ロングセラーの絵本「100万回生きたねこ」の作者で、5年前に亡くなった佐野洋子さん(享年72)の育児エッセーが出版されました。タイトルは、「私の息子はサルだった」(新潮社)。その「息子」から見た、母・佐野洋子の素顔とは――。

 佐野洋子さんは、2010年11月に乳がんで他界した。それから3年余り経った昨春、仕事部屋からエッセーの原稿が見つかった。主人公は、一人息子で絵本作家の広瀬弦さん(47)。3歳から思春期になるまでの成長記録がつづられていた。

■広瀬弦さんが語る素顔

 原稿には、僕の日常が観察日記のように切り取られていました。

 好きな女の子が家に遊びに来たのがうれしくて、「ウッフォー」と叫び跳びはねるサルのような僕。好きな女の子を自分に振り向かせる術も分からず、その子のことをそっと見守っていた僕……。

 実は10代の終わりごろ、「もう(エッセーの)ネタにするのは勘弁してくれ」とあの人を叱りました。それから僕を登場させることはなくなりました。でも、誰かに読ませたくてこっそり書き残していたみたいです。「ああ、怖い怖い」と思いましたね。

 新潮社の担当編集者さんに見せると、「いつも本音で表現し続けた佐野さんが、唯一、息子さんには嫌われたくないと気遣っていた。母の顔と表現欲求の間で揺れながら残した佐野さんが感じられて、面白い」と出版を勧められました。