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 適切な温暖化対策を取らなければ、2030年までに1日1・9ドル未満で暮らす貧困層が新たに1億人以上増えるとの試算を世界銀行が9日(日本時間)、発表した。食料生産の減少や感染症の広がり、気象災害などが理由という。温暖化被害の軽減策(適応策)の充実のため、更なる途上国支援が必要としている。

 世銀は1日1・9ドル未満で生活する人々を貧困層としており、2015年には世界で約7億人いると推定している。

 報告書によると、温暖化による影響で、農地が30年までに5%失われ、干ばつに見舞われる人も9~17%増加するとしている。気温が2~3度上昇することで、マラリアにかかるリスクがある人も、1億5千万人以上増える。

 洪水や干ばつなどの気象災害の被害は、高所得者層より低所得者層が大きい上、社会保障も不十分だとしている。

 こうした影響で、1億人以上が貧困生活に追いやられ、サハラ砂漠以南のアフリカや、インドなどの南アジアで特に深刻になるという。

 貧困化を防ぐために、上下水道の整備や低地からの移住に加え、治水の高度化や気象災害の早期警報システムの整備、温暖化に強い穀物の導入などをあげている。その上で、「実現には国際社会の支援が不可欠だ」としている。(パリ=香取啓介)