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 地方の企業や医療機関の人材ニーズについて、地方案件も積極的に手がけている人材スカウト会社、サーチファームジャパンの武元康明社長に聞いた。

 ――地方企業が求めている人材とは?

 「リーマン・ショックを挟んで大きく変わった。リーマン前は製造業も非製造業も、大手自動車などで進んでいた生産工程や在庫管理のカイゼン(改善)を自社にも採り入れられる人材を求める案件が多かった。機械・電子分野の技術を、将来を見すえて医療分野に活用できるようにしたい、という案件も目立った」

 「リーマン後は、インターネットの普及もあり、グローバル化への対応ニーズが加速した。具体的には、新規事業の開発や企業買収、生産戦略の見直しや海外販売網の構築ができる人材。グローバル人事など、本社機能の強化に取り組める人材も、特に地方には豊富ではない」

 「このほか、事業承継に絡む案件は常にある。後継者を探すケースと、後継者を支えたり教育したりする人材を探すケースがある。女性管理職の登用に絡んだ案件も増えたが、今年に入って落ち着いてきた」

 ――医療機関の方は。

 「これも2010年ごろから、求める人材が変わってきた。たとえば病院が事務長を募集する時、以前は経験者を求めることが多かった。ところがいま日本では、公共性の高い医療を提供すると都道府県が認定した社会医療法人などは、地域再生のなかで医療ゾーンを作るなどして役割を果たすケースも増えている。そうなると、地域のコミュニティーをつくるというスケールの大きな病院経営に加え、情報開示やシステム構築といった上場会社なみの対応も必要だ。そのため、経営企画の手腕をもった上場会社の役員・幹部クラスも紹介している」

 ――医師不足の状況は?

 「明確な大学の系列病院であれば医局から人材が送り込まれてくるが、大学から離れた地域の社会医療法人などは、系列色がないところも多い。一方で、こうした社会医療法人には地域の拠点医療機関として役割や規模を拡大しているところもあり、なおさら医師が不足している。急性期から在宅医療まで幅広くカバーする必要がある分だけ、求める人材の幅も広い」

 ――地方に移って働くことの魅力と、留意点は?

 「のびしろ(成長余力)と、規模の限られた組織で一定の分野を任せられることで、経験やキャリアを発揮できる自由度があることが最大の魅力だ。ただ、従来とは仕事の進め方や意思決定のプロセスが全く違うのに、いきなり自分のやり方を振りかざしてしまい、うまくいかずに苦労される方もいる。新しい職場をよく見極めてから、そこに合った形で進めていける柔軟性も求められる。自分や家族が、新しい土地の気候や風土に合うかも重要だ」

 ――向いているタイプは?

 「今や経済界も医療界もグローバル化や地域医療への対応などで、創造性のある仕事が求められている。人間力や正確な仕事力はもちろん、常に変革を続ける創造的な思考力のある人材が求められている」

 「新しいものを築く楽しさや、その裏返しにある大変さも総合的に捉えられる方が、地方案件には向いている。与えられた環境で歯車の一つになりたい、大組織から地方に移れば楽ができる、と考える方は向いていない。『何を知っているか』よりも、『何ができるか』が大事だ」

 「教育や介護の事情があると地方に移るのは難しいため、経験豊かで子育ても終わった50代半ば以降、大企業なら役職定年にかかったような世代が、地方企業の狙い目になっている」

 ――一定のキャリアを積んでから、地方で挑戦するかどうかの分かれ目とは?

 「そこは二極化する。役職定年などで処遇がダウンしても、お世話になってきた会社に勤め上げたいという方もいる。一方で、やりがいや引き際を考えたり、悠々自適の生活よりも体が動くうちは社会に貢献したい、と考えたりする方も増えている」

 「年金の問題や定年延長といった社会情勢をにらむと、働くシニアは、これからますます増えると思う。そのとき好奇心があれば、地方で働くという道が開けてくることもあるはずだ」