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 国のハンセン病隔離政策により差別被害を受けたとして、元患者の家族が集団で謝罪や賠償を求める国家賠償訴訟を起こすことがわかった。家族による集団訴訟は初めて。2001年に原告が全面勝訴したハンセン病訴訟の弁護団が原告を募っており、すでに患者を親に持つ男女8人が参加する予定という。

 01年のハンセン病訴訟後、国は元患者に謝罪し、補償金や一時金を支払ったが、家族には直接、謝罪や補償をしていない。弁護団によると、今回、提訴を予定する8人は患者遺族や家族でつくる「れんげ草の会」(熊本市)のメンバー。原告の対象は子どもや発症時に同居していた家族で、来年2月にも熊本地裁に提訴する。

 今年9月、鳥取県の患者の子の男性が起こした裁判の判決は賠償請求は棄却したものの、患者の子が隔離政策のために偏見や差別にさらされてきたと言及。弁護団はこの判決を受けて家族と相談し、訴訟の提起を決めたという。弁護団の国宗直子弁護士は「家族は人生を隔離政策によって変えられた。裁判を通じてその被害や偏見差別の大きさを知ってもらい、なくしていければ」と話す。

 原告になることを決めた鹿児島県奄美市の奥晴海さん(69)は母親が元患者。患者ではない父親も収容され、親戚の家に預けられた。「隔離された親も自由を奪われた被害者だけど、子ども時代を一人で生きた私たちも被害者。裁判を通じて少しでも光が当たれば」と話す。

 国の「らい予防法」が1996年に廃止されてから20年が経つ来年3月末に、損害賠償請求ができる「除斥期間」が終わるため、弁護団では原告の募集を急いでおり、2回に分けた提訴も検討している。訴訟に関する問い合わせは熊本市の菜の花法律事務所(096・322・7731)へ。(籏智広太)