C88のこと

盆LTの話と時間的に前後するけど、コミックマーケット88お疲れ様でした。我々のサークルは新刊でこういう本を出した。

毎回3日目に配置されるから、今回1日目(平日)はどんな感じか勝手が分からず若干不安だったけど、幸いにもなかなかの結果を出すことができた。うれしい感想もいくつかいただいた。後日、購入された方の感想を観察してみたところ、おおむね意図通りにこちらのやりたかったことが伝わっているようだった。

意図というのは、"どういう本として捉えてほしいか"と言い換えることができる。この本、いままでで一番か二番くらいに悩みながら作ったんだけど、多くの時間を本の立ち位置を決める作業に費やした。

立ち位置

チームの本といっても、いろいろな切り口が考えられる。言いたいことは「チーム良いっすよね」の一点なので、ストレートに考えると、チームの魅力を紹介しますとか、そういうアプローチになる。が、僕はそう言い切ってしまうことに違和感があって、チームって魅力だけじゃなく面倒なことも多いし、途中で頓挫したプロジェクトを経験している人にとっては悪夢のようなチームの思い出もあるはずだ。だから、楽観的に「チーム良いよ皆もやろうよ」とだけ言うのは無責任な感じがするし、共感してもらえないと思う。

そこで、チームについて「基本、難しいです(よね?)」という立場をとることによって、楽しいだけじゃないチームの諸々について語ろうとした。また、チーム制作が得意な人より苦手と自覚している人のほうが多いはずなので(コミュニケーションが得意ですと言える人が少ないのと同じ理由)、より共感してもらいやすくなるのではないかと推測した。

表紙

表紙にもちょっと仕掛けがある。

この本、「jadda+ Issue 2」というタイトルなんだけど、表紙では極めて扱いが小さい(中央やや上にちまちま書いてあるのが見えるだろうか)。それよりも、特集タイトルをはみ出すくらい巨大に置いてある。これによって本の主旨がすばやく伝わるようにした。

昔の自分だったら、ちょっとでもおしゃれに見えるようにこだわって、なんかいいかんじの洒落た雰囲気の表紙を作っていたと思う。しかし、最近諦めがついたのか、そこに変な見栄が無くなってきた。表紙で言いたいことをはっきり伝えることを第一の目的として、それに集中できたと思う。最近自分のなかでデザインについての認識が変わってきたことは以前記事にした。そういえば今回本文内でデザインについて一言も言及していないんだけど、C88評論本まとめみたいなブログ読んでたところデザイン系の本に分類されていておもしろかった。

表紙の仕様については、紙はミセスB-Fスーパーホワイト、書体はヒラギノUD角ゴとUniversの混植。ヒラギノUD角ゴを使用したのは、スクリーン上でPDF版を読んだときにも可読性が高そうと思ったから。あと紙と告知サイトで同じ書体を使いたかったというのもあるんだけど、これは僕の勘違いで実現しなかった(TypeSquareでヒラギノUD角ゴが使えると思っていたけど実際は使えなかった)。表紙で、この書体こんなに巨大に使っていいのかなと一瞬思ったけど、まあいいかと思って結局使った。

立ち位置その2

立ち位置の話でもうひとつ、チームの本を同人作家に届けるには、どこにカテゴライズされるかが重要になってくる。チームの本というとたとえばTeam Geekとかアジャイルサムライとかあるけど、普通の人はまず読まないと思う。チームを話題にするとき、届けたい人々との間にはギャップがある。

そのギャップを埋める方法として同人でよく用いられるのが、表紙や本文にイラストを多用する方法。少し前だと『萌えるhogehoge』のような手法があった、というか、今もある。現在はすこし落ち着いていると思うけど、それでもイラストにとても力を入れている本はよく見る。頒布するイベントのことを考えると("コミック"マーケットだ)、当たり前といえば当たり前な気もする。しかし、イラストに力を入れる本が多数派になってくると、その逆をしたほうが存在感が出るのではないかと考えた。

だから、Issue1のときもそうだったけど、Issue2の表紙もイラストを使っていない。ただ、実際にはそれだけで決めているわけではなくて、他の要因も考慮して決める。本文の内容と、表紙で言いたいことを伝えるためには文字だけのほうが効果的だと考えたので文字だけにした。

こうして作ると、ぶっちゃけ地味な本ができる(本書では他チームのことも取材して掲載しているが、彼らが地味なわけでなく我々の作風が地味という意味)。けど、なんとなく僕は、地味なテーマをちゃんと地味なまま売るのがかっこいいと思っていて、中身で勝負する感が気に入っている。もともとの性格も地味なので似合ってるのかもしれない。

透明性

自分たちの失敗談とかを書くわけだから、手の内を明かすわけだけど、それでも構わないと思って書いた。透明性を高めたい。情報を売るサークルなので尚更やらなければならないと思っている。僕自身が、何がしたいのかわからないサークルにモヤモヤするからというのもある。進捗は秘密にする方針をとっているが、発表済の著作物に関しては惜しみなく公開したい。

ちゃんとやる

同人誌作ってて毎回思うけど、ちゃんとやっていくしかないなあと思う。ちゃんとやるというと適当に言ってるように聞こえるけど、地道にコツコツやっていくという意味で、我々には華も飛び道具も銀の弾丸もないので、愚直にちゃんとやっていくしかないと思う。

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