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 大リーグで、いずれは消えるのでは、と心配されているものがある。「打率3割打者」。今季、規定打席で、その数字をクリアするのは23人。1球団に1人もいない状態だ。投手の能力が進化し、チーム戦術が練り上げられる中、打者が受難の時代を迎えている。(各データは米国時間24日現在)

 微妙に横に動く153キロの速球で追い込まれ、最後は143キロのスライダー。さすがのジャイアンツの天才打者ポージーも、空振り三振に倒れた。18日のダイヤモンドバックス戦は、速球派のデラロサに何度もバットを押し込まれた。

 2012年に首位打者に輝き、通算打率3割1分1厘を誇るポージーは言う。「155キロ超の速球を投げる先発投手は普通だし、変化球も進化している。質の高い救援陣も増えた。打者にとって、本当にタフな時代だと思う」

 投高打低。ここ数年、大リーグで顕著になっている傾向だ。米メディアによると、投手全体の速球は、平均約150キロ。レッズのチャップマンら160キロ超を投げる投手も珍しくない。トレーニング法の発達などにより、投手の能力が伸びていく一方、年々、打者の数字の落ち込みが目立っている。今の流れを、米メディアは、こう表現することがある。3割打者は、絶滅危惧種か――。

 昨季に打率3割を超えたのは、17人のみ。規定打席到達者(146人)の1割超で、この30年間で最も少なかった。最も多かったのは、1999年の55人。約3人に1人が打率3割以上をマークしたが、当時蔓延(まんえん)していた筋肉増強剤の影響があったのでは、といわれる。簡単に3割を打てない今の時代は、薬物汚染を抜け出た証明ともいわれるが、2007年のナ・リーグ最優秀選手(MVP)で、メジャー16年目のドジャースのロリンズは「10年、20年前、たぶん50年前と比べ、野球はすっかり変わった。『3割打って一流』という考え方を、改めてもいいかもしれない」。