2015年7月30日
◆知の拠点 県民皆で育てよう◆
県立図書館(宮崎市)の資料整備費が、昨年度予算で全国最低水準(2871万円)に落ち込んだことを本紙が報じたのが昨年8月。「知の砦(とりで)」を守ろうと機運が高まり、本年度予算で4124万円に回復しただけでなく、蔵書を県内全域でスムーズに利用できる体制づくりの研究が始まるなど、改革に向けた動きが見られている。
河野県政では県民が生涯にわたり読書に親しむ「日本一の読書県」を目指している。県立図書館はその要として、遠隔地に目配りをしながら内容充実を図ってほしい。
予算確保の道筋安定
昨年度は資料整備費の削減により、図書や雑誌などの購入点数が2~3割減少した。
学識経験者や教員、主婦らで構成され、運営について意見を交わす県立図書館協議会で「異常な削減額では」「専門的な勉強をする機会が失われる」など声が相次ぎ、県外の専門家からも「県立図書館として機能が果たせなくなる可能性がある」との指摘を受けた。県議会でも、経緯や対応について質問が上がった。
本年度はこれらの意見や疑問を受けた形で、予算が元の水準に戻った。額だけではなく、予算の位置付けが変わったことが大きい。
資料整備費はそもそも「消耗的経費」に分類され、前年度比25%の縮減を求められる対象だった。例年、全体予算の中で経費節減を進めて資料整備費を補ってきたというが、昨年度予算ではそれがかなわず前年度比33・3%減に。
この不安定な状況を改善するため、本年度から資料整備費は施設運営や機能維持に必要な「基本経費」と位置付けられた。基本経費は前年度比3%の縮減対象だ。これで、本や雑誌などの購入費が大きく揺らぐことはなくなった。
運営の在り方研究を
昨年度の予算削減をめぐる議論はほかにも問題をあぶり出した。
一つは図書の流通だ。県立の役割を再考しているうちに、窓口での貸出冊数の90%以上が宮崎市居住者によるものであること、同市外の住民が最寄りの図書館で県立の本を受け取るまで「10日以内」を要していることが分かった。
このため県立図書館は予算や人員を考慮しつつ、どんな流通システムを構築したら県内全域の利用者に蔵書が早く届くか、三重、鳥取など先進地4県に赴き調査した。研究を続け、2016年度以降の新規事業化を目指すという。
もう一つは人材だ。県立図書館の司書数は6人(正職員)で、全国42位と下位だったことが明らかになった。図書館自体の在り方をマネジメントする力が不足していると指摘され、本年度からは3人増やして9人とした。市町村の図書館職員と連携し、本と県民をつなぐ懸け橋となってほしい。
図書館予算問題は、県民生活の質にかかわる危機的状況を議論によって改善してきた好例といえる。今後も皆で声を出し合い、県民の知の拠点として育てていこう。