【コラム】科学分野ノーベル賞受賞、韓国に足りないのは「士気」

 青年失業問題が深刻な状況で、既成世代が少しずつ負担を分かち合おうという韓国政府の趣旨は、大枠で正しい方向だろう。また、公共機関全体のバランスが重要という点も否定し難い。とはいえ、科学者の要求を単なる「わがまま」と見てはならない理由もある。科学技術は経済成長の最大の原動力、という点だ。かつて「漢江の奇跡」を実現したのが科学技術の力であったように、未来の韓国の成長にとっても、科学技術の発展はぜひ必要だ。そして、科学技術を発展させる上で最も重要なのは、科学者の「士気」だ。

 故・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は1960年代後半、ベトナム戦争に参戦する代償として、米国に総合研究所の設立を要求した。そうして、韓国初の総合研究所「韓国科学技術研究院(KIST)」を作ったが、当の韓国には、きちんと研究できる人材がいなかった。結局、韓国政府は、海外にいる韓国人科学者を呼び集めることにした。当時、ソウル大学教授の年俸の3倍くらい出しても外国で得られる月給よりずっと少なかったが、韓国人科学者らは帰国して故国の科学技術発展のため研究室で徹夜をした。受け取る金額は少なくても帰国して国に献身した理由として、長老クラスの科学者は「士気」を第一に挙げる。当時、KIST研究員の月給明細書を見た朴大統領が「私より多く受け取っている人間がこんなに!」と笑った-というエピソードは、いまでもKIST内でよく耳にする。

 もちろん、青年の失業は、韓国政府が最優先で解決すべき課題だ。しかし韓国政府は、未来の経済成長に科学の発展がどれほど重要な役割を果たすかについて、これまでどの程度深く考えたか自問してみる必要がある。科学者らは、過去約10年の間、研究環境と待遇は悪くなるばかりだったと思っている。士気は落ちるところまで落ちているのだ。

 賃金ピーク制を損なうのが難しいなら、科学者の士気を鼓舞する別の方法を模索するのも一手になり得るだろう。記者が会った数百人の科学者のことを思い返してみると、科学者の中には、自尊心や名誉、士気を糧とする純粋な知性が、ほかの集団に比べはるかに多い。国を引っ張る人材にふさわしい自負を持たせてやれば、科学者らは、投資の数倍の成果で報いるだろうということだ。

世宗市=イ・ジェウォン記者
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース