いや、誰が共感できんねん!
導入部から前半の流れ
MBAホルダーの高給取りが、リーマンショック以降の不況に巻きこまれ、
超大造船会社から首を切られてしまう。
元エリートのプライドを捨てれず、再就職できずにいて、
昼から酒を飲む、あとは高級会員権を持つゴルフで時間をつぶすしかない。
どうしよう・・・
いや、誰が共感できんねん!
ポルシェ、豪邸、自らの財産をなかなか手放そうとせず、
なぜか家族も彼を見放したりしません。
ゴルフの会員権の振込みができていなくて奥さんを電話で怒鳴りつけたり、
再就職支援所で気さくに話しかけてくれる仲間にも愛想なく対応してしまう。
どうしよう・・・
いや、だから誰が共感できんねん!
そうなんです、この手のドラマ映画では、主人公への共感が基本やと思うんですが、
この映画は共感へのアプローチが序盤ないんですね。
ただ、主演ベン・アフレックの演技のクオリティは非常に高いのか、
現実逃避しているのはわかりますねん。そこからはもう、おきまりの展開で、
主人公がくじけそうになりつつも、家族のため、さまざまなものを手放し、
馬鹿にしていた土方仕事を手伝ったりして成長していく、というのが大きな流れです。
高望みしてんなよ、でいいのか?
さんざん誰が共感できんねん!
と書きましたが、実はこの無職男のプライド/価値観は、
私たち見る側にも存在しているんだろうな、と、ふと思ったのです。
彼にとってはあのお金や豪邸や車は当たり前で、その暮らしも当たり前のもの。
何故なら彼はエリートだから。「は?何やねん?」状態ですよね。
でもこれって程度の問題なんだろうな、と思いませんか。
たとえば私たちが譲ることのできない昼ごはんの定食のたった600円は、
どこかの国では一人の命を救うワクチンになる、だとか。
美容院で使う1万円は? 母親へのプレゼントへ使うべきじゃね? だとか。
ここで言いたいのは募金をしよう、とか、良いことをしよう、とかそういうことじゃありませんが、
自分のために何かを行うということは、人のために何かをしないということ。
宇宙から見れば似たようなレベルちゃうかなーって。
とにかく、我々は日々、毎秒のように選択を行っていて、
きっと知らず知らずのうちに保守的になっているんだな、と。
実はこの映画で扱っているテーマは、誰にだって当てはまる、
普遍的なテーマだったんだ、ってあとから気づきましたわ。
もちろん私は12万ドルの年収をもらってはいないし、
豪邸、ましてや車だって持っていない。
にも関わらず、こんな意識の流れを感じさせるプロットはさすがだなと思いましたね。
トリアエズカイシャ首ニナリタクナイヨ!