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メタボ検診 システムのミスで十分活用できず
9月4日 19時05分

メタボ検診 システムのミスで十分活用できず
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「メタボ健診」を受けたすべての人のデータを蓄積して、医療費の抑制につなげようと厚生労働省が整備したシステムに設計ミスがあり、およそ20%の人のデータしか活用できない状態だったのに運用が開始されて6年経った今も改修されていないことが会計検査院の調べで分かりました。
このシステムは厚生労働省がおよそ28億円をかけて整備し、平成21年から運用している「ナショナルデータベース」で、「メタボ健診」を受ける毎年2000万人以上のすべての健診データと、医療機関などが請求した診療報酬明細書のデータが合わせて100億件近く個人情報を暗号化したうえで蓄積されています。厚生労働省はこのデータを突き合わせてメタボリックシンドロームの人がどのような病気になり、いくら医療費がかかっているかを分析し、医療費の抑制につなげる対策を打ち出すことを目指しています。
しかし会計検査院によりますと同じ人のデータでも健康保険証の番号などが半角文字と全角文字といった異なる形式で提供されると暗号化した際に同じ人のものと認識されなくなるなどの設計ミスがあり、平成23年度からの2年間ではメタボ健診を受けた人の22%しかデータを突合できなかったということです。国は昨年度までの7年間にメタボ健診に1200億円余りの補助金を投入していますが、その効果の検証にもシステムを十分活用できない事態となっています。
厚生労働省は3年前には突合率が低いことを把握しましたが、原因が分からず改修していなかったということで、会計検査院はシステムを改修するよう求めました。
厚生労働省は「指摘を真摯(しんし)に受け止め、システムを有効に活用できるように今年度中に改修を進めたい」とコメントしています。

全角と半角文字の混合でデータ認識できず

昨年度およそ40兆円まで膨れ上がった医療費。厚生労働省の「ナショナルデータベース」は、増え続ける医療費を抑えようと平成20年度から進められている「医療費適正化計画」を支える大きな柱と位置づけられていました。
平成21年度から運用が始まり、これまでに毎年2000万人以上が受診している「メタボ健診」の結果やそれに伴う指導のデータが1億4000万件余り、医療機関などが請求した診療報酬明細書のデータが97億件と国民の健康状態や医療機関での治療内容に関する膨大なデータが蓄積されています。いずれも個人が特定できないよう、氏名や生年月日、健康保険証の番号などの個人情報を暗号化する処理が行われたうえでデータベースに保管されます。
当初の計画では同じ暗号のデータを突き合わすことで、メタボリックシンドロームの人がどのような病気になり、いくら医療費がかかっているかを分析できる設計で、より効率的な医療を実現し、医療費の抑制につなげることが期待されていました。
しかし会計検査院が調べたところ、同じ人のデータでも例えば健康保険証の番号がメタボ健診では半角文字、診療報酬明細書では全角文字と異なる形式で提供されていた場合は、異なった暗号に処理され、同じ人のデータと認識できなくなるということです。こうした設計ミスのため、蓄積されたデータのうち全国の中小企業で働く従業員などが加入し国内最大の公的医療保険の運営者「全国健康保険協会」のケースでは、メタボ健診を受けた延べ1000万人以上について1人も突き合わせができないなどシステムがほとんど機能していなかったということです。

専門家「厚労省の対応甘い」

システムの設計ミスについて医療情報システムに詳しい東京大学大学院の山本隆一特任准教授は「蓄積されたデータは膨大な量なので改修しても過去にさかのぼって分析できるようになることは期待できない。設計段階や完成してテストする段階で徹底的にチェックすべきで厚生労働省の対応が甘かったと言わざるをえない。今後のわが国の医療を中心とする社会保障を考えていくうえで大事なデータベースなのでもっと性能を上げないといけない」と指摘しています。

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