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ヤスデに高性能酵素 うじゃうじゃ嫌われ者… 有用でした

高性能な酵素が見つかったヤンバルトサカヤスデ=富山県立大提供

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富山県立大グループ発見

 大量発生して人を困らせるヤスデの一種が、胃腸薬や洗剤の製造など大いに人の役に立つ酵素「ヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL)」を体内に持つことを、富山県立大の浅野泰久教授らの研究グループが発見し、十日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。(山本拓海)

 HNLは従来、植物由来が主流だったが、最高性能とされてきたアーモンド由来の酵素に比べ、五倍の高性能を発揮することも突き止めたという。

 きっかけは、外敵から身を守る際に青酸ガスを出して悪臭を放つ外来種「ヤンバルトサカヤスデ」(体長三センチ)の大量発生だった。百本も足がある姿とも相まって嫌われがちな存在で、研究対象にはなりにくい存在だったが、浅野教授らはHNLが青酸を作る際の触媒にもなっていることに着目。「体内にHNLを持つのでは」と推測した。

浅野泰久教授

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 九州で大量発生したヤスデを約十二万匹、三十キロ分集めてすりつぶし、一キロあたり〇・一二ミリグラムのHNLを精製するのに成功した。従来のHNLとはアミノ酸配列が全く異なることも分かり、遺伝子学的にも重要な発見だという。

 研究グループは今後、産業用酵素としての実用化に向けた技術面での課題克服に取り組むとともに、未利用の新たな動物由来のHNL研究につながる契機にもなると期待している。

 浅野教授は「コロンブスの卵のような、身近なところでの大発見だった。研究対象をさらに広げていければ」と話している。

 ヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL) 主に植物に存在する酵素で、医薬品以外にも農薬や水溶性プラスチックの合成材料の触媒として利用される。物質を別の物へ変化させる化学反応を起こすには、高温・高圧の環境が必要となるが、酵素を使うと比較的穏やかな条件で反応が進むのが特徴。性能が生産コストや品質に影響するため、反応が活発で安定性の高い酵素開発が世界中で進められている。

 

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