医療部発
2015年10月29日
鈴木明子さん 月経の悩み・番外編(2)生理のせいで不調、正直に伝える

引き続き、医療ルネサンス「月経の悩み」で、自身の体験について語ってくれたプロフィギュアスケーターの鈴木明子さんのインタビューを紹介します。
――スポーツ界では、月経が試合に重ならないよう低用量ピルで調整する選手も増えてきています。
鈴木 生理痛の軽減や月経周期調整など、薬で対処できることもあるので、講習会などを通じて正しい知識を伝えていくことが大事だと思います。ピルというと「避妊の薬」「太ってしまう」といった古くからの認識があって、敬遠している選手やコーチもいるのだと思うのですが、薬も改良されてきています。薬をうまく活用する選手、必要としない選手、飲むことに不安を感じる選手と様々です。何よりもまず、対処法があることを知ることが肝心です。
また、選手だけでなくコーチや保護者の方たちにも情報を共有してほしいですね。ブログに体験を書いたのは、邦和のクラブの取り組みを広く知ってほしいと思ったからでもあります。月経に触れることはタブーだという雰囲気が少しずつ変わればいいですね。
――長久保裕コーチに、月経による不調があることを話していたそうですね。
鈴木 伝えたのは22歳の時です。「今日、なんか動きが悪いな」と言われて、「生理2日目なんです」というやりとりから始まって。症状が重くて練習がものすごくしんどい日があるのですが、事情を伝えていないと、動きが悪いことを指摘された時に先生と言い合いになってしまう。だったら、現状をありのままに伝えておいた方がいいと思ったのです。練習を甘くしてほしいのではなく、今はつらい時期なので分かってほしい、本当は私だって動きたいけどできないんです、と。「来週、生理が終われば体も軽くなります」と言えば、先生にとっても「じゃあ、来週はもうちょっと追い込めるな」と計算しやすいのではないかと思いました。
――摂食障害の体験について教えてください。
鈴木 コーチから(減量するよう)言われたわけではなく、「やせたい」「太りたくない」という自身の気持ちがきっかけでした。体重管理を完璧にやろうとしすぎたのです。当時は「頑張っている選手は生理がないぐらい追い込むんだ」という刷り込みがありました。体重のことを指摘されている他の選手を見て、「体重管理をきちんとやらないといけない」「太ったら(コーチに)見てもらえないんじゃないか」と考えて、自分を追い込んでしまいました。
だんだん食べることが怖くなっていき、食事が「悪」のように思えてきました。肉類や油を使った料理が食べられなくなり、最終的には豆腐、野菜、フルーツ、ヨーグルトぐらいしか受け付けなくなり、どんどん食べる量も減って、体重は32キロまで落ちました。もともと体形にコンプレックスがあり、「少しでもスタイルをよく見せるためにもやせなきゃ」と思っていたことも関係していると思います。
――アスリートの極端な体重管理やエネルギー不足は、無月経や疲労骨折につながる深刻な問題です。
鈴木 摂食障害になって食べられるものが限られる中、健康を取り戻すためにどう栄養を取るか、栄養士さんから指導を受けました。肉が食べられない状況で、どうやってたんぱく質を取るか、どのくらいの量が必要か……など。当時学んだことが、後の競技生活にも生き、きちんと動ける体をつくる食事について考えるようになりました。
アスリートにもありがちなのですが、フルーツだけを食べるといった、ちまたにあふれるダイエット法を、一般の人よりもはるかに運動量のある選手がやってしまうと、とても危険なのです。カロリーは抑えたいけど甘いものは食べたいから、お菓子を食べてご飯を減らすというようなやり方も間違っていますよね。同じカロリー数でも、ショートケーキで取るのと、たんぱく質や野菜で取るのとは体への影響が全く違います。後輩の子たちが誤ったダイエットをしていないかと心配になることもあります。ダイエットのせいできちんと栄養が取れないと、けがをしやすく、けがをした時に治りにくい体になり、競技に影響してしまいます。正しい知識を持つことが重要なんです。
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佐々木栄 2013年9月から医療部。これまでに取材したテーマは、がん、肝炎対策など。大阪社会部では連載「約束~若年性乳がんを生きて」「性暴力を問う」を担当した。 |
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- プロフィル
- 読売新聞東京本社編集局
- 医療部
- 1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。
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