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 熊本県人吉市で昨年5月、県立高校3年生の女子生徒(当時17)を殺害したとして、殺人などの罪に問われた住所不定、無職赤石弥(わたる)被告(48)に対する裁判員裁判の判決公判が12日、熊本地裁であった。溝国禎久裁判長は「計画的に、落ち度のない被害者を殺害した刑事責任は重い」として懲役18年(求刑懲役23年)を言い渡した。

 被告は起訴後に「発達障害が原因の適応障害」と鑑定され、責任能力の程度が裁判の争点になっていた。弁護側は「被告の責任能力は限定的だ」と主張していたが、判決は「完全責任能力があった」と認定し、弁護側の主張を退けた。

 判決によると、被告は昨年5月4日午後0時15分ごろ、人吉市の山中で、女子生徒の首を背後からロープで絞めて窒息死させた。

 判決は「好意を寄せていた女子生徒を殺害すれば絶望して自殺できる」との動機について「一見奇妙で、障害が一定程度影響したとは認められるが、障害の影響が著しいとまではいえない」と指摘。犯行場所に目立たない場所を選んだり、遺体をシートで覆ったりした行為を犯行を隠そうとしたものと認定し、完全責任能力があったと認めた。

 そのうえで「ロープを準備するなど計画的で、殺意の強固さは明らか。被害者を殺せば絶望して自殺できると考えたとの動機も身勝手極まりない」と断じた。

 判決後、女子生徒の父親は「たとえ死刑になっても娘は帰ってこない。被告には残された人生をかけて、どう罪を償えるか考えてほしい。被告が社会復帰する日がきても私たち家族は許さない」との談話を出した。(小原智恵)

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 〈元家庭裁判所調査官の藤川洋子・京都ノートルダム女子大教授(臨床心理学・犯罪心理学)の話〉 発達障害や適応障害だけで事件を説明するのは難しい。被告は軽度の発達障害だっただけでなく、ネット上以外の人間関係に乏しく、精神的な孤立状態や独特のこだわりにストップをかけられる人がおらず、悲惨な事件につながった。被告と同じような人たちを早く見つけ、孤立させない環境を作ることが必要だ。