年金生活者の懐寒し、消費低迷の一因に-給付額抑制で購買力減少
2015/09/18 06:00 JST
(ブルームバーグ):景気の足を引っ張った消費増税から1年半たったが、国内総生産(GDP)の6割を占める消費は依然伸び悩んでいる。年金生活者が増えている中、給付額の伸びが抑制されており、個人消費の足かせとなっているためだ。
内閣府が昨年12月に発表した「2013年度国民経済計算確報」によると、家計全体でみた可処分所得に対する現金による社会保障給付の割合は、13年度で約20%となっており、過去20年で約2倍となっている。現金による社会保障給付は約80%が年金。家計にとって年金の重みがかつてなく増している。
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、13年度末現在の公的年金受給者の年金総額は52兆8000億円と、前年度末に比べて0.7%減少した。これは、1986年に公的年金に関する新法が施行されて以降初めての減少。
日本経済研究センターの研究顧問の齋藤潤氏によると、「家計における年金に頼るウェイトが増えてきている。年金総額の伸びは、賃金や物価の伸びに比べると、緩やかなものにとどまるだろう。高齢者は消費しようとしても原資がない。それが、昨今、消費が伸び悩んでいる理由の一つではないか」と述べた。
齋藤氏によると、13年度の年金総額が減少した背景には、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げが関係している。男性の場合は、13年度から25年度にかけて、女性の場合は18年度から30年度にかけて、65歳へと段階的に引き上げられる。
齋藤氏は、公的年金の支給額の伸びを賃金や物価上昇率よりも低く抑える「マクロ経済スライド」が15年度に初めて発動されることになったが、この仕組みも今後の年金総額の伸びの抑制要因になると指摘。
マクロ経済スライドとは、04年の年金制度改正で導入されたもので、賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組み。15年度の場合、年金額は名目手取り賃金変動率2.3%から、マクロ経済スライド調整率0.9%と特例水準の段階的な解消分0.5%を差し引かれ0.9%の増加にとどまる。
13年9月分までの年金は、過去の物価下落時に特例措置として年金額を減額せず据え置いたことなどにより、本来の年金額より2.5%高い水準で支払われていた。12年に成立した法律により、この特例水準は13年度から15年度までの3年間で解消されることとなった。
安倍晋三政権は社会保障制度持続のために経済成長と財政再建の両立を図っている。齋藤氏は制度維持のために年金改革が重要であり、個人消費を刺激することと持続可能な経済成長を実現することが政府にとって重要な課題となっていると指摘した。
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更新日時: 2015/09/18 06:00 JST