SIerと言われるところに勤めていて、発注側(以下、元請け)と受注側(以下、パートナー)の仕事の両方をしたことがある。
このエントリーは、いわゆる客先常駐・人月商売についての個人的な所感であり、あくまで元請けとして働く上での自身の意識を改めて考え直したいという趣旨で書いており、では受注側に問題が無いのかというとそういうことを言うつもりはないので、そこはご了承いただきたい。
元請けとパートナーの関係は対等
未だにお金というのは、水のように上から下に流れるものなのか理解できない時がある。基本的に、お金は横から横にしか流れないと思っている。
ただ、元請けから「もう金は払わんよ」と言われててしまえばパートナーは困るわけなので、この点でパートナーの立場は元請けのそれよりも弱いのか、と思う。
その一方で、パートナーも「分かりました。今までお世話になりました。」で済ませられる程の規模を持っていて、かつ元請けもそれと同等か近い規模のパートナーとしか仕事をしていないとすると、発注側は困ってしまう。
何が言いたいかというと、物の見方を変えれば元請けが強くなり、また逆も然りなのだから、お互いに敬意を持って接しないとダメよ、ということ。
もっと言えば、元請けとパートナーの関係というのは契約上の話だけであって、現場のメンバ同士の上下関係をも規定するものではないと思ったほうが良いと思う。
ただ、敬意だけではダメで、自分たちで何をしようとしていて、何をパートナーさんにお願いするかを明らかにしないとダメ
パートナーさんに人の派遣を依頼するときの理由は色々であるが、端的に言えば、ある特定の知識や経験を持つメンバの不足であって、それ以上でもそれ以下でもない。だから、「自分たちに何が出来て、何が出来ないからパートナーさんを探して、お願いしよう」というロジックが成り立っていないと、両者の関係はおかしくなる。
以下のブログ記事を見た時に、「ああ、このロジックが成立していないんだな」と思った。
顧客側のチームメンバーが寝ていようが、さぼっていようが、ネットサーフィンして遊んでいようが、席に戻ってこなかろうが、彼らには全く叱責がなく、自分たちだけ一挙手一投足に対してあれこれケチをつけられることも多々あります。頭では、彼らは顧客側、我々は雇われている側だから立場が違う、とわかっていつつも、同じ現場にいてなんだその差別は、やってられん、となるわけです。
IT業界で客先常駐という働き方はもうやめにできないか - あいむあらいぶ
ロジックのうち「自分たちに何が出来て」が欠けている。
各自が責任を果たそう
プロジェクトを成功させるために必要な1つの要素は、「各自が持ち前の仕事をきっちりこなす」ことだと思っている。
元請けは元請けとしての、パートナーはパートナーとしての仕事をきっちりと実施しないと絶対に失敗する。だが、奇しくも元請けがそのレベルの仕事ができていないことが多々あり、私個人の行動を振り返っても自覚がある。*1
プロジェクトを成功させるという観点で、元請けもパートナーもきっちりと仕事さえしてくれていればそれで良い。だが、元請けが「自分たちでできること」を明確に出来ず、またそれに対する真剣さがなければ、パートナーに何をお願いしたのかも結局分からず、そして実施して頂いている事の中身が分からず、よって本質を指摘出来ないのである。
これではお互いに不幸である。
以下のブログ記事のような事例も確かにあるが、それは上記のロジックがきちんと守られていて、かつ元請けもパートナーもきちんとした仕事をしているがための結果であるのではないか。
相手への礼儀や敬う気持ちを忘れないことを大前提に、クライアントにも言わなければならないことはハッキリと伝え、対等な人間関係を構築する。決して、言いなりにはならない。そして、仕事を発注する私たちのような制作会社にも、自分にはないスキルを尊重し、思いやりをもって接してくれる。業者とは呼ばず、いつもパートナーとして、自分を見てくれていました。
優秀な人ほど、下請けと平等であろうとする - 自分の仕事は、自分でつくる
*1:確かに、受注側にも問題があると思うときは多々ある。お願いしている内容をその通りにやってくれないときもあるのだが、これは先方のスキルが足りないという場合を含めても、元請けがきちんと見抜けないとダメだと思っているため、全てが元請けの責任だと私は考えたい。