逆に、公人の家族に関連することでも報道しなければならないこともある。最近、与党セヌリ党の金武星(キム・ムソン)の娘婿による麻薬事件の捜査、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長の息子による兵役逃れ疑惑などもそうだ。政治家の娘婿や息子は公人ではないが、金代表や朴市長は事件の処理に影響力を与えかねない地位にあり、また事件の経過によっては政治的な評価が変わる可能性もある事案だからだ。
公人の家族の問題をどこまで報道すべきかは、事案ごとに判断するしかない。その基準はない。現在のところ、公人とはどんな人を指すのかという基準も確立されていない。メディアはもとより裁判所も、誰が公人であり、どこまで報道すべきか、名誉毀損(きそん)に当たるか否かという確立された基準はない。公人の基準がないのだから、公人の家族については言うまでもない。だが、公人についての報道は、2002年の大法院の判決以降、客観的に国民が知る必要がある事実なのか、社会的に影響を与えかねない重大な事案なのかが、名誉毀損罪の免責の大まかな基準となっている。
公人の家族も、国民が知る必要がなかったり、あってもあいまいだったりするケースでは、公人の家族だという理由だけで記事を書くことがないようにすべきだ。これまでメディアは、有名人の名前が出てくると、まずは注目されるため、有名人の家族に関連することでも慣習的に記事を書いてきた。そのような記事は法的には問題がなくても、倫理的には「興味本位の記事だ」という批判を受けかねない。
こうして見てみると、「鄭明勲氏の兄」についての記事も、読者が指摘した通り、問題のある記事だと言える。国民が知る必要があり、重大な事件であるとは言い難いからだ。今回の機会に、メディアが「公人の家族」についても細かい基準を設けられればと思う。