米シリコンバレー生まれのベンチャーキャピタル(VC)、500スタートアップス(以下、500)がいよいよ日本に本格上陸する。
これまでも日本のスタートアップには投資をし、サポートしてきたが、基本的に米国からの出張ベースだった。これからは日本にオフィスを構え、専任スタッフが日本での投資先を探し、サポートする体制を整える。
500は、スタートアップに関わる人やVCに身を置く人なら知らない人はいないと言われるほど、世界的なブランド力と、実績を持つVCだ。創業間もないスタートアップに少額投資をし、成功へ向けて起業家たちと共に汗を流す。顧客や投資家、先輩起業家の紹介だけでなく、成功のためのさまざまな情報を起業家に提供する。単なるカネの出し手ではなく、起業家育成のプラットフォームすべてを提供するような存在だと表現できるだろう。
2010年に立ち上げて以来、投資実績はすでに50カ国1000社以上。楽天が13年9月に2億ドルで買収した動画配信サービス会社のvikiにも投資をしていた。現在、日本ではイベントやセミナーのチケットをオンライン販売し、管理をするサービスを提供するPeatixや、日本のアニメなどの文化を発信するTokyo Otaku Modeなどに投資をしている。
課題はエグジット
日本オフィスの代表を務めるのはジェームス・ライニー氏。“ビリギャル”(「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」、坪田信貴著)が生まれたストーリー投稿サイト、「STORYS.JP」の創業者だ。DeNAのベンチャーキャピタリストとして活躍していたが、500の日本本格上陸に際して、500の創業者であるデイブ・マクルーア氏から声がかかった。
14年、日本のスタートアップへの投資は数百億円程度だったが、米国では750億ドルにものぼる。そもそも、日本においてVCの数は米国と比べても少ない。今後、日本でもスタートアップが増加し、それに伴って投資が増えるとみており、それが、500が日本へ本格上陸を決めた最大の理由だ。
さらに、ライニー氏はここ数年の日本の産業界の変化も影響していると話す。
「日本にはスマートで才能があるエンジニアがたくさんいるにも関わらず、シリコンバレーと比べるとそれほど高い報酬を得られていない。今や大企業での終身雇用が崩れ、大企業に務めていてもかつてのような安定は得られないということがわかってきた。この状況は起業する人を増やす要因になるだろう」
もちろん、課題もある。ライニー氏は「日本ではスタートアップのエグジットが少ない」と指摘する。「IPOだけではなく、M&Aなどのエグジットの件数がもっと増えれば起業する人も増え、VCも増えるという好循環が生まれる。そうすれば、今はブラックボックス化され、規模の小さい日本のエコシステムも育っていくだろう」(ライニー氏)
500を介することで日本のスタートアップが得られる最大のメリットは、世界市場への窓口を得られることと、世界のスタートアップの中心地であるシリコンバレーのネットワークとノウハウに触れられることだ。それにはもちろん、500の目に留まらなければならないのだが、スタートアップにとってチャンスとなるのは間違いない。
「3000万ドルを目標に日本でファンドを立ち上げる」とライニー氏は話すが、その規模以上に日本のスタートアップやVCに与えるインパクトは大きそうだ。