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<私立高入試相談>合格「確約」埼玉で常態化

毎日新聞 9月26日(土)10時30分配信

 ◇校外で業者テスト生き残り

 私立高の入試を巡り、受験生が通う中学や学習塾が高校側と入試前に相談し、模擬試験の結果などを基に合格の「確約」を取り付けている実態を毎日新聞が報じたところ、多くの反響が寄せられた。中でも目立ったのは「埼玉県で入試前の合格確約が常態化している」との話だ。現場を取材すると、全国に先駆けて中学から追放したはずの業者テストの偏差値が、学校外で生き残っている実情が浮かんだ。【藤田剛】

 「埼玉県在住の主婦です。子供は昨年受験生でした。夏から年末にかけて私立高に資料を持って相談会に出かけました。『確約』がほしいからです。確約があれば、形だけの試験を受ければどんな点でも合格できます。中学でも『何校か確約をもらってきてください』と言われます。こんな受験制度は間違っていると思います」(ある母親のはがきより)

 「子供が生まれて埼玉に引っ越してきましたが、県内の私立高のほとんどにこの確約制度があり、『北辰テスト(模試)の偏差値』と『学校の通知表』などを持って入試前に保護者が私立高を訪問し、確約をもらった上で入試を受けることになるようです。県外から来た私には異様な制度に思えます」(別の母親のメールより)

 埼玉県の保護者や中学、私立高、塾関係者らの話を総合すると、同県の大半の私立高は入試前年の9〜12月に受験相談会を開く。ここで評価の中核になるのがメールに登場する「北辰テスト」だ。さいたま市の出版社「北辰図書」が年8回、同県と近隣都県の私立高などを会場に実施し、受験料は1回4600円。秋のピーク時には同県の中学3年生約6万5000人の8割以上、約5万4000人が受けることもある。

 その偏差値を保護者や塾講師らが相談会で示し、確約を得るという。ある私立高が塾側に渡した「受験相談会結果一覧表」には、受験生の名前や偏差値の脇に「判定」欄があり、確約には「○」が付けられていた。別の私立高は相談会の際、受験生に「登録番号」を付けて模試の偏差値や確約情報を管理し、出願時にこの番号を記入させているという。

 だが、こうした確約の存在を関係者が公式に認めることはほとんどない。1993年の文部省(当時、現文部科学省)の通知で、模試を入学者選抜に使うことなどが禁じられているからだ。ある私立高の担当者は毎日新聞の取材に「確約とは直接言わないが、似たような表現をして保護者らには笑って帰ってもらう」と明かした。

 なぜ、このような制度が定着したのか。埼玉では90年代初頭まで中学3年の授業中に北辰テストを実施。私立高についてはその偏差値に基づき中学との入試前の相談で合格を確約していた。しかし、「業者テストの偏差値に頼る輪切り入試」「青田買い」などと問題化し、92年に当時の県教育長が見直しを決定。中学による偏差値の管理や私立高への提供などを禁じ、これが93年の文部省通知のきっかけにもなった。

 しかしその結果、中学に代わって塾が進路指導を担うようになるとともに、学生アルバイトの多い塾などの場合は保護者が直接、私立高を訪問するケースが常態化。北辰テストの偏差値で確約を得るシステムは校外に移っただけだった。

 ある塾経営者は「経済的理由で塾に通えず、模試も受けられない生徒には圧倒的に不利。こんな変な制度は埼玉だけ」と憂える。一方、別の母親からはこんな投書もあった。

 「昨年子供が受験しましたが、私立は『確約をもらえたところ』を受けるもの。中学の成績や部活動、業者の一律テストの成績など3年間の頑張りと面接で『確約』をもらい、精神的な余裕を持って当日の試験に臨めることは、本人にも親にも学校側(中学・高校)にも良い。緊張しやすい子、ストレスに弱い子には一発選考はとても厳しい。そんなことは公立の受験だけでいいじゃないですか。問題があるとたたくのは一面的だと思います」(さいたま消印の「40代、母」からの手紙)

 北辰テストを実施する北辰図書は「学力を把握し、日常の学習や進路選択に活用してもらうために実施している。結果をどう活用するかまでは関知していない」と話している。

最終更新:9月26日(土)10時30分

毎日新聞

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