世界で急増する「薬が効かない感染症」、背景に闇ルートか
低中所得国で耐性菌を増やす唯一の条件は「医療費の自己負担額」

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Steven Depolo/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般)

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Steven Depolo/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般

 抗菌薬が効かない耐性菌の増加が世界で問題になっている。

 このたびの調査で、低中所得国では、正規ルートで薬を得るときに払う価格が上がるほど、耐性菌の増加につながっていると判明した。

 どうやら、裏ルートで利益目的で抗菌薬を処方しまくる闇医者が一枚かんでいるようだ。

耐性菌によるダメージ大

 米国スタンフォード大学を中心とした研究グループが、感染症分野の有力医学誌ランセット・インフェクシャス・ディジーズ誌で2015年7月8日に報告した。

 抗菌薬が効かない「耐性菌」によるさまざまな感染症の拡大は、世界的に公衆衛生上の大きな問題となっている。

 特に、衛生状態が良くない低中所得国では、耐性菌が出現した場合に感染が広がりやすい。また、耐性菌を殺せる新しい薬は高くて手が届かないなど、耐性菌によるダメージを受けやすい。

なぜ耐性菌が出現するのか?

 研究グループは、低中所得国で耐性菌が出現する理由について、一つの仮説を立てた。

 低中所得国では、公的機関が医療費の自己負担額を増加したことで、闇医者から抗菌薬を入手する人が増えたと指摘。闇医者は、儲けのために抗菌薬を過剰に処方。耐性菌の出現につながると考えた。

 研究グループは今回、この仮説について検証を行った。

 医療費の自己負担額と耐性菌の増加の関係を調べるために、世界保健機関(WHO)の「2014年抗菌薬耐性菌世界調査報告」からデータを得て解析した。

 対象国として選んだのは、計47カ国。アフリカ大陸の23カ国、アメリカ大陸の8カ国、欧州の3カ国、中東の8カ国、東南アジアの3カ国、西太平洋の2カ国とした。

自己負担額が増えると

 耐性菌の増加に関係する条件として、唯一浮かび上がったのが、医療費の自己負担額だった。

 医療費の自己負担額が10%増加すると、耐性菌の出現は3.2%増加するという関係だ。

 公的機関により薬の自己負担が要求される国のみで見られた。国で医療費の自己負担額が20%から80%に増加した場合、耐性菌の出現率は18%から36%に倍増すると分かった。

利益よりも健康を第一に!

 研究グループは、低中所得国で見られた医療費の自己負担額の増加による耐性菌の増加の背景には、仮説で立てたような、利益目的の闇医者による、抗菌薬のばらまきが関連しているのではないかと懸念している。

 薬の過剰が耐性菌につながると、思わぬ形で証明された。利益よりも人々の健康を第一に考え、耐性菌の拡大阻止のために世界規模の対策を、早急に立てていく必要があるだろう。

文献情報

Out-of-pocket health costs tied to antimicrobial resistance.

Alsan M et al. Out-of-pocket health expenditures and antimicrobial resistance in low-income and middle-income countries: an economic analysis. Lancet Infect Dis. 2015 Jul 8. [Epub ahead of print]

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