韓国国宝第70号「訓民正音解例本」復刊

570年の歳月を経て感じられる世宗の息遣い

 『訓民正音解例本』という名称は朝鮮王朝実録などの歴史書に記載されていたため、その存在は確実視されていたが、文化財収集家の澗松チョン・ヒョンピル氏(1906-62)が1940年に慶尚北道安東の民家で発見して購入し、その存在が知られるようになった。チョン氏は前の所有者に1万ウォンの本代と1000ウォンの謝礼を支払って手に入れたと伝えられているが、当時の1万ウォンといえば瓦ぶきの家を1軒購入できるほどの価値があったという。ちなみに朝鮮日報の記事には前の所有者について「市内に住む某氏」としか書かれていない。そうなった事情についてキム・スルオン教授は「朝鮮日報が前の所有者の氏名や写真を公表しなかった理由は、ハングルの教育を禁じた日本の統治下にあったからだ」と説明している。

 「澗松本」と呼ばれるこの書籍は『訓民正音解例本』の中で唯一実在するものだ。2008年に慶尚北道尚州でも新たな版本(尚州本)が発見されたが、これは澗松本に比べて破損した部分が多かった上に、後に盗難に遭って所在が分からなくなり、その上これを所蔵していたとされる人物の自宅が火災で焼失したため、今はその行方が明らかになっていない。「牙音は,舌の根の部分が喉を閉ざす形を示している」などと記載され、文字の原理を説明していることで知られる解例本は、世界の言語学者から「ハングルの科学的原理を説明したもの」として賞賛されてきた。

 今回発行される「澗松本」は、光復(日本による植民地支配からの解放)直後の1946年以降、複数回にわたり影印本が発行されたが、原型をそのまま伝える復刊本が発行されるのは今回が初めてだ。チョン・ヒョンピル氏の孫に当たる澗松美術文化財団のチョン・インゴン事務局長は「研究者はもちろん、国民の誰もが1枚1枚をめくりながら、われわれの貴重な歴史と文化を実際に体験できる機会になればと思う」とコメントした。

李漢洙(イ・ハンス)記者
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