宋美玄のママライフ実況中継

2015年10月7日

第2子出産を前に、産後うつが心配です

約1年ぶりに美容院に行った娘です。とてもお利口に切られております

 妊娠31週に入りました。だいぶおなかが大きいので、歩き方がペンギンぽくなってきました。先日、16日金曜日から始まるTBSドラマ「コウノドリ」の撮影現場にお邪魔させていただいたんですが、俳優さんたちが喜んで大きなお腹を触ってくださって、なんてちょうどよいタイミングで妊娠したんだろうとうれしくなりました。原作のリアリティーと感動をそのままに作られているとのことなので、ドラマの放映がとても楽しみです。


里帰り出産でも余裕をなくした前回

 今週末で9か月になりますが、正直まだ2か月もあるのか…という感じです。インスリンを打ち始めてそれなりの糖質とカロリーを摂取できてはいるのですが、疲れやすいし、呼吸が浅くて寝付きが悪いし、靴下をはくのは大変だし、娘とはアクティブに遊んであげられないし、早く妊娠生活を終えたいなあ…などと思う日もあるのですが、ちょっと前に出産した友人たちが産後に余裕を無くしたり、うつと言えるような状態になっているのを見て、産後の生活が怖くなってきました。

 前回の産後は里帰りだったので家事は全くしていなかった上に母乳以外のことは育児も手伝ってもらっていたのに、それでも母乳について細かいことをいろいろ気にしたり、思うように赤ちゃんの体重が増えないことや世間と隔絶されて家に閉じこもっていたりすることで、後から思い返せばメンタルヘルスに変調を来していたなあと思います。

10~15%が産後2~3か月でうつに

 一般に抱かれるイメージとしては赤ちゃんが生まれて可愛くて仕方がない、ハッピーな時期として捉えられている産後ですが、出産で身体がダメージを受け、妊娠中に比べて女性ホルモンが激減し、生活も一変するため精神的にはリスクの高い時期です。軽症から重症を含め、10~15%が産後2~3か月の間に産後うつに罹患りかんしていると言われています。産後うつになると赤ちゃんとのかかわり合いや育児を楽しめず、授乳を中断しやすくなったりします。

 また、罪悪感を持ったり、赤ちゃんの感情表現に反応しにくくなったり、結果として愛着形成の過程に支障を来すこともあります。産後うつの危険因子は、親自身の虐待歴や育てられた環境、難産や産科合併症、赤ちゃんの性別へのこだわり、収入など社会的状況、授乳困難、夜泣きなどさまざまです。

 産後うつといっても、自殺企図に至る重症例から軽症例までいろいろ含みますので個人によってなされるべき対応はさまざまです。一般に精神科や心療内科の受診がすすめられますが、それだけで解決するわけではなく、育児・家事の負担軽減や、夫や家族の理解は必須です。産後うつであることを本人や家族が「まだ体調が回復していないだけ」「怠け者で母親としての自覚がまだないだけ」のように認めたがらない例も多いそうですが、産後うつは病気であること、休養が必要であり、叱咤しった激励をするのではなく苦しい気持ちを理解すること、育児や家事を家族もしくはヘルパーなどが負担することが重要です。また、「生きていても意味がない」「私はだめな母親だ」のような自分を責めたり絶望したりするような発言は自殺・自傷の前兆の可能性があり、周囲が見逃さないことが重要です。

言うは簡単、サポートを集めるのは困難

 と書くのは簡単なんですが、友人知人や自分の今後の状況を考えてみても、核家族で夫が忙しくて、となると泣いている赤ちゃんと孤立状態というのは慢性化しがちですし、そこへ母乳育児の悩みや乳房・乳首のトラブル、上の子の世話、夫や家族との関係性があまりよくない、経済的不安などが加わると、ニコニコ過ごせと言うのは無理難題だと思います。宿泊型・訪問型の産後ケアやヘルパー事業もありますが、いろいろ調べてみてもそれほど安いものはなく(経費から言って当然ですが)経済的負担がネックです。

 1日や数日では状況は変わりませんから継続的なサポートが必要となりますが、週に数回、訪問型のケアを頼んだだけで負担は大きくなります。担い手が助産師などの有国家資格者になるともっとです。それなりの公的負担がないと現実的にたくさんの母親を救えるものではないなあと思います。

 友人がSNSで産後うつで、いっぱいいっぱいになっていることを告白した時、「子どもは泣くのが仕事だから大丈夫」とか「後から懐かしくなるよ」とか「今だけだから」などのコメントがついていて、何の慰めにもならないからやめてくれと思いました。経験者ですら喉元を過ぎれば忘れてしまう。以前、産後ケアの重要性について偉い政治家さんに話をした時に、なぜ母親は団結しないのかというようなことを言われたのですが、産後としてつらい数か月をすぎてしまうと今度は育児が別のステージになってしまい、渦中にいる人はどんどん入れ替わってしまうんですよね。

対策には公費が不可欠

 少しずつ行政やNPOなど産後ケアの意識の高い人は増えていますが、実家や家族に頼れない人にも継続した支援が届くためには公費が不可欠です。保育の分野にすら足りていないのに産後ケアにお金が回るのは簡単ではないかもしれませんが、親の余裕は子どもにとって一番大事であり、早期の愛着形成は様々な社会問題を解決する根っこだというのが私の信念です。できることを模索していきたいです。

 2回目の産後、いろいろと怖い部分もありますが、きれいごとを抜きにまたレポートしていきますのでよろしくお願いします。

コメント

子育て支援
[ぼん]2015年10月7日

私の住んでる区では妊娠中〜産後子どもが1才になるまでの一年間に3回まではヘルパーさんが無料で頼めます。1回につき2時間まで。いくつか提携してる事業所がリストにあって、自分で予約はしないといけませんが,掃除〜食事作りの基本的な家事から、事業所によっては育児補助まで。他の自治体では安く頼める所はあるらしいですが,無料でってのは全国でも私の住んでる区だけみたいです。
今まで3回中2回頼みましたが,やっぱりそーやって家事をやってもらえるだけでずいぶんラクだし,ヘルパーさんとほんの少しでも話す相手がいるだけで違います。
私の区は待機児童数はワーストワンですが…この様な支援があって助かってます。
他の地域でも広がると少しでも良いのになぁと思います。

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プロフィル
写真
宋 美玄(そん・みひょん)
 
産婦人科医、性科学者。
1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら
 
このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)について、詳しくはこちら
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