畦道に赤い道しるべ
花言葉は「悲しい思い出」「恐怖」「また会う日を楽しみに」・・・と、なんだか不吉な趣きです。『ヒガンバナ』という呼び名は「お彼岸の頃に開花する」という由来とともに「食べれば彼岸(向こう岸・あの世)に行く」という意味もあるのだとか。また、日本中にたくさんの別名をもち、『ドクバナ』『ハカバナ』『ジゴクバナ』『ユウレイバナ』『シビトバナ』『ソウシキバナ』等々、どうしても「死」のイメージが離れません。一方『曼珠沙華』は、サンスクリット(梵語)の「天上の赤い花」を意味する『Manjusaka(マンジュウシャカ)』が由来といわれます。
いずれにしても現世とはちがう世界に導いてくれる、神秘の花のようです。
ヒガンバナは、全草(花・茎・葉、とくに球根)に『リコリン』というアルカロイド系の成分を含む有毒植物。皮膚や目につくと炎症をおこし、食べれば嘔吐・下痢・痙攣・呼吸不全などをひきおこすことが知られています。ヒガンバナを摘んで持ち帰ると「手が腐る」「病気になる」「死者が出る」などと言い伝えられたのも、茎の汁などでかぶれたり、球根を誤食して中毒をおこしたりする人がいたからかもしれません。
「球根1個でネズミ1500匹の致死量に相当する」ともいわれるヒガンバナ。ネズミやモグラよけに、田んぼの畦道に植えられていることが多いのです。独特の匂いもあり、「彼岸」に送られたくないネズミたちは避けて通るのだそうです。またお墓に咲いているのをよく見かけますが、土を掘り返す小動物から遺体を守る目的で植えられていたと聞きます。
じつは、球根の毒は水溶性。水にさらしてきちんと毒抜きすれば、デンプンは食用にできるのです。かつては飢饉に備える意味でも畦道に植えたようです(戦時中に食したという方もいらっしゃるでしょうか)。また、漢方薬や民間療法の外用薬としても用いられてきました。