今月6日と7日(現地時間)、スウェーデン王立科学アカデミーが発表したノーベル物理学賞および化学賞の受賞者リストに、韓国の科学者の名前はなかった。日本の科学者が続けて受賞するのを見て、一部では、自然科学分野でのノーベル賞の戦績は「21対0」だという自嘲(じちょう)が流れたこともあった。なぜ韓国はノーベル賞を取れないのか、という叱咤(しった)もあった。
記者が見るに、基礎科学に100年以上も投資して実を結んだ日本と、基礎研究の歴史が浅い韓国を比較するのは無理がある。しかし、同じ時期に韓国国内で起こったことを見ると、遠い未来にもノーベル賞を取ることはできないのではないか、と心配になる。
ノーベル化学賞が発表された今月7日、韓国政府が出資した研究機関に所属する科学者らは、頭に赤い鉢巻きを巻いて、大田の大徳研究団地にある韓国生命工学研究院の院長室を占拠していた。科学者らのデモは、韓国政府が公共機関を対象に推し進める賃金ピーク制に反対する、抗議の意思表示だった。
政府出資研究機関の科学者らは、同じ公共領域に属しながらも、別個に専門性を認められて賃金ピーク制の適用を免れた教員(韓国科学技術院〈KAIST〉の教授など)、医師とのバランス問題を指摘した。さらに科学者らは、ほかの機関の場合、賃金ピーク制を導入する代わりに定年が伸びるのに、政府出資研究機関では定年延長なしに賃金だけが削られることも問題視している。一見、科学者が抵抗するだけのことはあるとも思える。
しかし、韓国政府の立場を振り返ってみると、問題はそう簡単ではない。韓国政府はまず、定年を延長してほしいという要求について「政府出資研究機関の従来の定年は、ほかの機関よりもはるかに長い61歳なので、さらに伸ばすのは難しい」と判断している。既に特別な待遇をしてやっている、というわけだ。また、政府出資研究機関の科学者の定年を伸ばさないかわりに、賃金引き下げ率も公共機関より著しく低く策定し、実質的には十分配慮したというのが韓国政府の主張だ。加えて、既に178の公共機関が賃金ピーク制を導入している状況で、1カ所の要求だけを聞き入れるのは難しいという企画財政部(省に相当)の立場もある。