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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

『LoL』とか『DotA 2』をまだ遊んでない人を全力で勧誘したい

おすすめゲーム

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Valveが大会のための賞金総額を約22億円用意したり、日本からもプロゲーマーたちが続々と輩出されるなど、熱を加速させつつある昨今の「e-Sports」。

中でも、ぶっちぎりで注目されているのは、『DotA 2』、『Legends of League』や『Heroes of the Storm』などのタイトルを有する、いわゆる「MOBA」と呼ばれるゲームだ。最近ではスマホ用に『Vainglory』、アーケード用に『Wonderland Wars』なども稼働している。

 

合計5人のプレイヤーが、互いに協力しながら、1つのマップにあるタワーやコアを破壊することが目的のこのゲーム。

プレイヤーは個性豊かなキャラクターの中から一人選択し、RTSやハクスラのような見下ろし視点を活用しつつ、豊富な魔法や剣技を使って敵を倒す。

一瞬の判断が全てを決める高いアクション性と、無限大の選択を試せる戦略性が評価され、今や世界で最も遊ばれるゲームの1つとなった。

 

さりとて、日本人のプレイヤーは多いと言えない。やはり、洋ゲーらしい独特なインターフェイスや、純粋な対戦故のハードルの高さがネックなのだろう。

本稿では、そんな敬遠していたプレイヤーを、私がハマっているMOBAへ、バリバリ勧誘していきたいと思う。

(初心者に向けて、本来「チャンピオン」や「ヒーロー」と呼ばれる存在は、「キャラクター」と一括して表記している。)

 

初心者でも楽しめる -遊びながら学べるゲーム

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この「MOBA」と呼ばれるゲーム。ハッキリ言って難しい。

まず、覚えることが多い。プレイヤーには大きく「top」「mid」「bot」「jungle」と呼ばれる役割があり、またキャラクター毎の装備やスキルも、プレイヤーを悩ませる。

そして、相手チームには殺意をむき出しにしたプレイヤーが5人もいる。彼らはあらゆる卑怯な戦略で、時には共謀しつつ、あなたに襲いかかるだろう。当然、あなたは身を守らなければならない。

 

さて、これだけ説明されれば、大抵のプレイヤーはうんざりするだろう。「wikiを読まなければ」「プラクティスモードで練習しなければ」と追われることを想像して、辞めてしまうかもしれない。

だが安心して欲しい。実を言うと、これらは全て、「ゲーム中に」遊びながら学ぶことが出来る内容ばかりなのだ。

 

まず、「MOBA」の特徴はその柔軟性だ。キャラクターたちはキビキビと動くのでアクション性は高く、「こうすれば良い」という防衛策は取りづらい。遠距離、スタン攻撃、ワープ攻撃など、彼らの攻め手はとにかく変幻自在だ。

更に、豊富なキャラクターたちによる、多様な戦略性というのもまた奥深く、更に彼らが協力したり対決することで、更にゲームは二転三転する。一概にビルドや戦略を叩き込んでも、すぐに役に立たなくなる。

つまり、「MOBA」で求められるスキルとは、即ち「ゲームの流れ」をザックリと把握し、その場に応じた柔軟な対応を取れる判断力と決断力なのだと思う。

 

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しかしその一方で、MOBAでは、格闘ゲームやFPSのようにシビアな操作が必要になることは少なく、RTSのように複数のユニットを同時に動かす必要もないので、wikiや攻略サイトで知識を仕込む必要も薄い。

だから、MOBAは基本的に、「On the Job Training(現場職業教育)」ならぬ、「On the Game Training」。MOBAで強くなるためには、とにかく試合にドンドン出て、負けてもいいので、その死因をしっかりと反省し、そして同時に、味方との連携の取り方を学ぶのが手っ取り早い。

実際、このゲームで純粋なスキルや知識の差で負けることは(同レベルのプレイヤーなら)少ない。基本的に即決の柔軟性と決断力がモノを言うゲームだからこそ、ゲームを楽しみながらどんどん成長できる。だからこそ、「MOBA」は初心者にこそオススメしたい。

(もちろん、適宜テクニックや知識を得ることは上達に役立つ。必要な時に、必要なだけ学べるのも、MOBAの楽しさだ。)

 

アツい駆け引き -公開情報を駆使した心理戦

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MOBAの原型となった『Defense of the Ancients』は、元々『Warcraft 3』と呼ばれる、当時では最も評価された「RTS」のMODだった。

ゲーム好きなら、名前だけなら聞いたことはあるであろう、「RTS」と呼ばれるゲーム。今でも多くのプレイヤーを惹きつけているものの、ネックはその高い難易度だ。

 

RTSとは、コマをリアルタイムで指揮できるチェスのようなゲームだ。

しかし、一般的なボードゲームと違う点として、「戦場の霧」と呼ばれるシステムがある。これは、チェス盤のほとんどが「霧」に覆われ、敵のコマや拠点の位置がわからなくなってしまうシステムだ。

このように、RTSは敵味方の情報が極めて限られているため、むしろ情報をどれだけ多く手に入れ、それを基に正しく分析できるかという、プレイヤー本人の能力が重要になる一方、

相手の行動に応じて右往左往する「心理戦」的な要素よりも、むしろ個人的な「推理戦」と言って良い。(勿論、一流プレイヤー同士の試合なら別だが)

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(これが戦場の霧だ)

 

一方、MOBAであれば話は別だ。確かにMOBAにも戦場の霧は存在するが、別途「クリープ(ミニオン)」と呼ばれる小型ユニットが自動で投入され、勝手に視界を広げてくれる上、マップ自体も狭いために、敵の位置はすぐ割り出せる。

更に興味深いのは、充実したスコアボードだ。敵味方がピックしたキャラクター、彼らの戦績、生存の有無を、いつでも確認することが出来る。少しカジュアルな『LoL』なら、購入したアイテム、中立MOBのリスポーン時間すら記載されている。

当然、これらの膨大な公開情報は、自分の戦略に役立てられる。(戦場の霧が少ないため)敵の位置は大抵がマップに映っており、彼らを避けるか逆に待ち伏せするか選べる。更に、レベルや装備まで加味すれば、強敵を回避して弱った敵を狙い撃ちにも出来る。

もちろん、敵側もこちらの情報を握っているので、邪な考えで不意打ちは出来ない。「攻めれそうで、手が出せない」という歯がゆさが、互いプレイヤーを葛藤させ、またアツい心理戦にもつれ込ませる。

また一方で、スキルの発動状態や、戦場の霧に常に覆われたjungleなど、「公開されない情報」も程よく残っているのが楽しい。少なくとも、RTS程は慎重に偵察する(或いはセオリー通りに攻める)必要はないが、リスクを承知で騙し合いや待ち伏せ攻撃も出来る。

 

いずれにせよ、MOBAの素晴らしい点は「情報の透明度の高さ」にあるといえる。敵味方の情報が飛び交い、特に隠された裏ワザもないので、良くも悪くも格ゲーやRTSのような、個人技と戦略で圧倒する場面は少ない。

一方、どれだけ敵を「ビビらせ」て前線を上げたり、逆に味方を「安心させ」て団体行動させるなどの、敵味方がしょっちゅう絡み合う「心理戦」の面白さなら、MOBAに勝るゲームは少ないだろう。

 

プレイヤーの個性がハッキリ出る -クラスとレーンの役割分担

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「MOBA」がゲーム業界に浸透して数年、さっそく他のゲームジャンルもMOBAの魅力について検討し、各自取り入れている様子が伺える。

とりわけ特徴的なのは、MOBAがプレイヤー同士の連携による「チーム戦」を重視している一方で、「各プレイヤー個人」による裁量と責任を重くし、同時にプレイヤーの個性を発揮できる点だろう。

とにかく、それぞれスキルや能力が全く異なるチャンピオンと、それぞれに「任される」仕事とレーンを一人で守り、同時にそれらが絡みあう団体戦は、まさしくMOBAの真骨頂と言えるだろう。

 

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まずは、このマップを見て欲しい。これはほぼ全てのMOBAに共通するマップだ。

マップには主に三つのレーンがあり、上から「top」「mid」「bot」と分かれ、その中間には「jungle」と呼ばれるエリアが広がっている。プレイヤーは大抵一人でこのレーンを任され、それに適任のキャラクターを選択する。

例えば、「top」にはよく、体力が多く粘り強いキャラが起用される。レーンが長大なため、クリープ(ミニオン)の金や経験値を独占できる一方、援護は期待できないためだ。逆に「jungle」にはよく、奇襲力の強いトリッキーなキャラが好まれる。色々なレーンに顔を出しやすいからだ。

 

言わずもがな、プレイヤーの集中は自分のレーンに向けられる。topを選ぶプレイヤーは、死なないように堪える忍耐力が試され、jungleを選ぶプレイヤーは、味方が掴んだ好機を逃さない行動力が必要とされる。

だが当然、相手プレイヤーも同じことを考えている。topを選んだプレイヤーは、「相手のtop”だけには”負けられねえ」と思い、同業者同士の熾烈な争いが始まる。5人チームの戦いでありながら、(特に序盤は)同じレーンを選んだ同業者とのタイマンも楽しい。

同時に、キャラクターには得意不得意がある以上、topの仕事はtopにしか出来ず、常にプレイヤーは味方に試される。botやmidはjungleによる奇襲を望み、回復するsupportは我が身を盾にしても仲間を護ることを期待される。チーム戦だからこそ、譲れない「責任」が自分たちの能力を試すのだ。

 

こう聞くと、「ハードルたけえ」と思うかもしれないが、ありがたいことに大抵のMOBAには優秀なマッチング制度が整備され、仲間も敵も自分と同じレベルで戦えるため、過度に期待されることはない。

それよりも、「責任」と「個性」を思う存分背負っているからこそ、プレイヤーの貢献や個性はますます輝き、周囲に注目される。そして勝利した時の喜びは、そこらチーム戦ゲームでは、決して味わうことの出来ないものだ。

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まとめ

以上、私も楽しんでいるMOBAの魅力について、「楽しみながら学べる」「情報の透明性の高いが故の心理戦」「チーム戦だから問われる個人の活躍と個性」からまとめてみた。

ハッキリ言って、今MOBAを遊ばないのは勿体無い。筆者も最初は躊躇していた口だが、いざプレイし始めると、驚くほどすんなりとステップアップできた。それでいて、この奥深さにまだまだ魅了されつつある。

MOBAの人気は、やはり初心者でも段階的に成長できる、プレイアビリティの高さにあるのだろう(フロー理論にもあるような)。

 

オマケ:どのMOBAを始めよう?

ところで、MOBAと一言に言っても色々存在する。ここでは、現状人気を大きく二分しているであろう『Dota 2』と『LOL』について検討する。

(あくまで比較的、それも野良マッチに限った話として)

 

『Dota 2』の特徴: ガッツリ遊びたいベテラン向け

・全体的にシビアで、少しの油断がチームの壊滅を招く。同時にそれだけテンポよく楽しめる。(例:ヒーローの火力は高いがマナは少ない)

・役割分担はゆるい。逆に、それだけ一人で何役も出来るため、個人の能力重視。

・ピーキーな性能のアイテムやヒーローが存在する。何が何でも飽きない仕様。(例:Meepoなど)

・グラフィックは美麗。ヒーローは原作に近く、「洋ゲー」らしい写実的なカッコいいキャラクターが多い。

・課金によるメリットはほぼない。ヒーローは全て最初から使える。

 

『League of Legends』の特徴: カジュアルに遊びたい初心者向け

・全体的に緩やかで、ガンクもリスクが高く、基本的に序盤は安心してクリープ狩りが出来る。(例:チャンピオンの火力が低いがマナは多い)

・役割分担がかなりシビア。逆に、役割さえこなしてればそこまで個人の責任は重くない。

・初心者向けに使いやすいチャンピオンが用意されている。シンプルに強力なので、ランクマッチでは即座にbanされる。(例:garenなど)

・グラフィックは少し古い。ヒーローは「萌え」っぽいかわいいキャラクターや、アメコミらしいクールなキャラクターなど、コミカルなものが多い。

・課金限定の優位は皆無だが、チャンピオンやルーンは無課金では少し限定される。更にマスタリーなど、プレイ時間に応じた僅かな優位が与えられる。(あくまで他のMOBAと比較して)