは心は広く、目線は高く」
1500万以上で圧倒的に数値が高かった仕事のキーワードは、「信頼」「コミュニケーション」「社会貢献」。500万以下が自己中心的に仕事を見ている(新法則07)のに対し、1500万以上は自分の仕事と会社、さらには社会への還元を視野に入れていることが顕著だ。

▼新法則11「1日の仕事スケジュールは8割立てて、ゆとりを残す」
その日の業務計画を立てるとき、500万以下は計画を立てない人が約4人に1人。1500万以上は、50%計画派が27.3%、80%計画派が29%。1日の計画を立てつつも、当日現場で融通を利かせられるゆとりを残していた。

▼新法則12「会議には必ずゴールがある」
会議前に、到達点や目標着地点を見定めているのは、高収入層。1500万以上の41.7%は、着地点が見え、その通りに進むと回答。500万以下は、29.3%が着地点は見えずに参加。
[会議前に着地点が見え、その通りに進む]
・1500万以上……41.7%
・500万以下……23.7%
[会議前に着地点が見えていない]
・1500万以上……11%
・500万以下……29.3%

▼新法則13「『参加』ではなく『参画』する」
漫然と座っているだけなら、いないも同然。会議に対して必ずコミットメントし、自分の意見を出すと答えたのは、1500万以上では67.7%。500万以下では46.3%だった。
[会議では必ず自分の意見を発言する]
・1500万以上……67.7%
・500万以下……46.3%

▼新法則14「会議前に終わり時間を決める」
新法則12で会議には到達点を必ず設定することがわかったが、そのためにかける時間も最初から明確に設定しているのは高収入層。1500万以上は62.3%だったのに対して、500万以下は約半数の35.3%のみだった。

▼新法則15「議事録はネタの宝庫」
会議終了後、500万以下の4割が、議事録を作ったり共有したりすることがないと答えた。会議を受け身で聞いて、そのまま終わってしまっているようだ。一方、1500万以上では約5割が議事録を作って共有し、そのうち半数以上が活用していると答え、同じ会議に参加していても活用度に大きな違いを見せた。

▼新法則16「メールは24時間レスポンス」
なかなかキリのないメールのやりとりも、人をつなぐ大事な手段。1500万以上では、基本的に1日中メールの確認をしている人が約半数。返信もまめに行っている。500万以下では返信しない人が約2割と比較的多かった。

▼新法則17「定期的に仕事を振り返る」
自分が行った仕事に対して、1週間や1カ月など定期的に振り返りを行っている人は、1500万以上では46.3
%。500万以下では34%。定期的な振り返りから、改善点や次回の作業時間の短縮を図ることにつながりそうだ。(岩辺みどり=文 坂本裕司=監修 竹井俊晴=撮影)

【調査概要】楽天リサーチの協力を得て実施/対象:ビジネスマン600人(20~50代男性、年収層は半分ずつ)/期間:2014年8月1~4日

ノーベル賞・大村教授流「やり抜く力」をつける法

12.03 08:00PRESIDENT Online

ノーベル賞受賞の背景にあった「レジリエンス」


「1回失敗して、それでもってもうダメだと思ったらダメですね。これが必ず役に立つんだ、と思いながら研究をつづけることが大事だと思います」

「成功した人は言わないけれど、人の2倍も3倍も失敗している。失敗を恐れないように」

今年のノーベル医学・生理学賞に決まった北里大学特別栄誉教授の大村智氏(80歳)は、記者会見でそう語った。静岡県の川奈ゴルフ場近くで採取した土から、抗生物質「イベルメクチン」をつくりだす微生物を発見したのは40年前。それが受賞理由となった「寄生虫によって引き起こされる感染症の新しい治療法の開発」につながった。米大手製薬会社メルクと共同開発した「イベルメクチン」は、アフリカ、中南米の発展途上国を中心に猛威を振るっていた風土病「オンコセルカ症」に絶大な効果があると確認される。大村氏は数千億円に相当する特許権を放棄し、世界保健機関(WHO)による無償配布などを通じて、3億人以上もの人々が病気から救われたという。

その業績と情熱的で地道な研究姿勢とともに、定時制高校の教師から研究者に転じた異色の経歴、メルク社から研究費を引き出したビジネス的手腕、故郷の山梨県韮崎市に美術館を建設した美術愛好家としての顔など、偉人伝を読むような大村氏の半生は多くの人を魅了している。

「大村先生の経歴やエピソードから、レジリエンスが非常に強い方だという印象を受けました」

ポジティブサイコロジースクール代表の久世浩司氏はそう話す。

レジリエンスとは「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセス」のこと。2013年の「世界経済フォーラム(ダボス会議)」で、国際競争力が高い国ほどレジリエンスも高いと発表され、ビジネス界でも知られるようになった。

久世氏は注目されるレジリエンスの専門家として、多くの企業や公的機関でトレーニングの講師を務めてきた。

「誰でも失敗や逆境には直面します。すぐに心が折れて投げ出したり、逃げ出したりする人がいる一方で、ストレスに負けない人や困難に打ち勝つ人がいます。大村先生はまさに後者の代表」

大村氏は山梨大学を卒業後、都立墨田工業高校定時制の教師を務めながら東京理科大学大学院の修士課程で研究をつづけた。実験器具などを購入するために、私立学校の授業も受け持っていた。

その頃、父親が地元山梨の学識ある人に大村氏の将来について尋ねたことがある。その先生は「この経歴では将来性がない。せいぜい大学の講師どまり。高校教師を続けて将来は校長になればよいのではないか」と答えた。父親からそのことを聞いた大村氏は「日本では講師どまりかもしれない。だったら世界を目指せばいいじゃないか」と思ったという。

29歳で北里研究所に入り、36歳で夫人を伴ってアメリカの名門ウェスレーヤン大学に留学。日本から「戻っても研究費はない」と言われ、製薬会社をまわって共同研究を打診。メルク社から年間2500万円という破格の研究費が提供される契約を結び、動物薬の研究に打ち込んだ。しかし、3年契約のうち1年が経過しても成果は出なかった。

帰国後、北里研究所に復帰すると、ポリ袋やスプーンを持ち歩いては各地の土を集め、微生物を培養して有望な菌を探すという地道な作業を続けた。

「レジリエンスが高い人に共通する3つの特徴があります。回復力、緩衝力、適応力です。大村先生はこの3つを兼ね揃えていたのではないかと思います」「回復力」が強いと、失敗などで気持ちが落ち込んでも、物事の捉え方を柔軟に切り替えてすぐに立ち直ることができる。逆に弱い場合には、ネガティブな思考・感情が繰り返され、深く落ち込みメンタルの問題に発展するリスクもある。大村氏が、日本で将来の見込みがないなら世界を目指せばいいと発想を転換できたところは、まさに回復力の強さを示している。


2つ目の「緩衝力」は、困難な状況でも大きなストレスを受けない力のこと。いわゆるストレス耐性だ。

大村氏は36歳でアメリカへ渡った。外国での生活は言葉の壁や文化の違いでストレスが多い。しかも、母国から「研究費はない」と言われる逆境にも直面した。

「不測の事態やストレスに見舞われても、それで心が折れなかったのは、しなやかな心で緩衝力を発揮したのではないかと想像できます」

3つ目の「適応力」は、困難や逆境に直面したときに、しなやかに切り抜ける柔軟な問題解決力のこと。

帰国後に必要な研究費をメルク社から勝ち取ったこと、その後メルク社との共同研究で成果が出ないなかでも、ぶれることなく方策をとり、研究をつづけたこと。そのような状況の中、成果を挙げたのはまさに適応力の賜物だ。

「問題に直面しても、柔軟に対応して解決策を見出し、結果が出ないというプレッシャーにも打ち勝った。そこからイベルメクチンを発見し、有力な治療薬の開発につなげたわけです。大村先生の研究者人生には、レジリエンスが高い人に共通する回復力、緩衝力、適応力が随所で発揮されています」

大村氏の成功プロセスは、レジリエンスの重要性を改めて教えてくれる格好の教材だといえる。

やり抜くために必要なのは「熱意」「自制心」「忍耐力」


「大村先生は、レジリエンスの高い人が多くもつ気質である『グリット』も抜きん出ていると思われます」

グリットとは、心理学の研究で、達成困難と思える長期の高い目標に向かって、熱意と粘り強さをもって、不屈の精神で根気強く努力をつづけられる性格的な特徴を表す。各分野の専門家や識者がプレゼンする人気のトークライブ「TED」で、アメリカの心理学者アンジェラ・リー・ダックワース教授がプレゼンした動画である「成功のカギは、やり抜く力」は700万回以上も再生されている。ここでも「やり抜く力=グリット」がキーワードとなっている。

「大村先生は、高校時代にスキーのクロスカントリーで国体に2度出場し、教師から研究者になるという大きなキャリアチェンジにも踏み出している。ご本人もよく話すとおり、負けず嫌いな性格で、“やり抜く力”が卓越していると思います」

グリットは「非認知能力」のひとつとして捉えられている。00年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ジェームズ・ヘックマン教授は、人間の能力(人的資本)は「認知能力」と「非認知能力」の2つに分けられると説明した。認知能力は「読み・書き・そろばん」のようにIQやテストで判定できるもの。それに対して非認知能力は、真面目さ、粘り強さ、自制心、忍耐力、気概、首尾一貫性などの気質にかかわるものを指している。

非認知能力の高さは、本人が生まれもつIQや育った家庭の収入と同等以上に、学校での成績や将来の収入に影響を与えるとされる。

「グリットなどの非認知能力は、子供の頃から育てることが重要ですが、成人後も伸ばすことができると考えられています。高く困難な目標を達成する秘訣となる“やり抜く力”を形成するためには、心理学における3つの強みを形成することが重要だと考えます」

強みと美徳を研究するVIA研究所によると、人の強みは24種類に分類されることがわかっている。そのうち、達成力につながる“やり抜く力”に関係するのは「熱意」「自制心」「忍耐力」だと考えられる。

「熱意」を強みとする人は、情熱と活力をもって仕事や勉強に打ち込むことができる。そのポジティブな感情は、周りの人たちにも影響を与え、元気にさせるのが特徴だ。

人間の感情や雰囲気には波及効果があり、周囲に伝染することは経験的に理解できるだろう。たとえば職場のマネジャーが熱意を強みとするタイプなら、そのポジティブなエネルギーがチーム全体に伝わり、高い目標に取り組める“熱い集団”になる。短期間で業績を伸ばすベンチャー企業などでよく見られることだ。

反対にマネジャーがネガティブなエネルギーを発していると、メンバーの活力を削ぎ、自信を喪失させて「自分はなんて小さな存在なんだ」と自己肯定感を低くする。これも多くの職場で見られる状態だ。

大村氏は定時制高校の教師だった頃、勤め先の工場から試験に駆けつけた生徒の手が油で汚れているのを見て、もっと自分も勉強しなくてはいけないと思ったというエピソードはよく知られる。心に火がついた瞬間だ。

しかし熱意の強みだけでは、高く困難な目標の達成にはつながらない。新しいことには熱心に取り組むが、すぐに飽きて意欲が継続できない人もいる。 グリットを自分のものにするには、この熱意に加えて自制心と忍耐力の強みを身につける必要があるだろう。

「自制心」の強みをもつ人は、自分の感情や思考の反応を的確に把握し、コントロールできる。目標に到達するため、誘惑に負けないのも自制心の表れだ。仕事中にはさまざまな誘惑がある。遊びの誘惑やお酒の誘惑はもちろん、最近ではフェイスブックなどのSNSも仕事への集中を妨げる誘惑の1つになっている。

「スマホが気になって、ひと息つくたびに手に取ってしまう人が増えています。あるいは、ダイエット中なのについお菓子を口に運んでしまう、貯蓄に励みながらコンビニで無駄づかいするのも同じです。そういう“マイクロ誘惑”は、積み重なると自制心を弱める負の影響が大きいものです」

大きな誘惑は気づきやすくて抵抗しやすいが、これぐらい大丈夫だ、と慣れ親しんでしてしまう“マイクロ誘惑”は怖い。その繰り返しによって、自制心がしだいに劣化していくこともある。欲望を抑制する心は小さなところから崩れやすい。

自制心が“マイクロ誘惑”で劣化するのと反対に、小さな挑戦を繰り返すことで自制心が強化されることも期待できる。たとえば、「始業30分前に出社する」「毎日ウオーキングや運動をする」といった小さな目標を2週間ほど達成しつづけるだけでも、自制心は徐々に鍛えられる。

3つ目の「忍耐力」の強みは、集中力と我慢強さのことで、ある課題を最後までやり遂げるという気概、気骨にかかわる。途中で障害にあっても、目標に向かって努力を継続できることは、ビジネス活動の根幹だといえるだろう。

この忍耐力も、仕事を最後までやり遂げた達成感の積み重ねで鍛えることができる。困難に直面して投げ出した経験が多いと、それが習慣化して「しつこさ」「しぶとさ」が培われることもない。

「自分のやり抜く力を高めたいなら、日頃から熱意、自制心、忍耐力を意識して仕事に取り組むことが大切です。強みを発揮することは、レジリエンスを強化し、仕事の活性化にもつながります」

大村氏の偉業をきっかけに、レジリエンスが強い個人、レジリエンスが強い組織が増えれば、日本の競争力も高まることが期待できるだろう。(Top Communication=文・構成 共同通信社/amanaimages=写真)

ツイてる人がよく口にする10の言葉【部下編】

12.03 08:00PRESIDENT Online

言葉づかいを変えたときの、「突然どうしたの」という周囲の反応を恐れてはいけない。ツキを味方につけるためには実践あるのみだ。『残念な人の口ぐせ』など著書発行部数累計100万部超、言葉遣いのプロ・山崎将志氏に聞いた。

▼場が明るくなる言葉


挨拶が大事なのは言うまでもない。職場ではもちろんだが、まずは、ビルの警備員や得意先のエレベーターの中で一緒になった人に、挨拶してみることをすすめたい。

エレベーターに乗り込むとき、私たちは、つい「すみません」と言ってしまう。エレベーターというのは不思議な空間で、先に乗っている人が偉いような感覚がある。だから、「あとから乗り込んですみません」というわけだが、実際には、先に乗っている人とあとから乗った人は対等。だから「すみません」という必要はない。

でも、「すみません」が言えるなら、「こんにちは」「おはようございます」も言えるはずだ。こちらのほうが自然で場の雰囲気も間違いなく明るくなる。

しかし、挨拶というのは、しなれていないとなかなかできないものである。営業マンなど、普段から挨拶をする機会がある人はいいが、オフィスでの事務仕事が多い人の場合、会話が少なくなっていき、結果、暗い雰囲気の職場になってしまう。会話のない暗い職場では、業績も上がらない。だからといって、今まで挨拶すらしていない人が、急に会話などできるはずもない。

これは私自身が実践してきたからこそ言えることなのだが、エレベーターなどで挨拶をすることは、職場で会話をするための練習にもなる。いきなり話しかけて変に思われないだろうか、などということは気にしなくていい。「急にどうしたの?」と言われたら「『プレジデント』を読んでやってみたんです」と言えば愛嬌が感じられるし、そこから雑談に発展する可能性もある。

▼場が盛り上がる言葉


会話のない職場は運気が下がる。会話を増やすためにも、前述のようにまずは挨拶をする。そのあとに、「最近、面白いことがあったんですよ」と会話をつなげられれば、場がさらに盛り上がる。


そこで取り入れたいのが、「最近、面白いことがあったんですよ」に続く、面白ネタである。

面白ネタは、できれば仕事に関連した雑談がいい。隣の部署に行ったら、こういう話があったとか、食堂のおばちゃんから、こんな話を聞いたとか。何でもいいが、新聞に書いてあったことやテレビで言っていたことではなく、独自の情報がいい。やはりオンリーワンの情報やストーリーを持っている人の話は信頼感が高いからだ。

私が最近入手したのは、個人タクシーの運転手に聞いた話。日中、タクシーに乗ったらやけに空いていたので、「今日は空いていますね」と言うと、「最近この時間帯は空いているんですよ」と返答があった。

さらに話を聞くと、その運転手さんは、以前は夜の8時から朝5時まで仕事に出ていたが、最近は終電を逃して遠方までというお客さんが減ったので、昼間出ることにしたのだという。なぜ昼間なのかというと、結局、夜間に長時間客待ちして長距離の一発狙いをするよりは、1回1000円でも、お客さんを多く乗せたほうが、時間単価は高くなるからだという。「タクシーは時給勝負」というわけだ。

こういう、ネタとして面白い話は常に意識してストックしておくことが大事だ。

大抵の人は、「面白いことなんて何もない」というが、ボーッとしていたら、面白い話に気づかない。大切なのは、身の回りのことをよく観察して、何でも面白がることである。

▼仕事を手に入れる言葉


問題が起こったときに、上司に「どうしたらいいですか?」と相談する人がいるが、これが口ぐせになっている人は、上司からの評価は低いと考えたほうがいい。


さらに、「実はこの前、こういうことがあって、こうして、ああして、それでこうなってしまったのですが、どうしたらいいですか?」と、だらだらと前置きをして、結局、「どうしたらいいですか?」というのは、最悪だ。

困ったことがあったときに、すぐに上司に相談する点では評価できるが、上司が部下に求めているのは、「こうしたいけれど、いいですか?」という承認、確認の相談である。

例えば「A社に納品した商品に不具合が出ました。どうしたらいいですか?」ではなく、「A社に納品した商品に不具合が出ました。これからすぐ代替品を持って、A社に向かいたいと思います」ができる人の言葉だ。

アイデアを提案するときも同じ。

「不倫妻100人にアンケート取りたいんです!」と最初に切り出せば、上司も興味を持って聞いてくれる。

「なぜ、これをしたいのか」という理由は、そのあと話せばいい。

承認、確認の相談であっても、「最近、私の周囲で結婚生活がうまくいってない人がいて、旦那さんの話を聞くと、こうでああで……」と前置きが長いのはNG。まず結論から、できればインパクトのある言葉で話すことが大事だ。

「面倒な仕事ばかり降ってくる」「やらされ仕事ばかりだ」と不平を言っている人は、「○○がやりたい」を口ぐせにしてみてほしい。

▼ナメられない言葉


上司から、面倒な仕事を押しつけられたり、得意先から無理難題を突きつけられたりしたとき、「無理です!」と突っぱねたいところだが、それもできないという場合、どういうふうに回答するのがいいだろうか。


相手によく思われたいからといって、無理難題に対して、「ハイ、喜んで!」と、受けてしまってはダメだ。何でも先方の言いなりでは、それから先、この人は無理を言ってもいい相手なんだと思われて、ナメられてしまうし、結局失敗して迷惑をかけることにもなる。

こういう場合、「無理だけれど、頑張ります」ということを、さわやかに伝えて、相手に恩を売っておきたいところだ。比較的、親しい間柄であれば、「スケジュール的には非常に厳しいところですが、わかりました。その代わり、今度焼き肉おごってください!」と、明るく言うのがいい。もし、焼き肉よりラーメンのほうが好きだったとしても、大変さをアピールするためには、ちょっと高価な焼き肉や寿司などのほうが相手にうまくニュアンスが伝わる。

また、かなり安い金額で仕事を引き受けざるをえないときは、「わかりました。今回はご提示の金額で承知しました。ですが、非常に厳しいので、交通費は別途経費でお願いします」と交渉してみてほしい。その際は明るい声で言うことを忘れてはならない。

▼感謝を伝える言葉


日本人は感情を顕わにするのが得意とは言いがたい。しかし、同僚が「大口の新規受注が取れた」とか、「激戦の末、コンペを勝ち取った」というような感動的な場面では、アメリカ人くらいのオーバーアクションで、相手に賞賛の意を伝えたい。


その際は、「素晴らしいですね」という言葉だけでは弱い。どうせなら、「感動した!」と、ガッツポーズ、バンザイなどのアクションつきで言ってほしい。それくらいやれば、相手にも社交辞令のお世辞でないことが伝わるはずだ。

また、外注したサンプルが郵送で届いた場合、素晴らしいものだったら、すぐにメールか電話で「サンプル、感動しました! 御社にお願いして本当によかったです」と伝えたい。すぐに伝えることで、「わざわざ連絡をくれて、すごく喜んでくれた」と感激して、次もいいものを作ろうと思ってもらえるだろう。(伊藤左知子=構成)

◎ポジティブワードのバリエーション[部下]


・やったぞ!
・スゴイ!
・おかげさまで
・ぜひやらせてください
・お金を払ってでもやらせてもらいたいです
・いつまでですか?
・(無理難題に対して)またまたご冗談を
・(無理難題に対して)まさか、ご乱心ですか?
・(迷惑にならない場所で)バカヤロー!
・(助言を求めて)何か一味足りない気がするんです