アメリカ最大のコンテンツ企業といえばディズニーである。カートゥーンをはじめテレビキー局からスポーツ、テーマパークまでありとあらゆるコンテンツを持っているコングロマリットで、ハリウッドを代表する映画会社の1つだ。
対して、日本で平成時代に最も映画制作力に長けているのがフジテレビである。数年前まで、視聴率王の座を長年死守していたことも有名だが、系列にはラジオ局・新聞社・出版社などもあり、文句なしの日本最大のメディアコングロマリット集団である。「日本のディズニー」と言っても過言ではない。
だが、両者を比べると見えてくるものがある。
上は、ディズニーとフジテレビによる日本国内で2010年代に公開された映画の興行収入を比べたランキングなのだが、圧倒的にディズニーの方が上回っている。ディズニー最上位はあの社会現象になった「アナ雪」で、260億円規模だという。すごい。でも一方、フジテレビの最上位はたったの80億円だ。シリーズ映画の1作品ではあるが、2位の次回作品と合わせても、アナ雪には100億円の差が出てしまう。それほどのものなのだ。
なお1969年から映画製作に取り組んでいるフジテレビの、歴代最高ヒットの映画と言えば2003年の「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」だが、これも興行収入は173億円であり、やはりアナ雪に及ばない。
フジテレビの場合、ヒットする映画はおおむね2000年代以降に限られていて、しかも70億円規模を超える作品はわずかだ。比較的最近の一部の最上位作品にのみ集客が極端に殺到しており、ドラマ版や小説・漫画などでメディアミックスしまくりで散々宣伝をゴリ押ししながらパッとしなかった映画は実は数知れない。とまあ、偏りが激しすぎる。
一方ディズニーの場合、年代的にも興行収入的にもまんべんないのである。いつの時代も規模のあるヒット映画を出しているのである。
そもそも考えてほしい。
日本人のだれもが「アナ雪」は見て当たり前だろう。仮に見ていなくても「ありのままで」を歌うことはできるわけで、それは老若男女同じだ。
しかし、「海猿」はどうだろうか。見ている人がまず限られる。私はこの映画を見たはずなのだが、主題歌を覚えていないし、登場人物の名前も忘れてしまった。日本で作られた映画なのに。
この時点で明らかなように、日本とアメリカには大衆文化を作るレベルに雲泥の差がある。
そしてこれは遊園地・テーマパークでも言えることだ。
来場客数のランキングを見ると、上位3パークはアメリカのものだ。やはりディズニーが強い。東京ディズニーランドは、正規の「ディズニーランド」としては世界首位で、本家(アナハイム)を超えているのだ。ユニバーサルスタジオも、実は大阪のものが世界一であり、本家を超えている。この3大パークが世界の遊園地・テーマパークの来場者数トップ10に入っているのは、すごいことだ。
しかし、日本原産のパークとして最上位なのは「長島スパーランド」である。聞いたことない人も多いと思うが、三重県のレジャー施設だ。私は友人が三重県に住んでいるので「なばなの里」の話を聴いたことがあるが、東京の人間なら知らなくて当たり前のマイナースポットが最上位であるほどに、日本人の遊園地・テーマパーク運営能力は低いのである。
メディアコングロマリット運営の遊園地・テーマパークといえば、私の住んでいる神奈川県には「よみうりランド」という遊園地がある。その名の通り、読売グループのものだ。読売新聞の発行部数は世界一位だし、巨人軍は昭和の国民的娯楽だった野球界を牛耳っている。日テレは「電波少年」をやっていた頃はフジよりも視聴率が高かった。
とはいえよみうりランドは小田急線と京王線の駅もあるが、私は行ったことは1度もないし、行ったことあるという地元の人は全くいない。そこまで行くくらいならいっそ都内を超えてディズニーに行くほうがいいという発想が根強い。
首都圏の一般市民は年に1度以上舞浜に行くものだ。それが普通である。地方の人間も、修学旅行や上京旅行で人生に1度は行くものである。日本人で舞浜に行ったことのない人はハッキリ言って皆無に近い。しかし、国産の遊園地・テーマパークはそもそも選択肢にすらされないのが当たり前なのである。だから、ディズニーの一人勝ち以降、日本では伝統的な大型の遊園地・テーマパークが潰れることはあっても、新しく開業することはほとんどない。
アメリカのMLBを代表する球団といえば、経済都市ニューヨークの「ヤンキース」だろう。ヤンキースタジアムのホームゲームでの選手紹介の映像がYoutubeにあった。なかなかかっこいい。イカしたムービーだ。
私は野球についてルールもよくわからないくらい疎いのだが、それでも友人に無理やり頼まれて数年前に東京ドームで巨人戦を見たときちっとも面白くなかったのを覚えている。昭和時代には国民的娯楽として圧倒的な支配を行っていた日本プロ野球のホームゲームがこんなにつまらないのか と思ったのだが、その時かなり引いたのが、画面を用いた選手紹介に「覇気」がなかったことだ。なんかペラペラの映像でスタメン紹介を行っていた。
毎回球場に通うサポーターたちはそれが普通なのだろうが、野球に疎い人間からすれば、こんなものかというものである。私はスポーツとしての野球の価値は否定しないが、それにしても日本の興行のレベルの低さには驚いてしまう。政府、役人、メディアコングロマリット、「日本を愛するネット原住民たち」が信じてやまない「クールジャパン」とか、「いったいこのざまのどこが?」って感じである。
これはニューヨークヤンキースのスタジアムで流れている映像広告の様子だが、みてほしい。ギャラリーたちの盛り上がりを。感動的な迫力のある映像をセンス良く作ることで、サポーターは総立ちで最後は拍手まで起こる始末だ。フランク・シナトラの「マイウェイ」の使い方も良い。
一方、私が巨人戦の試合で見た映像広告はよくありふれたテレビCMばかりだった。それに加え「天才志村動物園」などの日テレ系の番宣ばかり流していて、チンケなものばかりである。家のリビングで日テレを垂れ流している時のあの低俗な感覚と何も変わらないのに、それをスタジアムの大画面で、膨大な観客がいる中で流すのだから、なんだかチグハグすぎる。ギャラリーのうち、画面をいちいち見ている人間はほとんどいないようだった。
日本のメディアコングロマリットは、エンターテイメント舐めすぎじゃないかと思う。
とにかくなんでもかんでもすぐにメディアミックスしたり、日テレのバラエティに巨人軍の選手を出したりフジのバラエティに映画のキャストをねじこんだりとなんでもかんでもゴリ押しにつなげたがるが、そういう内輪の騒ぎばっかりで、その実日本国民を引き付けるほどの本質的な魅力のあるエンターテイメントは何一つないんじゃないかと思う。海猿の作者騒動みたいに、原作を疎かにしたりするし、コンテンツの本質をまるで分ってない連中が業界を支配しすぎじゃないか。この国のマトモな価値を重視した娯楽って宝塚歌劇団や劇団四季しかないんじゃないか。(それらはフジサンケイや読売などのメディアコングロマリットが保有しているわけではないが・・・)
私はそんな国がクールジャパンを吹聴しているのは恥ずかしいとしか思えない。自国民をまともに熱狂させるほどのレベルのある大衆文化もない国が、世界に発信なんておこがましいにもほどがあるだろう。日本の、大衆文化なんて日本国民の中でも一部の遅れた田舎者(B層)と高齢者しかカモにできないのだから、そんなものもうほっといて、寂れつつある郷土の伝統文化の保全をしたほうがよほど国のためになると本気で思う。
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ついでに。
これはディズニー系のABCテレビの老舗の夜のワイドニュース「ワールド・ニュース・トゥナイト」のPR映像と、オープニング映像だ。見ての通り、しっかりとした報道番組であることをアピールする効果的な映像表現がなされている。価値のある、質の高い表現を求める姿勢は歴代の同番組のPR映像、オープニング映像を見てもわかることだ。
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一方フジテレビの看板番組「みんなのニュース」はどうか。
プロモーションもタイトル映像も、貧相な専門学校生がチンケな発想で考えたようなチープな映像である。デジタル時代になってもいつまでも手書きの履歴書1つなくせないダメなオッサンの発想に通じる「手書き文章羅列フリップCM」も、陳腐なCGに病院のロビーで流れてそうなサウンドをあてたOP映像も、迫力がなさすぎる。まさに斜陽の国だ。
こんなものが日本を代表するテレビ局のワイド番組なのかと呆れてしまうのだが、この落ちぶれっぷりが日本の現状だ。こんな国、捨てたくなってしまう。テレビ離れだって進むわけである。
クールジャパンを吹聴する前に、まずもってアメリカと膨大な差が開いていること。ガラパゴス化を極めすぎてシュールな粋に入っていること、それを日本の大衆文化のプレイヤーたちは自覚するべきだ。そして、もっとまともなエンターテイメントの本質を理解した、スケールのあるものを作るよう心がける大きな発想と、向上心を取り戻さなければいけないだろう。