さらに別のある地域では「治療」を意味する「セラピー」という言葉を郡の名称の前に置き、これをこの首長の任期中、8カ月にわたり使用したが、今では放置されている。後任の首長たちがセラピーとは関係のない特性を打ち出しているからだ。この自治体のある職員は「キャッチフレーズに数億ウォン(数千万円)単位の予算を使ったため、簡単に廃棄もできないから放置しているが、だからといって新しいキャッチフレーズを決めるのも簡単なことではない」と話した。
広域自治体か基礎自治体かに関係なく、どこの自治体も首長が交代するたびにキャッチフレーズが変わるパターンが繰り返されており、一つのキャッチフレーズがずっと使われ続けるケースを見つけることの方が逆に難しいほどだ。近隣の市や郡の政策をパクってはこれを「ベンチマーキング」と呼び、差別化に考えも及ばないような自治体はキャッチフレーズを決めるときもパクることしか考えなかった。そのため自治体のキャッチフレーズはどこもその時に流行している言葉を使い、形だけをそれらしくしただけのいわば展示用ばかりだ。これは全羅南道だけでなく、全国に共通する問題だ。
そのような中、つい先日ソウル市が「アイ・ソウル・ユー(I. SEOUL. U)」という新キャッチフレーズを発表したことを受け、激しい議論が巻き起こっている。上記の莞島郡の事例から分かるように、地域のスローガンを示すキャッチフレーズはその地域の特性や産物など、いわば強みを前面に出すものでなければならない。つまり確かなメッセージを短い言葉に集約した「凝縮性」、なおかつ他の地域との違いを際立たせる「差別性」、さらに長く使われて全国に広めることができる「持続性」が必要で、これらが成功の鍵になるのは言うまでもない。「I. SEOUL. U」をめぐる議論はこのことをあらためて示唆しているのではないか。