ソウルをはじめとする韓国の主要都市で、大気中のオゾンの濃度が上昇を続けているというニュースが先ごろ報じられた。韓国政府は10年前から莫大(ばくだい)な予算をつぎ込み「首都圏の大気質改善事業」を実施してきたが、オゾンの濃度は低下せず、むしろ毎年上昇するという奇異な事態が起きているというのだ。オゾンは呼吸困難や頭痛、気管支炎などさまざまな病気を引き起こす「光化学スモッグ」の原因物質で、主にディーゼル車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)が紫外線と反応することにより発生する。
専門家らはオゾン濃度の上昇について、韓国国内のディーゼル車からのNOx排出量が増えたためだと指摘する。だが解せないことがある。普段、ディーゼルエンジンの環境への悪影響が話題になるときにNOxとセットで登場する粒子状物質(PM)の抑制は、国内で成果を挙げているのだ。
PMは減ったのにNOxの排出だけが増えた理由は、高性能ディーゼルエンジンが抱える矛盾にある。高い技術力を基に燃焼効率を最大化すれば性能と燃費が向上し、PMの排出は減少し得るが、代わりにNOxの排出量が増えるという問題を避けられないのだ。
ディーゼルエンジンの性能・効率を最大限に引き出すには、より高い圧力で燃料の気化を促進する必要があるが、効率を極端に高めれば気化した燃料が爆発時に燃焼室内に入った空気中の窒素とより多く反応し、副産物であるNOxの発生量も多くなる。「高性能なほど(効率が高いほど)より汚く(NOxの排出量が多く)ならざるを得ない」というのが、ディーゼルエンジンの宿命だ。そのため、道路を行き交うディーゼル車のエンジン性能が向上するほど、大気中に放出されるNOxの総量は増えざるを得ないのだ。
これは、世界最高レベルの自動車製造技術を誇っていた独フォルクスワーゲン(VW)が、前代未聞の詐欺を働く誘惑に負けた理由でもある。NOxの発生量を減らすには燃焼効率を落とさねばならないが、そうすれば燃費と性能が低下する。燃費と性能を少しだけ低くしてNOxの排出を減らそうとすれば車1台当たりの生産コストが大きく膨らむ上、エンジンの耐久性にも問題が生じる。それゆえ、VWは不正なソフトウエアで試験中に排ガス内のNOxを抑えるという悪質な手口で米国の規制を逃れ、皆をだました。
韓国の大都市でオゾン濃度が上昇傾向にあることは、すでに立証された事実だ。これが専門家の言う通りディーゼル車のNOx排出増加のせいならば、実に深刻な問題だ。国民の健康を害するだけでなく、合理的な購買のため正確な情報を望む消費者の権利までも侵害していることになるためだ。
韓国環境部(省に相当)は先ごろVWの排ガス調査に着手し、結果が出そろい次第、ほかのメーカーにも調査を拡大する方針にしている。この調査が、VWが米国で行った詐欺が韓国でも行われていたかどうかを突き止めるレベルに終わってはならない。まずは運行中のディーゼル車を全面的に調べ、走行中に排出されるNOxの総量を把握し、その上で大都市のオゾン増加との相関関係を立証して国民に伝えるべきだ。