屁理屈・珍説の見本市だった瀬地山角(東京大学教授)の東洋経済オンラインでの連載が止まっているので、最後の朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国の比較記事について取り上げます。
朝鮮半島に深く根付いた儒教規範(李氏朝鮮時代を経て、儒教は本家の中国より、朝鮮半島で強く受容されるようになりました)から性役割分担意識が今も根強い北朝鮮に対し、中国では結婚しても女性が働くのは当たり前のことで、男性が料理をするのも当たり前です。
北朝鮮では今でも、結婚などを機に女性が仕事をやめることは珍しくないとされており、今まで何度か開かれてきた「全国オモニ(母親)大会」では、子育ては母親の役割であることが強調されてきました。これも中国ではありえません。
この中国と北朝鮮の違いは、台湾が韓国よりも女性の社会進出に関して積極的な社会であることとも通底する現象であるというのが、私が昔書いた本の内容の一部です(『東アジアの家父長制』勁草書房)。
女の社会進出が「台湾>中国>韓国≫北朝鮮」の順で、北朝鮮が女の社会進出後進国と言いたいようです。
しかしながら、北朝鮮よりも「進んだ」国々の不都合な真実は、出生率が大幅に低いことです。*1
男女共同参画が進んだ香港、台湾、シンガポール、中国(都市部)、韓国に共通するのは、男女のミスマッチ増大と晩婚化・非婚化・少子化です。
高学歴で高収入を得て都会で働く女性にとって、ふさわしい夫を見つけることは至難の業だという。
剰女とは違い、「剰男」はたいてい大都市で生活せず、収入も低い。
参加者の1人である中国語教師のLucy Wangさん(32)は、参加していた男性はプレイボーイかマザコンのどちらかのタイプだったとし、「自分に問題があるのではないかとたまに思う。2万人も参加者がいるのに、1人も気に入る人を見つけられないのだから」と話した。*2
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容姿に対して男女で反応があまり違わない一方、教育水準の高い男性ほど女性に好まれるが、女性の教育水準に関してはそういう傾向はあまり強くないという結果が得られている。[…]女性たちは容姿よりもお金を稼ぐ能力を示す特徴のほうを重視するようである。
合計出生率が約1.2と人口置換水準を大きく下回る韓国では、「絶滅」も危惧されるようになっています。
男女共同参画において「進んだ」社会に比べ、北朝鮮のような「遅れた」社会は人口面での持続可能性には勝っているわけです。
「女も男とまったく同じように働く」社会は、短期的には労働投入増加のプラスを得られるものの、長期的には労働力減少によって自滅に向かうのでしょう。企業が人員や設備投資を削れば、短期的には利益を増やせるものの、長期的には競争力を失ってジリ貧になるのと同じようなものです。
これまでも多くの政治体制が試みられてきたし、またこれからも過ちと悲哀にみちたこの世界中で試みられていくだろう。民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。
と述べましたが、男女分業システムも「完全で賢明」ではないものの、相対的にはましなシステムだったのではないでしょうか。
そもそも、生物学的には自然なシステムなので、何ら不思議ではありませんが。
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このころ*3の人類の暮らしは、男性たちが食料採取に出かけ、女性は安全な場所で待ちながら子どもたちを育てる、という形式だったと考えられます。男性を保護者とし、特定の女性とその子どもたちが連合して家族を作りました。
左派・リベラルが大好きな人間の本性(生物学的な自然)を否定したシステムが、大衆に悪夢をもたらすのはよくあることです。
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ダーウィニアン・レフトは以下のことをすべからず。
- 人間の本性の存在を否定すること、ならびに人間の本性は元々よいものである、あるいは限りなく変えられると主張すること
二〇世紀に入り、人間は完全であるという夢は、スターリンのソ連、文化大革命下の中国、ポル・ポト政権下のカンボジアで大変な悪夢と化した。そしてこの悪夢から目覚めた左派は大混乱に陥ったのである。
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