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【埼玉】細川紙のユネスコ無形文化遺産登録から1年 観光客は1.5倍に
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会が昨年十一月二十六日(日本時間二十七日)、小川町や東秩父村で作られる細川紙を含む「和紙 日本の手漉(す)き和紙技術」の無形文化遺産登録を決定してから一年。両町村の観光施設を訪れる観光客は登録前の一・五倍に増えるなど、ユネスコ効果は続いている。関係者は手すき技術を次世代に引き継ぐため、和紙の新たな需要創出などの課題にも取り組んでいる。 (中里宏) 小川町にある観光施設・埼玉伝統工芸会館には和紙などの工芸品の展示施設や手すき体験施設がある。柴生田(しぼうた)元子館長(64)によると、昨年四〜十月の有料入場者二万六百十七人に対し、今年四〜十月は三万二千五百人と一・五七倍に増えた。「登録をきっかけにして和紙に興味を持って訪れてくれる人が増えた。特に手すき体験の利用者は二倍になり、来館者向けの説明にも力を入れている」という。 東秩父村和紙の里の福島栄二支配人(66)も「来場者は約一・五倍で、みやげの売り上げも増えた」という。もともと小学校の体験授業による団体利用が多かったが、「登録後は一般客の手すき体験が大幅に増え、予約なしで来る団体さんもいる」という。「和紙の需要拡大の試みとして、美術大学に和紙を使った作品制作を依頼している。近いうちに作品展を開催したい」という。 国指定重要無形文化財の保持団体である細川紙技術者協会の鷹野禎三会長(81)は「見学者の対応などに追われた一年だった。登録されたのは、紙そのものではなく手すきの技術なので、確実な製品を作る技術の維持・向上に努めたい」と話す。協会として後継者育成に取り組んでいるが、「指導者を育てるためには、商売を続けられる和紙の需要がなければならない。和紙がなぜ衰退したのかをもう一度再点検して、新たな需要を考えていきたい」という。 小川町と東秩父村は登録一年の観光対策として「おもてなし大作戦」を展開中だ。埼玉伝統工芸会館、東秩父村和紙の里、楽市おがわ観光案内所(小川町)の三カ所に和紙製の「おもてなしカード」一万枚を用意。同時に配布する観光マップに記載された飲食店や観光施設など六十六カ所で、入館料割引やコーヒーサービスなどの特典が受けられる。ユネスコ登録を機に増えた観光客の維持や拡大を狙う。 東秩父村では二十六日、細川紙を使ったちぎり絵の大作「5000人チャレンジ! 細川紙ちぎり絵アート」(縦一・四メートル、横四メートル)がお披露目された。総務省の地域おこし協力隊員として四月に着任した西沙耶香さん(25)と村が企画。鷹野会長が提供した細川紙を十五色に染め、和紙の里の特設コーナーで村民や観光客が制作に参加した。十月二十三日から始めて今月十五日に目標の五千人を突破。最終的な参加者は村人口三千人の二倍以上の延べ約六千七百人になり、花桃、レンギョウ、ムラサキツツジが咲き誇る同村白石地区の風景が完成した。二十八日から和紙の里の入り口ホールに展示される。 西さんは「和紙に関心を持つ人を広げるため、今後もアイデアを出していきたい」と話していた。 PR情報
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