「雨が降ってきたんだ、駅に迎えにこれるかい?」
と父からメールがきた。私はその時、用を足していて駅とは反対方向に車を走らせていた。
「ごめん、行けなくはないけど今すぐにはいけない。ちょっと時間かかるよ。それでもいい?」
家に帰ると、父はとても不機嫌。
「誰かさんのせいでびしゃびしゃだよ風邪ひいちまうよ」と大きなひとりごとを言う父。
母の顔をちらっと見ると、母もみけにシワがよって不機嫌そうな顔。
私は「ごめん」しか言えなかった。
数時間たって母が私の部屋に入ってきた。
「父さんが機嫌悪くなるのめんどくさいんだからちゃんとその辺考えて振る舞ってよ」という母。
私がお迎えに行かなかったから確かに父は雨にあたって帰宅せざるおえなかった。
駅から家まで歩いて5分。強い雨だったし悪いことしたなって思ってる。でもあのあと父から返信もなく帰宅したら案の定不機嫌。
こんなことは日常茶飯事で、私が悪いんだな。って処理してきた。
今思うと私にとって家に居場所はなくてとにかく父と母の顔色をうかがって、いつかどっちかがこの世から居なくなるまではこういう状態が続くんだと思った。
縁とタイミングが重なり私は結婚することになった。とりあえず父と母に結婚することを伝えた。
「お前みたいな病気と結婚するやつは不幸だな」と父は嘲笑い、「あんたはこの家から逃げるのね」と母は言った。
2人にそういう風に見えるのなら仕方ないけれど、私に良くしてくれる義両親に申し訳ないと思った。
弟が20歳を迎えたら離婚をすると散々言っていた両親。とうに20歳をこえているが、今も喧嘩やもめ事をするたびに私へ愚痴をはき離婚はしていない。喧嘩をするエネルギーがあって元気だなと思う。
両親を恨んだり憎んだりという負の気持ちもなければ大事だなと思う温かい心も私は持ち合わせてない。
私には子供がいないから親の気持ちはわからない。
時にイライラして子供に暴力をしてしまったり、威圧的な態度をとってしまったりするのかもしれない。
私は情けないけど今でも過去のことを引きずる時もあって、とても怖い。
親に会わなければいいじゃんと友達は言う。
そうだと思う。
2年前くらいから、少しずつ“断る”という行動をしている。
両親からの一方的な質問やお願いごとを断る。私は1人では断っていいのか判断できないくらいパニックになる。
なのでしばらくは、妹や夫に聞いてアドバイスをもらい、断っていくという練習をしていた。
最初は断るだけで、次の日まで寝込んでいた。
断ったり逃げたりすることは悪くないと先生も話していた。
今もまだまだ怖いのだけれど、怖いとか逃げたいとか思っていいんだってわかっただけ気持ちが数年前より楽だよ。
今も自分の居場所はどこにあるかわからない、けれど辛い息苦しいと思う場所にずっと居ないでいいんだよ。
逃げていいんだよ。
ただ静かに息したいだけなんだよ。