1985年から開発を始めた「H-II」ロケットで、国際的な商業打ち上げ市場への参入を目指してから、30年もの時間が過ぎた。
商業打ち上げの中核となるのは静止通信、放送衛星の打ち上げだ。
が、実は30年かけても日本の市場参入はまだ端緒に就いたばかり。今年11月24日にH-IIA29号機で、カナダ・テレサットの通信衛星「テルスター12V」を打ち上げる予定だが、これが日本にとって初めての商業的な静止衛星打ち上げとなる。
一方で、H-II、H-IIAを継ぐロケットは、「H3」という名称が決まり、2020年度初打ち上げに向けて開発が本格化していく。H3はH-IIAとの比較で打ち上げコスト半減を狙う。
今度こそ、日本は30年越しの宿願を実現できるのか。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)でH3開発のプロジェクト・マネージャーを務める岡田匡史氏にお話を伺った。
よろしくお願いします。まずはH3のライバルの話から始めたいと思います。
岡田:なるほど。
2014年11月には二転三転の末に欧州の次期ロケット「アリアン6」の基本構成が固まっています(矛盾と対立、四苦八苦が生んだ最適解「アリアン6」:2015年4月22日参照)。今年5月には「デルタ4」「アトラスV」を運用している米ユナイテッド・ローンチ・アライアンスが新型ロケット「ヴァルカン」の開発を表明しました(“アマゾン”ベゾスのロケットエンジン、表舞台に:2015年5月13日参照)。
ロシアは昨年、次期ロケット「アンガラ」の初打ち上げを成功させていますし、インドも新ロケット「GSLV Mark III」の初打ち上げを実施しています。中国の新ロケットシリーズ「長征5/6/7」も、先陣を切って6が打ち上げに成功しました。米ベンチャーのスペースXはより大型の「ファルコン・ヘビー」を開発中で、これも来年には初打ち上げを行うでしょう。つまり、2020年代を見据えた新たな打ち上げ機がほぼ出そろった状態になりました。
岡田:こんなに新しいロケットが出てくるとは思ってもいなかったです。
これらのライバルに対してH3は、どのような考え方で機体構成を決めていったのかを、お聞かせ願えればと思います。
岡田:機体の構成は、2015年夏の段階では、設計のベースラインが固まったところです。例えば「第1段はエンジンを2基と3基とで切り替えられる」とか、「固体ロケットブースターは最大4本にする」といったことですね。これに基づいて今年度は基本設計を行い、年度末に基本設計審査を実施して、来年度からは詳細設計に移行するスケジュールです。
検討過程をウォッチングしていると、決定が長引いていると感じました。ぎりぎりまで「現実のロケットに落とし込む」のを引き延ばした、という印象です。
岡田:確かに今回は、「即決める必要のないところは、もう少し粘って考える」という方針でした。H3の大前提は「2020年代に国際的な競争力を持つ」ことと、「宇宙輸送における日本の自在性を確保する」の二本柱です。まず「どのように使うのか」「どんな世界を実現するのか」という利用シーンをはっきりさせて、それを実現するためにはどのような機体構成でどのような手持ちの技術を使い、新たな技術を開発するか、という手順で考えていきました。