ここ最近、韓国の大統領府や外交部(省に相当、以下同じ)、統一部から発表される文書やコメントはどれも中国関連あるいは統一関連のものばかりだ。例えば大統領府は「中国との外交ルートをフル稼働する」と表明し、外交部は「韓中関係は桑田碧海(へきかい)=世の中が大きく変化すること=」とコメントした。つい先日まで「北朝鮮の核問題解決のために中国と米国に期待することなどない」と語っていた政府関係者は「米中両国と戦略的な話し合いが始まるだろう」との見方を示している。これらの発言はどれも今回の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の訪中をきっかけに、統一外交に対する期待が国民の間でそれだけ高まっていることを示しているものだ。
朴大統領が中国の習近平・国家主席から歓待を受け、中国が統一問題で前向きな姿勢を示しているのは非常に喜ばしいことだ。しかしこのように対中外交の成果ばかりが強調されると、大統領府と政府の関心は国の外にばかり向いているように感じざるを得ない。先日の南北高官級協議における合意や朴大統領の訪中により、今統一に向けたモメンタム(勢い)が高まっていることは間違いない。しかしこれを単に「統一外交の宣伝」にばかり利用してはならない。
統一問題を進めるに当たり、外交と並んで重要なことは国内政治だ。とりわけこの問題で現政権と異なった考え方を持つ野党やリベラル派から、いかに理解を得て協力を取り付けるかは、今後の統一政策の成否を分ける重要なポイントになるだろう。かつてのドイツ統一のプロセスを見てもそれは分かる。
旧西ドイツの政界は1980年代に入る頃まで、統一政策の方向性を見定めることができなかった。1969年に当時の社民党を中心としたブラント政権は、それまでの西側重視政策を全面的に見直し、いわゆる「東方政策」によって東ドイツとの関係改善に乗り出そうとした。すると当時野党だったキリスト教民主同盟はこれに強く反発し、1972年に「東西ドイツ基本条約」が締結された際には「この条約は憲法に反する」として連邦憲法裁判所に提訴している。