Hatena::ブログ(Diary)

Economics Lovers Live ReF このページをアンテナに追加 RSSフィード

2015-09-17

[]最近の時事問題を考えるためのブックガイド(2015年秋) 最近の時事問題を考えるためのブックガイド(2015年秋)を含むブックマーク

集団的自衛権や平和安全法制について

ベストな本は小川和久氏の『日本人が知らない集団的自衛権』だ。Q&A方式で丁寧に解説されている。法解釈から政策レベルまでわかりやすく具体的なので、集団的自衛権を認めることや平和安全法制に賛成・反対と頭からきめることなく、まずはこれくらいの基礎知識は知りたい。特に集団的安全保障集団的自衛権の違いなど基礎的認識がしっかりしてないと、平和安全法制の問題は議論することもできないので。

小川氏の本と同時に読むべきなのは、佐瀬昌盛氏『いちばんよくわかる!集団的自衛権』がいいだろう。また批判派の人の見解では簡潔だが、間宮陽介氏の論説「「平和安全法制」の欺瞞」を収録した『現代思想 総特集「安保法案を問う』を読むのが時間の短縮につながる。

いちばんよくわかる集団的自衛権

いちばんよくわかる集団的自衛権

また安全保障問題は単に憲法解釈の問題だけではなく、また客観的なデータで議論されなければならない。特に経済的側面に焦点をあてたこの『コストを試算! 日米同盟解体』は賛否があっても具体的に論じるベースを提供していていい。手元にぜひおきたい本だ。

歴史認識問題もこの夏に話題沸騰し議論が重ねられた。以下の細谷雄一『歴史認識とは何か』は国際的な視点を全面に打ちだした良書だ。

日本経済全体をざっくり歴史的な視点でとらえる最新の本として原田泰氏の『反資本主義の亡霊』がいい。またギリシャ危機については、竹森俊平氏の『欧州統合ギリシャに死す』、また世界経済をむしばむ政策思想である緊縮病の弊害を検証したスタックラー&バス『経済政策で人は死ぬのか?』、米国を戦争に走らせないためにはどうしたらいいのかを考えるヒント満載のスティグリッツ&ビルムス『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』もいまの現状認識を得るために必読だ。

欧州統合、ギリシャに死す

欧州統合、ギリシャに死す

中国の対外軍事戦略を考えるための必読書はなんといっても: トシ・ヨシハラ, ジェームズ・R・ホームズ太平洋の赤い星』と巻末の山形浩生さんの解説を読むべき。

最近、しばしば民主主義選挙もしくは投票についての議論がさかんである。以下の4冊の本はこれらの議論を考える際に参考になる。

人間の安全保障 (集英社新書)

人間の安全保障 (集英社新書)

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である

[]上念司『経済用語 悪魔の辞典上念司『経済用語 悪魔の辞典』を含むブックマーク

 日々の経済や社会問題のニュースでしばしば見かける言葉に、上念さんらしい皮肉とエスプリ、そしてするどい批判で書かれた便利な経済用語集。序にもあるが本書はピアスの『悪魔の辞典』を高校のとき読んだ経験へのオマージュにもなっていて、上念さんの思想形成もわかる。「好況」「国土強靭化」「似非ケインジアン」「偽装保守」「新自由主義」などには刺激的な考察が並ぶ。ただしその記述は理論・データ・歴史的考察の三位一体で構成されていて、読者は自分で考えてそれらに対して自らの判断を形成することができるだろう。いまの白熱する経済政策世界経済の見立てに一読をおススメする。