10月15日付の本紙に『鄭明勲氏の73歳実兄、横領で4億円賠償命令=ソウル中央地裁』という記事が掲載された。ソウル市立交響楽団(ソウル市響)の鄭明勲(チョン・ミョンフン)芸術監督の兄(73)が、仁川市が設立した公営企業「仁川アートセンター」の社長に在任中、横領した事業費を同社に賠償するよう命じた判決について報じたものだ。この記事を読んだ、鄭監督のファンという読者が電話をかけてきた。この読者は「なぜ当事者の名前は明かさず、鄭監督の名前を前面に出すのか。鄭監督を攻撃するための記事なのか」となじった。別のある読者も「記事が最初から最後まで当事者の名前を出さず『鄭監督の兄』とだけ書いたのは理解できない。朝鮮日報だけがそうなのではなく、ほかの新聞もそのように報じたが、なぜそんな報道をするのか気になる」という意見を寄せた。
過去にもこのような報道はたまにあった。2002年には、第五共和国(1981-88年の全斗煥〈チョン・ドゥファン〉政権)時代の大規模な汚職事件に関与した女性の息子がひき逃げ容疑で逮捕されたという記事が掲載された。当時、女性は本紙に対し抗議文を送った。05年には大法院(日本の最高裁判所に相当)の元裁判官の息子が女子大生を拉致した容疑で警察に逮捕されたという記事が掲載され、昨年には別の元大法院裁判官の息子が自殺したことも報道された。このように、公人の家族に関する事件や、どこまで報道したらよいか判断が難しい事件がときどき発生し、記者や法曹関係者たちの悩みの種になってきた。公職者の人事聴聞会の際にも、候補者の家族や、さらには配偶者の親族がどのような不正に関与したか、不動産に対する投機を行ったか否かといった「あら探し」のような暴露が繰り返され、論議を呼び、これを報道するメディアが非難されることもある。