NewsPicks編集長・佐々木紀彦氏に聞く
NewsPicksで一緒に働きたい人はどんな人か?
2015.08.31
20代の唯一と言ってもいい価値
最近、わたしはどうしても理解できないことがあった。それは、キャリアの話をしていたときに、複数の20代から発された次のような言葉である。
「今の仕事に、わたしの適性はあまり合わないと思うんです。将来、自分に合う仕事が出てきたときには、自分のスキルを活かして会社に貢献します」
この発言に、2つの意味で、違和感を抱いた(わたしがオジサン化しているせいかもしれないが。。。。)
まずもって、「自分には●●の適性がある」と20代にして決めつけてしまっていることが許せない。20代ともなれば、多少の得意・不得意は見えてくる。しかし、20代の、とくに男性の自己認識など、幼稚園児のようなものである。「自分が得意」と思っていることが、他社と比べれば取るに足らないものであったり、「自分が不得意」と思っていたことに、意外と素質があったりすることもある。
だからこそ、食わず嫌いをせず、少しでも興味が湧けば、どんどんトライするべきなのである。それなのに、カッコつけて自己規定をして、目の前の挑戦から逃げている。そうした“自己保身”の姿勢には、ムッとする。
2つ目に、20代にとって「将来」という言葉などいらない。20代とは、よくもわるくも、空っぽである。「将来」は、今、目の前のことを頑張り、結果を出すことではじめて広がっていくものだ。もちろん、30代にはこんな人間になりたい、こんなスキルをそれまでにつけておきたい、といったプランをもつことはいいことだが、それは、頑張りどころを将来にずらすという意味ではない。
20代の唯一といってもいい価値とは「一心不乱に打ち込む」ことであり、その千載一遇のチャンスを逃したものには、いい30代など訪れない。
好奇心がもたらす、豊かなキャリアと人生
冒頭から、感情論で始まってしまったが、わたしがNewsPicksで一緒に働く人に求めたいのは、好奇心と勇気である。なぜなら、この2つがふんだんにあれば、自然とよい記者、編集者、プロデューサー、ビジネスパーソンになるからだ。
好奇心とは、陳腐なようだが、深い言葉だ。私流に解釈すれば、興味が広く、面白いことや人を見つけるのがうまいということである。
そういう人は何にでも食いつくので、知識や教養が増す。すると、話をしても楽しいから、自然と魅力的な人が集まってくる。面白い人が集えば、面白い企画が生まれるのは必然。そうして、わらしべ長者的に、“好奇心”は“楽しく充実したキャリアと人生”をもたらす。好奇心とは、さほどに貴重な資質であり、真に好奇心あふれる人材は極めてまれなのだ。
ただ、好奇心だけでは突破できないこともある。ときに、自らの好奇心のままに進むには、さまざまなリスクがあるからだ。上司からの反対、世間からの反対など、それを阻むハードルは大きい。
たとえば、NewsPicksは、「新時代のメディアのモデルを創る」という大それた目標を掲げているが、そのためには、KYに突き進む勇気が問われる。メディア業界の新モデル創りは、コンテンツという点でも、ビジネスという点でも答えがないだけに難易度は非常に高い。過去の歴史や、海外の事例を参照にしつつアイディアを考え尽くし、それを具現化していく行動力、粘りが欠かせないのである。未知の問いに挑むには、勇気がいるのだ。
好奇心と勇気はどこから生まれるか
それでは、勇気はどこから生まれるのだろうか。
それは、孤独と使命感とユーモアだと思う。孤独に強くなることにより、たとえみなが反対しても「この道を進む」という思いが得られるし、人生を賭けた使命感を持つことで、10年、20年という軸で仕事の意義を考えることができる。そして、ユーモアがあれば、自分を一歩突き放して見ることができる。孤独と使命感だけでは重すぎて、滑稽なナルシストになりかねない。
ならば、好奇心と勇気を育むには何をすればいいのだろうか。わたしは、読書と旅行とアート、そして、本当に信頼できる家族、親友をもつことだと答える。
最近、わたしはあえてインターネットやテレビからはできるだけ距離を置くようにしている。ネットは強力な武器であり、存分に使いこなすべきだが、一歩間違うと、ネット側に振り回されてしまう。インターネットには妙に孤独を癒やすパワーがあるが、根源的な救いにはならない。ネットよりリアルの世界のほうが、広く、楽しく、味わい深く、価値ある人生を送るための学びがある(少なくとも、現在の日本では)。
最後に、こうした好奇心と勇気ある人材をどう集めるのか、と聞かれれば、「出会うのをひたすら待つ」としか言いようがない。転職エージェントを通じて、多くの候補者と会えば、そうした人材に会えるわけではない。ひたすら仕事に打ち込めば、きっと求める人に会える――わたしはそう信じ込んでいる。
執筆者紹介
佐々木紀彦(NewsPicks編集長) 1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2007年9月より休職し、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。2012年11月に「東洋経済オンライン」編集長。2014年7月からは、株式会社ユーザベース「NewsPicks」編集長に就任した。主な著書に『5年後、メディアは稼げるか』などがある。
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