今思っても非常に厄介な居候だったと思う。
僕はこういう場でこそいやに饒舌になるが、誰かとワイワイ話すのも、自分自身の話をするのも本当に苦手な人間だ。
だもんで、その居候生活の最後はギスギスしたものになってしまった。
僕は、頭と背中を丸めて逃げるようにその家を出た。
厄介になると最初に決めていた期間をズルズルと伸ばし、色んなことも無下にし反故にしてきたのは他ならぬ僕だったからだ。
その家の何人かと、僕の本心を謝罪含めた長い話は出来たのだが、それでどうにかなると、僕だって思ってはいなかった。
その家の一人には「厄介になるんじゃなく、いつか遊びにおいでよ」とまで言ってもらえて、僕はその言葉を聞いた瞬間わんわんと泣き出してしまった。
初めての一人暮らしに加え、仕事も夏のボーナス商戦やキャンペーンがあるという事で夜の10時帰りも珍しくなくなって暇が無くなった。
まあとにかく「遊びに行く」という話も、本当に1回か2回しか出来ないうちにぱったりできなくなってしまった。
その家に出入りする人、遊びに来る人用のLINEグループというのがあった。
その家に厄介になっていた時に加えてもらったグループだが、なかなか行けなくても、そこのチャットに加わることで、僕はまだその中に居るよ!というか、居たいよ!という事をアピールしてみた。
さて、そんなグループもある日を境にパッタリと投稿が途絶えてしまった。僕はその日辺りにまた別の人間がその家に厄介になることを知っていたので、別のグループを作ったのだろうなあと頭の隅に置きながら、仕事に忙殺される日々を送った。
一ヶ月以上たったとある日、そのグループに新規投稿があった。何名かメンバーも追加されている。ありきたりな投稿もあったことだし、僕はスタンプを送信してみた。
次の休憩にケータイを見ると、そのグループは消滅していた。
僕のスタンプの送信直後に、一斉にメンバーがグループから退会していたのだ。そして僕も退会させられていたのだった。
僕は何とも言えない気持ちのまま、背中を丸めることしか出来なかった。グループに新メンバーが入ったってことは、おそらくまたこちらのグループでやりとりが行われるはずだったということだろう。
そして、僕のスタンプの直後にトークが消滅したということは、僕がそのグループにいる事、関わることが拒否されたのかなあ、と勝手に結論づけた。
その家の人々、一人ひとりにトークを投げる気にも、またアポなしで行って見る気にはならない。凄く怖いからだ。
「改めてちゃんと言わないと絶縁って事もわからないのか」と言われるかもしれない。皆が楽しく騒いでるところに僕が行って、また嫌な思いをさせてしまうかもしれない。何より、僕はちゃんと謝ることが出来ずに、話もせずに、逃げるように出てきてしまった身だ。そういう扱いをされても、仕方ないと思っている。
あの人たちを悪く言うだなんてとんでもない。今の僕の生活があるのはやっかいになったあの家の、あの家に関わるすべての人のおかげだ。きっと生きる上で、ずっと感謝し続けると思う。
だけど、それでも、それとは別に、あの賑わっていたグループが、自分の発言の直後に消滅した光景が忘れられない。あの場所を無くしてしまったのは、僕のせいなのだから。
今でもLINEが怖い。
LINEグループが少し怖い。
学校でLINE八分にされるとか、そういう話題を見ると胸が少し苦しくなる。
「誰に何を言われているかわからない」「どう思ってそういうやりとりがあったのかがわからない」という、凄く当たり前の事を可視化されて、僕はLINEのある世界にゾッとしたのだった。
……どうしたらいいんだろう。僕は。