まずはココから

インタビュー

注目バックナンバー

未来がどのようなものになるのかそれがテクノを通してもっとも伝えたいことです

MUSIC

パリ在住ジェフ・ミルズが語る「日本をとても心配している」

インタビュー・テキスト:杉原環樹(2015/09/11)

マジックのタネを明かされることで、むしろそのマジシャンの技術の高さに驚かされることがある。2004年に発表されたジェフ・ミルズのDVD+CD作品『Exhibitionist』が人々に与えたのは、まさにそうした種類のショックだった。テクノミュージックはいかにして生み出されているのか。そんなシンプルな問いに対し、同作で彼は、複数台のカメラの前に立ち、自らのプレイを惜しげもなく晒してみせた。自身がパイオニアの一人として牽引してきたテクノシーンの中でも、圧倒的にオリジナルな彼の音楽哲学と卓越した技を記録したその映像は、いまや伝説と呼ばれている。

それから11年。同作のコンセプトを引き継いだ第2弾『Exhibitionist 2』が発表された。本作で目指したのは、「アートフォーム」としてのテクノの可能性の拡大であるという。長い時間を経ての発表の背景には、テクノシーンの現在と未来に対する、ミルズのどのような思考があるのか。また、近年の日本社会について彼が抱く不安とは? これは、「Man From Tomorrow(明日から来た男)」よりのメッセージだ。

PROFILE

ジェフ・ミルズ
1963年デトロイト市生まれ。エレクトロニック・ミュージック、テクノ・シーンのパイオニアとして知られるDJ/プロデューサー。Axis Records主宰。 2007年、フランス政府より日本の文化勲章にあたるChevalier des Arts et des Lettresを授与される。近年では各国オーケストラと共演、日本科学未来館館長/宇宙飛行士 毛利衛氏とコラボレイトした音楽作品『Where Light Ends』を発表、また日本科学未来館の館内音楽も手がける。ジャクリーヌ・コー監督、ジェフ・ミルズ主演のアート・ドキュメンタリー・フィルム『MAN FROM TOMORROW』は、パリ、ルーブル美術館でのプレミアを皮切りにニューヨーク、ロンドンの美術館などで上映される。2015年、東京にてアート作品展示会『WEAPONS』を開催するなど、その活動は音楽だけにとどまらない。9月9日には『EXHIBITIONIST 2』をリリース。
Axis Japan Web
ジェフ・ミルズ『エキシビジョニスト2』本日発売!!石野卓球他、国内アーティストのコメントも到着!! | ::UMAA Inc.::

テクノロジーの進歩によって、どのDJもある一定のクオリティーをキープできるようになりました。もちろん、それはいいことでもありますが、DJのレベルが均質化されていると感じます。

―2004年に発表された前作『Exhibitionist(=露出狂)』は、タイトルに示されているとおり、あなたのDJミックスを複数のカメラで克明に捉えた作品でした。まずは、その第2弾となる作品を11年ぶりに作られた経緯から教えてください。

ミルズ:前作から11年が経った現在でも、「テクノ」というアートフォームに関して一般の人が理解をし切れていなかったり、気がつけていなかったりすることがたくさんあると思ったからです。DJのテクニックやプログラミングの技術を、あらためてこうしたかたちで提示することで、多くの人にそれを理解してもらえるし、DJをすることの価値もより高く評価してもらえるのではないか、と。



―前作との大きな違いとして、今回はドラムマシン「Roland TR-909」を全面的にフィーチャーした内容になっていますね。なぜそのようなかたちを取ったのですか。

ミルズ:今回のテーマのひとつは、「spontaneity(=自発性)」です。つまり、アドリブなどの自発的で即興的なアクションを中心に紹介したかった。そのため、機材の持つさまざまな側面を意識的に見せるように工夫しました。たとえば「TR-909」も、一般的にはプリプログラミング(演奏以前にプログラミングすること)して使うものだと思われていますが、私はそれをリアルタイムで操作して演奏しています。「自発性」に着目するのは、今後のDJカルチャーにおいて、その要素がより重要になる、あるいは、そうなってほしいと考えているからです。これからのテクノロジーの進化の中では、音楽をプログラミングする方向性だけでなく、機材を楽器のように演奏するという方向性も、あらためて重要になるでしょう。それを表現したかったのです。

ジェフ・ミルズ『Exhibitionist 2』より
ジェフ・ミルズ『Exhibitionist 2』より

―「自発性」の重視の背後には、現在のDJカルチャーへの思いがあるのでしょうか?

ミルズ:テクノロジーの進歩によって、どのDJもある一定のクオリティーをキープできるようになったと感じています。もちろん、それはいいことでもありますが、一方で最近は「本当に下手なDJ」を見ませんよね。アナログで回していた時代にはそうした存在がいたものですが、近年は、コンピューターやデジタルファイルを使うことで、みんなある程度の地点に簡単に達してしまう。DJのレベルが均質化されていると感じます。そんな中で将来のことを考えると、一人ひとりのDJにそれぞれのキャラクターが求められる時代がまた来るのではないかと思います。ソフトウェアではなくハードウェアとの触れ合いを重視する、本来より自然なかたち、つまり楽器を演奏するようにDJをするあり方に、再び注目が集まるのではないでしょうか。



―手元がクローズアップされることで、あなたの技術の高さが浮き彫りになっていますが、その演奏に対するストイックな姿勢はどこから来るのですか?

ミルズ:活動を始めた1980年代前半に、ラジオDJとしてプレイしていた影響が大きいのではないかと思います。というのも、ラジオDJが演奏するときにまず考えなければならないのは、リスナーが何分くらい自分の演奏を聴いてくれるのか、ということだからです。非常に短い時間で、リスナーの関心を引く技が必要だったわけです。それが今の私のDJのスタイルにも通じているのでしょう。私がミキサーのノブ(つまみ)などを細かくタッチしているのは、そうすることで、自分の考えをまとめたり、微細なタイミングをカウントしているから。こうした演奏のスタイル全体は、私が長年DJを実践する中で獲得してきた自分なりの方法なのです。


インタビュー一覧に戻る

CINRA.STORE カルチャーセレクトショップ

  • yuruliku - トートバッグ「A4 TATE Tote Bag 」(ベージュ)

    ¥15,120

    紙袋の様なデザインが面白いトートバッグ

  • Akinobu Aoki - iPhone6ケース「Kaijyu Works : otoko to onna」

    ¥3,780

    大胆な構図と色彩が魅力

  • Kanae Entani - マグカップ「Yosemite mug」(ホワイト)

    ¥1,944

    刺繍で表現される可愛い大自然

  • 黒川ナイス - モバイルバッテリー「科学部(女の子)」

    ¥3,780

    謎めいた雰囲気の「リケジョ」

  • tomihiro - クラッチバッグ「SUKIYA 撫子」

    ¥14,040

    デイリーに使いたい美しい京友禅

  • 八重樫王明 - iPhone6ケース「土偶(Black)」(手帳型)

    ¥4,104

    土偶が並んだコミカルなデザイン

  • 西島大介(DJまほうつかい) - 『Last Summer』(CD)

    ¥2,484

    はかなくも美しいソロピアノ集

  • 和座本舗 - 招き猫「招きパンダセット」(ゴールド)

    ¥5,400

    ユニークな発想が楽しい「招き熊猫」

  • はらぺこめがね - Tシャツ「いちごと小娘」

    ¥3,240

    逆転した比率が面白いいちごと女の子

  • タマキ - モバイルバッテリー「kilifda - 口縫われモンスター ステッチン」

    ¥3,780

    ピンチのときの大逆転カード!

  • LEE KAN KYO - iPhone6ケース「流れ星」

    ¥3,780

    ビビッドな色使いが楽しい

  • WALLIE - 財布「WALLIE」(せきやゆりえモデル)

    ¥2,160

    ポップなデザインが可愛い2ndウォレット

  • 水内実歌子 - iPhone6ケース「AKA」(クリア)

    ¥3,024

    夢を描いたイラストレーション

  • YEN TOWN BAND - マグカップ「YEN TOWN Reprint logo Mug」

    ¥1,944

    円都と我が家を繋ぐマグ

  • ミズイロトシロ - 「ぷくぷくした」ピアス / イヤリング(グリーン)

    ¥8,100

    ガラス玉とミラーを布で包んだアクセサリー

  • SAITOE - iPhone6ケース「sulk」

    ¥3,780

    物憂げだけどポップなイラストレーション

「クレオパトラと薔薇」の共通点は? 無料 編集力チェック

HereNow Your another city guide

100 TOKYO Creative venues, products and people in Tokyo.

リューキュープラス RQ+ 沖縄を、芸術文化でもっと楽しく

CINRA.JOB 音楽でビジネスをするライフサンドの経営哲学

CINRA.JOB GREENFUNDING×TSUTAYAが描く未来

CINRA.JOB コムリエが考える「WEBブランディング」

美しく機能的なハンドメイド生活用品

端材を使用した生活雑貨・ステーショナリー

knot  木をテーマにしたミニマルで美しい生活雑貨

Danke オシャレに雨対策。フェスにも着たいレインウェア

Tシャツ特集2015! 豊富なデザインが勢揃い

POS+ 世界も注目するデザインウォッチブランド

10年前の今日、何をしていたか覚えていますか?

「結晶育成キット」神秘的な結晶の世界をDIYで

軽くて丈夫、カラー豊富な帆布バッグ

CINRA Inc,スタッフ募集中!