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2015.9.18 FRI
PHOTOGRAPHS BY NORIYUKI AIDA
TEXT BY WIRED.jp_U
──まずはじめに、なぜゼネラル・エレクトリック(GE)に活躍の舞台を移すことを決めたのかを教えてください。ソフトウェアに強い企業からハードウェア企業へのドラスティックな転身に見えますが。
「これからのIoT(Internet of Things)における大きなインパクトは、産業界(インダストリアル・セクター)で起きようとしている」と思ったことがきっかけでした。IoTのこれまでの10年間は消費者のためのものでしたが、これからは企業のお金儲けのためではなく、きれいな水やきれいなエネルギー、よりよい交通、そういった人々の生活を改善するためにIoTが使われるべきだと思ったのです。
商業のIoT化とエコフレンドリーの2つは間違いなく「The Next Big Thing」であり、GEでならばそれらに同時に取り組むことができます。誰がそんな大きなチャンスのために働きたくないと思うでしょう?
──GEは今年4月、利益の約3分の1を占めていた金融事業「GEキャピタル」の売却を発表しました。その決断にはどのような意志が込められていたのでしょうか?
「GEを世界で最も価値のあるインダストリアル・カンパニーにするんだ」という、CEOジェフリー・イメルトの想いからでしょう。そうやって常に自らを変え続けられるところ、立ち止まらずに動き続けられるところがGEという会社のいいところなんです。
われわれはGEキャピタルを手放すことを決め、さらにこれまでハードウェアの会社だったGEがソフトウェアの領域に取り組むことになりましたが、それは「世界で最も価値のあるインダストリアル・カンパニーになる」という目標のためにはごく自然な決断だったのです。その結果として、いまわれわれは「インダストリアル・インターネット」に力を入れることができています。
──そのインダストリアル・インターネットというアイデアは、いかにして生まれたのでしょうか?
わたしがGEに来た2011年ごろに、われわれは産業界に新たな競合が現れ始めていることに気が付きました。アナリティクスを行うソフトウェア企業の存在が目立ち始めていたのです。もういつまでも物理的な機械だけをつくっていてはダメだ、優れたソフトウェアをつくり、それをハードウェアに取り込んでいかないといけないんだ──ソフトウェア企業の台頭は、そんなことをわたしに気づかせてくれました。同時にわれわれの取引先の企業たちが求めるのも、もはや機械だけでなく、データを集めて分析をすることに変わってきていたのです。彼らにとって重要な存在であり続けるためには、自らのプロダクトを考え直す必要があったのです。
そうして取り組むべき戦略を考えたところ、2つのことに気がつきました。それまでわれわれがつくっていた機械を生かせば素晴らしいアプリケーションをつくることができそうだということと、そこには大きなチャンスがあるということです。つまり産業界におけるITプラットフォーム事業というは、まさにグリーンフィールド(未開発地域)だったのです。いま産業界に必要なプラットフォームとアプリケーションをつくれば、産業用ソフトウェア市場でトップの存在になれる。わたしはそんな確信をもつことができました。
──インダストリアル・インターネットで最も成功した事例を教えてください。
ひとつは、「デジタル・ウィンド・ファーム」と呼ばれる風力発電機でしょう。これは発電機に付けられたセンサーを使って集められる天候データを使うことで、より効率的にエネルギーを生み出すことのできるものです。物理学や化学を使ったエンジニアリングではなく、ただアナリティクスを活用するだけで、従来よりも20パーセントも多くのエネルギーを生み出すことができたのです。
そのほかにも、老朽化をいち早く発見できる石油・ガスのパイプラインやクラウド上で医師に診てもらうことのできるヘルスケアシステムなど、われわれはこの2〜3年の間に40もの新たなアプリケーションを生み出し、それは約13億ドルもの売上高を計上しています。このインダストリアル・インターネット事業における急速な展開をスタートアップのようだとたとえられることがありますが、われわれが描くシナリオはただのスタートアップではありません。言うなれば「ビッグカンパニー・スタートアップ」。速く動くことのできる大企業の姿を目指しているのです。
IMAGE COURTESY OF GE
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