Edward Hadas
[ロンドン 19日 ロイターBreakingviews] - 米アマゾン(AMZN.O)のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が守勢に立たされている。ベゾス氏は、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が同社の労働環境を「非情かつ悲惨」だと報じた記事は間違いだと反論している。
同社の創業者でもあるベゾス氏は、記事に書かれたような長時間労働や従業員の私的問題に対する冷酷な対応、いくつかの涙を誘う話などは、事実が誇張されているか、もしくは例外的なケースだと主張。幸せに働いている社員からの証言でもそれは裏付けられるとしている。
もちろん、そうした証言はあるだろう。同社のカルチャーを愛する多くの社員がいなければ、アマゾンはここまで生き残れなかったはずだ。しかし、ベゾス流の経営は基本的にトラブルを招きやすい。彼自身の言葉の節々からも問題は透けて見える。
ベゾス氏はかつて、アマゾンは「親切かつ厳しい会社だが、必要となれば厳しさをよしとする」と語っていた。この方程式では、多くの無理強いが行われるのはほとんど間違いない。
この問題を説明する1つの経営理論がある。1960年にダグラス・マグレガー氏が提唱したX理論とY理論だ。親切さはY理論の側にある。つまり、従業員は生まれつき優秀でありたいと願っているため、経営者は彼らが能力を最大限発揮できるよう働きかけるべきというものだ。厳しさはX理論の側だ。従業員は生まれつき本来の能力以下のことしかしないため、彼らには催促や細心の監視、多岐にわたる賞罰が必要というものだ。
純粋なY理論は、ほぼすべての従業員が目の前にある仕事に完全に打ち込んでいるという特殊な環境でなら上手く運ぶ。初期のキリスト修道会や武装集団の掃討作戦、核開発のマンハッタン計画などがその例だ。ベゾス氏は幹部らに対し、同じような極端な熱心さを求めているようだ。
しかし、アマゾンのビジョンはY理論型経営には合わない。同社が起こす小売り革命などは、一部の幹部にとっては夜通し興奮して働くのに値するかもしれない。しかし、天国に近づくことや国家の敵を破ることに比べれば、迫力は欠ける。べゾス氏が帝国を築くには、親切なY理論だけでは十分ではない。
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