Updated: Tokyo  2015/10/07 18:28  |  New York  2015/10/07 05:28  |  London  2015/10/07 10:28
 

郵政3社の上場、鍵握る事業戦略-「政治的にも成功必須」との声 (2)

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    (ブルームバーグ):7日に仮条件が決まった日本郵政グループ3社は、投資家の需要を計るブックビルディングを経て1カ月余りで新規株式公開(IPO)を迎える。苦闘する資金運用や人口減少で市場が縮小する保険業務などを踏まえると、上場の成否はビジネス戦略で投資家の購入意欲を引き出せるかに掛かっている。

仮条件は日本郵政が1100~1400円(9月10日発表の想定売り出し価格は1350円)、傘下のゆうちょ銀が1250~1450円(同1400円)、かんぽ生命が1900~2200円(同2150円)と、いずれも事前の想定価格を挟み込んだレンジ設定となった。

マーケット情報会社フィスコの小林大純アナリストは、「個人投資家の関心は高い」とし、今後の「個人投資家のブックの積み上がりはそこそこ堅調になる」とみており、売り出し価格は3社ともレンジ上限近辺と予想する。ただ、レンジは想定価格より安い方に偏っており、小林氏は「下が長いのが気になる」と指摘。郵政グループの将来性など「懸念材料を機関投資家に指摘された場合、下の方にもレンジを設定しておいたのではないか」と話す。

日本の個人金融資産の約10%に相当する貯金を保有するゆうちょ銀行は融資業務が制約されている。かんぽ生命保険は人口減の厳しい経営環境に直面し、日本郵政が運営する郵便業務は収益性が低い。このため、ゆうちょ銀は日本国債への投資に偏重していた資産配分変更に向け、元ゴールマンサックス証券副社長の佐護勝紀氏を運用担当の責任者として採用。買収したオーストラリアの物流大手トール・ホールディングスと日本郵便との協業を目指すほか、かんぽ生命についても「国際展開を避けて通る考えはない」と日本郵政の西室泰三社長は話す。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは、日本郵政グループについて「郵便局ブランドと信頼で貯金規模をさらに拡大できるポテンシャルを秘めている」としながらも、「改革のペースを緩めたりすれば、投資家たちはそれを許容することはないだろう。スピード感のある経営に向け体質改善ができるのかが注目される」と話す。

個人投資家

郵政3社のIPOは、売り出し総額のうち個人投資家への販売は7割を上回る見通しだ。英運用会社アーカス・インベストメントの共同設立者ピーター・タスカ氏は、個人投資家を株式市場に呼び戻せるかどうか安倍政権へのテストとなるとし、「政治的にも今回のIPOを魅力的なものにする必要がある」とみている。

2012年末の安倍政権発足以降、日経平均株価は75%上昇し、株式市場に外国人投資家や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような政府機関の資金を一段と呼び込むことはできた。しかし、東京証券取引所など全国4証取の調査によると、14年度の外国法人等の保有株式比率は31.7%と過去最高を更新したのに対し、個人・その他は17.3%と99年度以来15年ぶりに過去最低を更新。タスカ氏は、株式投資に関して安倍政権は「一般市民をまだ説得できていない」と話す。

将来戦略への評価

上場を目指す郵政グループ3社は成長力向上のための戦略構築が必要だ。融資が制約されるゆうちょ銀の戦略について、京都大学大学院経済学研究科の藤井秀樹教授は、「アセットマネジメントしかないということになる」と指摘。「高度のスキルと知識を持つファンドマネジャーのグループを配置しないと戦えない」と話す。

また、郵便事業に関連してトール社を買収した狙いについて、藤井教授は「国内外の大きなロジスティクス・ビジネスへの拡大を考えているのだろう」とみている。ただ、将来の完全民営化に向け株主の意向を受けて、ゆうちょ銀とかんぽ生命が日本郵便に払う手数料が大幅に減額されるような事態になれば、「ユニバーサルサービスの維持が困難になる可能性がある」と指摘する。

前期(15年3月期)に1兆1200億円の経常利益を計上した日本郵政グループのうち、ゆうちょ銀とかんぽ生命の金融2社が全体の90%以上を稼ぎ出す。同グループの資料によると、2社は同期に約9600億円の代理業務手数料を日本郵便に支払っている。

NTTのトラウマ

西室社長は9月25日の記者会見で「第1回のNTT上場後の株価の動きは大きな教訓になっている。あれを繰り返してはいけない」と述べた。バブル景気に沸く87年2月9日、中曽根政権下で新規上場したNTT株は上場初日に値が付かず、翌日に売却価格119万7000円に対 して160万円の初値が付いた。4月22日には上場来高値の318万円を付けたものの、その後は下落傾向にあり、現時点では政府放出株のうち売り出し価格を下回っている唯一の株となっている。

81年から日本株をウオッチしているタスカ氏は、「80年代は普通の人が株を保有してミニ資本家になるという株主デモクラシーのコンセプトがあった。安倍政権も同様のことをしようとしている」と言う。当時、世界的に民営化が大きなテーマとなっており、日本も電電公社(現NTT)、国鉄(現JR)、日本専売公社(現日本たばこ産業、JT)の民営化を実施した。

タスカ氏は「相場は強く全てがうまくいっており、誰もが何かを買えば必ず上がると思い、リスクなんて考えもしなかった」と振り返る。また「国民は政府を疑う余地もなく、政府は相場の下落を許さないと信じ、個人で判断を下す必要がなかった」と語るが、今は「人々の考え方は変わった」と言う。

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更新日時: 2015/10/07 16:32 JST

 
 
 
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