GMOペパボが新サービスを作り続ける理由、撤退する理由

by 佐藤健太郎(経営者)


GMOペパボでは、常に新しいサービスを作り続けています。その理由は3つあります。

1つ目は、インターネット大好き人間が集まった会社だから、です。新しいサービスを作れないことは、会社全体のジレンマになってしまうんですね。

2つ目は、我々がやっているインターネットインフラ事業はストック型ビジネスで安定的だけれど、成長が二次曲線になりにくいビジネスモデルでもあるということ。サービスは、「続けること」ができれば売上も徐々に増えていくものです。しかし、中には一気に成長できるサービスもあります。我々の場合、この「一気に成長できるサービス」を持ち合わせていませんでした。急成長できるものを生み出すためにも、とにかくサービスのポートフォリオを増やす必要があります。

3つ目は、ヒットするサービスを生み出せる組織を目指す必要があるということ。検索やポータルサイトといった普遍的なサービス以外は、ライフサイクルのようなものが存在すると思っています。そのライフサイクルに対して、新しいものを打ち出していかないと、いずれ頭打ちになる。ヒットを出せるような組織にしないと、生き残れないと感じています。

インターネットが大好き!だけではいけない

これまで立ち上げた新サービスは、ざっと40くらいあります。もちろん、すべて成功しているわけではないです。40のうち、今でも生き残っているのは20くらいでしょうか。サービスの立ち上げ数が多い分、失敗したサービスも多いんです。

特に「大きく外してしまった…」と感じたサービスを挙げるとすると、以下の2つです。

  • キヌガサ
  • ザ・インタビューズ

どれも力を込めて作り上げたサービスなだけに、本当に悔しいのひと言につきます。「キヌガサ」は、一時期かなりの純増があったものの、その後伸び悩みサービス撤退となりました。

これらのサービスを振り返ってみてわかったのは、当時の我々が「インターネットは好きだけど、マスのユーザーのことはよくわかっていない状態」だったことです。インターネットが好きな自分たちのためのサービスしか作れていなかった。だから、マスに対する施策を全然打てていなかったわけです。

私自身、サービスの細かい中身自体よりもビジネスモデルについて口を挟みます。また、サービスやプロダクトの内容によりますが、「このレベルのものでは、ペパボとして恥ずかしい」と感じたものには口を出すこともあります。当然ですが、コンセプトがブレるとうまくいかないので、そのあたりは事前にけっこう詰めます。

社長がスタッフに対して感情を出すことは、あまり聞こえが良くありません。しかし、私としては、そこは「社長として感情は出さないといけない部分」だと思っています。たとえ私が「すぐ怒る人」「怖い人」と思われようが、ここでしっかり発言しないとサービスのコンセプトもブレてしまいます。

私が感じていることの一つに、何かを表現する人やアウトプットする人たちのためのWebサービスはなくならない、というものがあります。この考えを土台にスケールさせるため、どうすれば内輪向けだけでなく、マスの人たちにも使ってもらえるのか。最近になって、これまでの失敗を含めた知見が貯まってきたように感じます。

一番になれないから撤退する

我々が作るサービスの多くは、月額課金スタイルです。お金のやりとりが発生している以上、簡単にやめることはできません。その分、「これはもうダメだ」と見切ったときは、早めに撤退するようにしています。

撤退を決めたサービスは、類似サービスに統合したり、代替となるサービスへユーザーを案内します。たとえば、ペパボのレンタルサーバには「ロリポップ」と「チカッパ」の2つがありました。後者はなかなか伸びそうになかったため、「ロリポップ」に吸収しました。

サービスは、続ければ続けるほど撤退しにくくなります。当然ですが、早めに撤退の決断をすることが大事です。

我々の場合、四半期に一度すべてのサービスをみて「投資を継続するか」「投資をやめて回収するか」「撤退するか」の3つに仕分けます。投資とは、将来的に利益を出すためのものです。投資の継続について決めるときは、そのサービスのライフサイクルが今どんな状態なのか、ユーザー数は衰退していくのか or 伸びていくのか、を判断して決めます。

「撤退するか」については、サービスとして一番を目指せるかどうかを基本に考えます。オンリーワンでもナンバーワンでもいい。一番になれないサービスは、結果的に淘汰されます。一番になれないまま継続すると、我々だけでなく、ユーザーにも迷惑をかけます。

また、サービスの「撤退」を決めたときは、ユーザーへの対応とともに、開発運用スタッフへのフォローも慎重にすすめます。開発運用チームのマネージャーを交えて一緒にシミュレーションするなど、時間をかけて考えます。基本的にはマネージャーから伝えてもらいますが、私から伝えるときもあります。撤退することは確かにショックではあるけれど、必ず次があることをちゃんと伝えたいし、知ってほしい。

一人ひとりが主役であるための新サービス

ご存知のとおり、GMOペパボの前身であるpaperboy&co.は、現・キメラ代表の家入一真さんが立ち上げた会社です。

家入さんは、とてもカリスマ性のある人です。家入さんが社長をしていた2008年までは家入さんが主役で、ほかのスタッフはフォロワーという印象を持っている人が多かったかもしれません。輩出されてきたサービスも「家入さんが新しく出したサービスだ」という広がり方が特徴的でした。

しかし、今は違います。これまで「主役」だった人がいないからこそ、スタッフ一人ひとりが「作る側」「マネジメントする側」で、主役になってもらわなければいけません。新規事業としてサービスを作り続けるスタイルを打ち出したのは「新しいことをし続けたい」と同時に「スタッフ一人ひとりが主役である環境」を作るためという思いがあるからです。


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