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物価上昇率0%!?デフレ脱却は

9月4日 16時27分

柴田明宏記者

モノやサービスの値動きを示す消費者物価指数。このところ前年同月比プラス(上昇)が続いていましたが、先週発表された7月の指数(除く生鮮食品)は伸び率が0.0%。つまり、横ばいとなりました。
これは2年2か月ぶりのことです。でも身近なところでは、食料品や日用品が次々と値上げされています。こうした生活実感とのかい離はなぜ?また、今後の物価見通しは? そして、政府・日銀が掲げるデフレ脱却はどうなるのか… 。経済部・柴田明宏記者の解説です。

食料品値上げも、物価は横ばい

今、食料品の値上げが相次いでいます。

7月には「山崎製パン」と「フジパン」「敷島製パン」の3社が食パンや菓子パンをおよそ1%から7%値上げ。チョコレート系の菓子では、「明治」がおよそ10%から20%値上げしたり、価格を据え置いて量を減らしたりしたほか、「ロッテ」と「森永製菓」も一部の製品をおよそ5%から10%、値上げしました。

スーパーで取材した消費者からは「物価は上がってるんじゃないかと思う」「給料が上がるわけではないので、出費はどこで抑えていけばいいのか考えながら買い物している」といった声が聞かれました。

こうしたなか、発表された7月の全国の消費者物価指数。天候による変動の大きい生鮮食品を除いた指数は、平成22年を100として、103.4。伸び率は前年同月比0.0%。つまり1年前と同じ水準にとどまりました。

消費者物価指数は、日銀の大規模金融緩和などを受けて、おととし6月以降、上昇が続いてきましたが、今回、2年2か月ぶりに横ばいとなったのです。

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消費者実感と違う? そのわけは

毎日のように手に取る食料品・日用品が相次いで値上げされるなかで、7月の消費者物価指数が1年前と同じ水準だったという結果に、生活実感と違う!と思う方も多いのではないでしょうか。

今回、なぜ横ばいになったのか?

最大の理由は、エネルギー関連品目の大幅な価格下落です。なかでも、ガソリン代はー15.2%(前年同月比)。また、都市ガス代はー6.6%、電気代はー3.8%と軒並み値下がりしました。

エネルギー関連品目の下落要因は原油安です。原油価格の国際的な原油取引の指標となるWTIの先物価格は、去年6月後半には1バレル=107ドルまで上昇しました。しかし、その後、アメリカでシェールオイルの生産が急増したことなどを背景に下落基調に転じ、最近では中国経済の減速で需要が低迷するという見方から下げ足を速め、先月後半にはおよそ6年半ぶりに1バレル=40ドルを割り込みました。

原油価格の大幅下落によるエネルギー関連品目の値下がりが食料品・日用品などの値上がりを打ち消し、消費者物価指数は横ばいとなったのです。

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デフレ脱却目指す政府と日銀

物価動向に神経をとがらしているのは私たち消費者だけではありません。

政府・日銀も重大な関心を寄せています。というのも日本経済の最大の課題であるデフレ脱却を果たすには、緩やかな物価上昇を実現しなければならないからです。少し過去を振り返りますと、全国の消費者物価指数(除く生鮮食品)が年間を通じてマイナスに転じたのは、今から15年前の平成12年でした。政府は、翌年・平成13年3月の月例経済報告で、日本経済が持続的に物価が下落する「緩やかなデフレ」の状態にあるという判断を示します。物価は平成20年に原油価格の高騰などでいったん上昇に転じましたが定着せず、下落はその後も続きました。

物価が持続的に下落するデフレが続くとモノの値段が下がっていくので、企業の売り上げが減っていきます。すると、働く人たちの給料が減り、影響で消費が冷え込んで物価のさらなる下落につながっていく…。デフレはそうした経済の悪循環を引き起こすだけに、政府・日銀はデフレ脱却をなんとしても果たさなければならないとしています。

こうしたなか、平成24年12月、デフレ脱却による経済再生を掲げた安倍政権が発足。翌年の平成25年4月、日銀は新たに就任した黒田総裁のもと、2%の物価上昇を目指し、大規模な金融緩和を打ち出します。

これを機に外国為替市場で円安が加速。その影響で、海外から輸入する燃料や原料の価格が上昇し、電気料金や食料品などの値上がりが相次ぎました。その結果、おととし6月に消費者物価指数はプラスに転じ、次第に上げ幅を拡大していったのですが、去年5月をピークに上げ幅は次第に縮小し、足もと横ばいになったのです。

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デフレ脱却に黄信号か

甘利経済再生担当大臣は消費者物価指数が横ばいとなったことについて、記者会見で、「エネルギー価格がこのところ一段と下がっているという特殊要因を除けば、物価はそこそこで推移しているのではないかと思っている」と述べ、原油価格の下落による影響を除けば、物価は上昇基調にあるという見方を示しました。また、日銀は、来年度前半ごろには物価上昇率が2%に達することが見込まれるとしています。

7月から、原油安による物価の押し下げ効果を除いた“物価の基調”を示そうと、生鮮食品に加え、原油などのエネルギー関連も除いた新たな物価指標の公表を始めました。

この指標では、物価の上昇率が5月、6月とともにプラス0.7%となっていて、日銀の黒田総裁は8月26日、ニューヨークでの講演で、「現時点で景気と物価の基調は想定どおりに推移しているため、2%の物価目標は今の金融政策のもとで達成されると考えている」と述べ、強気の姿勢を示しました。

ただ、物価動向に大きな影響を及ぼす個人消費はかんばしくありません。総務省が8月28日に発表した7月の家庭の消費支出は、1人暮らしを除く世帯で28万471円。消費増税後まもない去年7月の支出額を下回り、2か月連続の減少となりました。

夏のボーナスは多くの企業で増加していますが、食料品などの値上げが消費者の心理を冷やして財布のひもを固くしているという見方があり、今後さらに消費が停滞すると、需要減から物価がさらに下落するおそれもあるのです。

物価はこの先どうなっていくのか。大和総研の長内智エコノミストは「消費者物価指数(除く生鮮食品)は早ければ8月分からマイナスに転じて、その後しばらくマイナス圏が続き、年末から年明けにかけて、原油安の影響が薄れていくと再びプラスに転じると思うが、上昇率は緩やかで、実体経済も踊り場入りしているという状況を踏まえると、デフレ脱却は正念場を迎えている」と話しています。

消費者としてはモノやサービスの価格が値下がりすることはうれしいことではありますが、デフレ脱却を果たせなければ、景気の力強い回復はなかなか難しいだけに、今後も日本経済に大きな影響を及ぼす物価動向を丹念に追っていきたいと思います。

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